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幕間:夏休み最終日に読書感想文を書き忘れていたことに気づいたみたいな絶望感

 ゴールデンウィーク最終日、家族で遊びに来ていたお姉ちゃんと一緒に、あたしはお出かけしていた。


 いまはカフェで一休みしているところだ。


「望愛ちゃんとふたりでお出かけするの、ひさしぶりね」


 優雅な所作でコーヒーをすすり、お姉ちゃんが微笑む。


 一七〇センチ近い長身。


 星空を写し取ったかのように(つや)やかな、黒のロングヘア。おっとりと優しげなライトブラウンの瞳。


 柔和な顔立ちは、同性のあたしでさえ見とれるほど整っている。


 温かくて包容力のある性格を体現するかのように、母性の象徴である胸はとても豊かだ。


「うん。(こう)くんと日向(ひなた)ちゃんのお世話を請け負ってくれた、パパに感謝だね」

「お願いするより早く立候補していたよね。お姉ちゃん、ビックリしちゃった」

「きっと、孫が可愛くてしかたないんだよ」


 お姉ちゃんの子供たち――晃くんと日向ちゃんは、パパ・洋太さんと一緒にお留守番している。


 パパが洋太さんの手伝いをしてくれたので、お姉ちゃんは安心して晃くんと日向ちゃん(子供たち)を任せられた。そのおかげで、あたしたちは姉妹水入らずの時間を過ごせているわけだ。


「ノリくんとの仲はどう? 進展してる?」

「上手く誘惑できてるかはわからないけど、お(うち)に招いたり、お泊まりに行ったり、前より親密になってると思う」

「よかった。このままドンドン攻めていこうね。新しい武器も、今日、調達したことだし」


 あたしとお姉ちゃん、それぞれの隣の席には、紙袋が置かれている。その中身は、お姉ちゃんのアドバイスを受けて購入した、衣服・下着・コスメなどだ。


 一応、ギャルのメイクやファッションは習得したが、それはつい最近のこと。あたしは、まだまだファッションに明るくない。


 だから、お姉ちゃんのアドバイスはとても心強かった。本当に感謝しかない。


「お買い物に付き合ってくれてありがとう。お姉ちゃんがいてくれてよかったよ」

「いえいえ。妹の力になれるのは、お姉ちゃんの特権ですから」

「ふふっ。なにそれ」


 冗談めかして言うお姉ちゃんと、ふたりして笑い合う。


 ひとしきり笑い合ってから、お姉ちゃんが切り出した。


「せっかくだし、今後の作戦も一緒に考えましょう。ノリくんの攻略に使えそうなイベント、なにかある?」

「うーん……ゴールデンウィークは終わっちゃったし……」

「年中行事だけじゃなくて、学校行事でもいいんじゃない?」

「学校行事かぁ……」


 お姉ちゃんに助言されて、この先、どんな行事があるか考える。


 西岡高校の年間スケジュールを思い浮かべ――気づいてしまった。


 ちゅ、中間テストのこと、忘れてた!


 そう。西岡高校では、ゴールデンウィークが明けてから()もなくして、中間テストが行われるのだ。


 あたしは勉強が得意ではない。文系科目は人並みにできるが、理数系はひどく苦手だ。中学時代、何度か赤点を取ってしまっている。


 高校の授業は中学のものよりずっと難しいので、置いてかれないようにするだけで精一杯。しかも、ノリくんをどう攻略するかばかり考えていたせいで、テスト勉強はほとんどしていない。


 こ、このままじゃ赤点になっちゃう! どどどどうしよう!?


 訪れたピンチに、あたしはパニックに陥る。


 慌てふためくあたしを心配してか、お姉ちゃんが眉尻を下げた。


「気分でも悪いの、望愛ちゃん? 顔が青白いけど」

「ど、どうしよう、お姉ちゃん!? あたし、中間テストがあること、忘れちゃってた!」

「あらー……」


 絶望的な気分で打ち明ける。


 さしものお姉ちゃんも、苦笑を禁じ得ないようだった。

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