ひとつ屋根の下――3
ゴールデンウィーク初日。望愛のお泊まり当日。
望愛は九時にやって来る予定なので、それまでに家の掃除をしておくことにした。
あらかたの掃除を終えて一息ついたところで、インターホンが鳴った。約束の時間より二〇分早いけど、望愛が訪ねてきたのだ。
玄関に向かい、望愛を出迎える。
「おはよう、ノリくん」
「ああ、おはよう。随分早かったな」
「ワクワクしすぎて待ちきれなかったんだよ。ノリくんは楽しみにしてくれてた?」
「……まあ、それなりにはな」
「ふふっ。そっか」
望愛ほど素直になれない俺は、ふい、と視線を逸らしながら答える。素っ気ない態度をとってしまったが、望愛は嬉しそうに笑っていた。
今日の望愛は、白いブラウスの上に赤いカーディガンをはおり、ミニ丈の赤いプリーツスカートをはいている。
脚を飾るのは、黒いニーソックスと黒いパンプス。肩に提げているのは赤いポーチ。
白いキャリーケースには、着替えや化粧品などが詰められているのだろう。
なにか理由があるのか、それともただの気まぐれか、いつもしているつけ爪を、今日はしていなかった。
「とりあえず、上がってくれ」
「はーい。お邪魔しまーす」
俺に招かれて、望愛がパンプスを脱ぐ。玄関を上がった望愛は、続く流れでカーディガンも脱いだ。
「っ!?」
俺はギョッとした。
カーディガンをはおっていたのでわからなかったが、望愛のトップスはブラウスでなく、キャミソールだったのだ。
キャミソールの面積はかなり小さく、肩と腕がむき出しになるだけに留まらず、胸の谷間まで覗いてしまっていた。裾が短いので、おへそも丸見えだ。
気にしないように努めていたが、スカートの丈も非常に短い。ふとした拍子にパンツが見えてしまうんじゃないかと、ハラハラする。
総合的に言って、望愛の格好は大変目の毒だった。
なんて際どい格好をしてるんだよ! 遊々子のマンション付近で出くわしたときは、露出控えめだったじゃねぇか! やめてくれよ、今日に限って! 男の家に泊まるんだからさ!
内心で絶叫していると、望愛が小首を傾げる。
「ノリくん、なんだか顔が赤くない?」
「そ、そんなことないぞ!?」
「そう?」
図星を突かれてギクッとしながらも、ブンブンと首を横に振る。動揺してるのがバレないかヒヤヒヤしたが、なんとか誤魔化せたらしく、望愛が追及してくることはなかった。
望愛の格好にドキドキしてるなんて知られたら、誘惑のキッカケになりかねん! そうならないよう、平常心を保たなければ!
自分に言い聞かせて、俺は仕切り直す。
「ひとまず、一服するか? 飲み物とか用意するから」
「ありがとう。ご馳走になるね」
ニッコリ笑った望愛をリビングに案内する。その途中で、不意に尋ねられた。
「リビングで一服するの?」
「ああ、そうだけど?」
「あたし、ノリくんのお部屋がいいな」
「俺の部屋?」
「うん」
目をしばたたかせる俺に、望愛が頷きを返す。
「ノリくんのお部屋、しばらくお邪魔してないでしょ? 雨宿りさせてもらったときも、リビングでだったし」
「しかしなあ……」
望愛のおねだりに、俺は難色を示した。
部屋が片付いてないわけでも、見られて困るものがあるわけでもない。ただ、自分の部屋に望愛を招き入れることが、なんだか気恥ずかしいのだ。
ためらう俺に、望愛がさらにグイグイ迫る。
「いまのノリくんのお部屋、どんなふうになってるか気になるなー」
「その気持ちはわかるが、照れくさいんだよ」
「でも、ノリくんはあたしのお部屋に来たよね?」
「う……っ」
「あたしも、ノリくんのお部屋にお邪魔したいなー」
こちらをジッと見つめながら、痛いところを突いてくる望愛。
根負けして、俺は溜息をついた。
「……わかったよ」
「やった♪」




