ひとつ屋根の下――7
「できあがりー♪」
いろいろとトラブルはあったが、なんとか望愛の料理が完成した。
望愛が作ってくれたのはナポリタンだ。オレンジ色に染まったパスタはツヤツヤと照りよく、ケチャップ特有の甘酸っぱい匂いが漂っている。
「美味そうだな。食べていいか?」
「もちろん!」
ふたりしてテーブルにつき、手を合わせる。
「いただきます」
「はい。召し上がれ」
早速フォークを手にとって、ナポリタンを一口。
じっくりと味わう俺に続き、望愛もナポリタンを口にして――
「…………」
ご機嫌そうだった顔を、気まずげなものに変えた。
しかたないと思う。
火の通りが甘くてゴリゴリと硬い野菜。パスタは茹ですぎてフニャフニャ。パスタの湯切りが不十分だったのか、全体的にベチャベチャしている。
望愛のナポリタンは、失敗と言わざるを得ない仕上がりだった。
いかにも意気消沈といった様子で、望愛が眉を寝かせる。
「ごめんね、ノリくん。上手に作れなくて」
「まあ、上出来とは言えないだろうな」
「……うん」
「けど、美味いよ」
「お、お世辞なんていいよ」
「お世辞じゃない」
苦笑する望愛に、俺は言い切った。お世辞ではなく、本心からそう思っているから。
「茹でるときに塩を入れたから、パスタにしっかり下味がついてる。少しだけばらつきはあるが、食材も均等に切られてる。きちんとセオリーが守られてるな。調べたのか?」
「う、うん。美味しいご飯をご馳走してあげたかったから……」
「それと、隠し味にハチミツでも入れてるのか?」
「ノリくんが作ってくれたお弁当、甘めのおかずが多かったから、そういう味付けが好きなのかなって思って……」
「ああ。俺好みの味になってる」
さらに一口ナポリタンを頬張って、望愛に微笑みかける。
「ちゃんと美味いよ。なにより、俺のことを考えて作ってくれたのが、嬉しい」
「ノリくん……」
感じ入るように俺を見つめる望愛。琥珀色の瞳に、じわりと涙が浮かぶ。
スン、と鼻を鳴らして、望愛が涙を拭った。
「今度は上手に作ってみせるから、待ってて」
「ああ。楽しみにしてる」
望愛の宣言に、俺は口元をほころばせる。
もちろん、ナポリタンは完食した。




