ひとつ屋根の下――5
一服したあとは、ゲームで遊んだりして過ごした。
楽しい時間は不思議と早く感じるもので、気づけば一二時前になっていた。
「そろそろ飯にするか。食べたいものとかあるか?」
「あ、待って、ノリくん」
昼食を作ろうと立ち上がった俺を、望愛が呼び止める。
「ご飯、あたしが作るよ」
「望愛が?」
「うん。いつもお弁当作ってくれるお礼。食材もちゃんと持ってきたよ」
望愛に言われて思い至る。
冷蔵庫に入れておいてほしいと望愛が渡してきた袋。その中身は、昼食に使う食材なのだろう。
つけ爪をしてこなかったのは、おそらく、調理の邪魔になるため。
望愛ははじめから、俺に食事を振る舞うつもりだったようだ。
驚きと感心を同時に覚えて、俺は目を丸くする。
「望愛って料理できるんだな。悪い。できないものだと思い込んでた」
「謝らなくていいよ」
「そうか?」
「うん。実際、できないし」
「できねぇのかよ!?」
あっけらかんと言ってのける望愛に、ツッコまざるを得なかった。
望愛の料理に興味はあるけれど、いまの発言は看過できない。調理の際は刃物を扱うし、加熱作業も行うのだ。料理ができないのなら、任せられるはずがない。
「できないならダメだろ! ケガされたら堪ったもんじゃないぞ!」
「大丈夫だよ。ちゃんと練習してきたから」
「けどな……」
「ほら、ケガもしてないでしょ?」
慌てふためく俺に、望愛が両手を見せてくる。たしかに、どの指にも絆創膏は貼られていない。
それでも、万一があるしなあ……。
どうしても不安が拭えなくて、望愛をキッチンに立たせていいものか迷う。
「心配しなくていいよ、ノリくん! 大船に乗ったつもりでいて!」
そんな俺とは対照的に、望愛は得意げに胸を叩く。特大サイズの膨らみがポヨンと弾んだので、俺はさっと目を逸らした。
これだけ自信満々なら、信じてもいいんじゃないか? 望愛は俺のために練習してくれたみたいだし、努力を無下にするのもよくない。
悩んだ末に、俺は決める。
「わかった。頼めるか?」
「任せて! 美味しいご飯、ご馳走してあげるからね!」
ニカッと笑って、望愛が両手で拳を作った。
「鍋、フライパン、ボウルは、そこの棚。お玉とかへらとかは、この引き出しに入ってる。調味料はこのラックにあるから、自由に使っていいぞ」
「わかった!」
キッチンに移動した俺は、調理器具・調味料の配置を望愛に教える。
元気よく頷いた望愛が、持参したエプロンを身につけた。
「よーし! 頑張るぞ!」
気合十分といった様子で、望愛が調理を開始する。
食材が入った袋を冷蔵庫から取り出す望愛を、俺は一歩引いて眺めていた。
はじめのほうは見守らせてもらうか。練習してきたらしいけど、危ないことをしでかさないか、少し不安だしな。




