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幕間:女子会

 遠足の翌日、昭和の日。


 あたし、遊々子ちゃん、蓮華ちゃん、藍菜ちゃん、寧音ちゃんの五人が、ファミレスに集まっていた。


「遠足での進展報告会&今後の作戦会議~」


 遊々子ちゃんが音頭を取り、残りの四人がパチパチと拍手する。


 この場にいることから察せられると思うけど、遊々子ちゃんだけでなく、蓮華ちゃんたち三人も、あたしの恋を応援してくれている。


 というのも、


「味方が多ければ、いろいろと助かるからねぇ」


 と考えた遊々子ちゃんが、蓮華ちゃんたちに声をかけてくれたのだ。


 あたしとノリくんの関係性、ノリくんと付き合うためにギャルを演じていることや、頑張ってアピールしていることを打ち明けたところ、


「いいじゃん、そういう一途なの」

「健気で可愛いよねー。OK! ウチらも手伝うよ! ネオたんもいいよね?」

「……別に構わないけど」


 好感を持ってくれたのか、あたしの味方になってくれた。


 普通に過ごしていた場合、コミュ障なんちゃってギャルのあたしが、真のギャルである蓮華ちゃんたちと仲良くなることはなかっただろう。仲を取り持ってくれた遊々子ちゃんには、感謝しかない。


 そんな優しいみんなは、休日にもかかわらずあたしのために集まってくれた。とても嬉しいけど、同時に申し訳なくもある。


「えと……ゴ、ゴメンね? お休みなのに呼び出しちゃって」

「いいのいいの。望愛の応援は、わたしたちがやりたくてやってることなんだから」

「そーそー。のあちーとやなぶーの恋バナも聞けるしねー」

「けど、みんなにも都合があっただろうし……」

「どうでもいいよ、そんなこと」


 罪悪感を覚えて縮こまるあたしに、腕組みをした寧音ちゃんが、素っ気なく言い放った。


「藍菜が言ったでしょ? 『恋バナが聞けるし』って。アタシらにもメリットがあるからやってんの。アタシらに気を配ってる暇があるなら、どうすれば柳父と付き合えるかを考えな」

「寧音ちゃん……」

「要約:気に病まなくてもいいんだよ? 望愛のこと応援してるから、頑張ってね!」

「ネオたんのツンデレ気遣い、いただきましたー」

「……うっさい」

「寧音ちゃん……っ!」

「キラキラした目で見んな、望愛! 恥ずい!」


 蓮華ちゃんと藍菜ちゃんにからかわれた寧音ちゃんが、顔を赤らめてそっぽを向く。素っ気ない態度は、気遣っていると知られるのが照れくさかったからみたいだ。


 ぶっきらぼうに見えて実は優しいところ、なんだかノリくんに似てるかも。寧音ちゃんのこと、クールで近寄りがたいって感じてたけど、親近感が湧いてきたなあ。


 しみじみと思っていると、居たたまれなさにたまりかねたのか、寧音ちゃんが乱暴にテーブルを叩いた。


「いいから、はじめるよ! 今日は進展報告会でしょ!? ほら、望愛! とっとと話す! アタシらは、あんたと柳父の恋バナ目的で来てんだからね!?」

「う、うん。わかった」


 急かす寧音ちゃんにコクコクと頷いて、あたしは遠足での出来事を語りだした。


「あたしとノリくんが二人っきりになれるよう、みんなが取り計らってくれたけど、積極的にはアプローチできなかったんだ」

「えっ? どうしてー?」

「汗の臭いが気になって……」

「ああ、昨日は暑かったしねぇ」

「わかるよ、望愛の気持ち。好きなひとに汗臭いって思われたくないもんね」

「うん。ただ、あたしのそんな態度を『避けられてる』って勘違いしたみたいで、ノリくん、ヘコんじゃったんだよね」

「偶然にも、恋の駆け引きみたいになったわけか」

「ノリくんはあたしに嫌われたくないんだって気づいたら、なんだかキュンキュンしちゃって、無性に抱きつきたくなったの。実際にはできなかったんだけどね」

「汗の臭いが気になってたもんねー」

「でも、どうしても触れたくて、代わりに手を握ったんだ。そしたら、ノリくんが握り返してくれて……スッゴくドキドキした」

「「「「(あっま)ぁ」」」」


 みんなが声を揃えて、感じ入るように溜息をつく。


のあちーもやなぶーも(お前ら)最高かよー。心が潤うー」

「なかなかの糖度だったねぇ。ブラックコーヒーを()いできておいて正解だったよぉ」

「ピュアすぎて、聞いてるこっちが照れちゃうね」


 藍菜ちゃんがツヤツヤした顔で笑い、遊々子ちゃんがドリンクバーから持ってきたコーヒーをすすり、蓮華ちゃんが呆れと照れが混じったような苦笑を浮かべる。


 蓮華ちゃんたちが三者三様の反応を見せるなか、寧音ちゃんがあたしに向けてちょっとだけ口元をほころばせた。


「ま、よかったんじゃない? 望愛の努力が実ってるみたいで」

「実ってる、かな?」


 (ねぎら)ってもらったけど、いまいち自信が持てなくて、あたしの返事は疑問形になってしまう。ただ、残りの三人は寧音ちゃんに同感らしく、首を縦に振っていた。


「望愛ちゃんに避けられてると思って、紀樹はヘコんでたんでしょ? それって、望愛ちゃんがすぐ(そば)にいることが、紀樹の当たり前になってるからなんじゃないかなぁ?」

「うんうん。きっと、のあちーの猛アタックの影響だよね!」

「手を握り返してきたのも好意の表れじゃない? 少なくとも、柳父くんが望愛に特別な感情を抱いてるのは、たしかじゃないかな?」

「そっか……そうかも」


 遊々子ちゃんたちが後押ししてくれたおかげで、少しだけ前向きになれた。それに伴って、努力が成果に結びついたことに対する喜びが湧いてくる。


 あたし、ちゃんとノリくんとの関係を進められてるんだ。本当に、ノリくんのカノジョになれるかもしれないんだ。


 じんわりと胸が温かくなり、自然と笑みがこぼれる。


 そんなあたしに、みんなが柔らかい眼差しを向けてくれていた。


「順調でなによりだよね! このままガンガン攻めちゃおう!」

「だね。柳父くんは理性的っぽいけど、ちゃんと望愛のアプローチが効いてるみたいだし」

「もうすぐゴールデンウィークだよねぇ? 次の手を仕掛けるにはちょうどいいんじゃないかなぁ?」

「みんなでアイデア出すか。望愛も考えるんだよ」

「うん!」


 寧音ちゃんに促されて、あたしは元気よく頷く。


 頼もしい仲間たち(みんな)との作戦会議がはじまった。

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