早とちり――6
二本先取したほうが勝ちという取り決めで、俺と望愛の対戦がはじまった。
「あっ、やっ、待っ」
「ここだ!」
「ふぐぅっ!」
「っし! 勝利!」
一戦目を制したのは俺だ。肩を落とす望愛の隣で、グッと拳を握りしめる。
『結構強い』と言っていただけあり、望愛はかなりの腕前だった。ランクマッチでもダイアモンド帯(上から二番目)と、なかなかのものだ。
しかし俺は、マスターランク(最高位)の遊々子と度々対戦している。毎回遊々子にボコられているおかげで、難なく対処できた。
負けられない状況なので、集中力も研ぎ澄まされている。これなら問題なく勝てるだろう。
「次も勝って終わりにするからな」
「むぅ……」
「そんな目で睨んでもダメだ。ほら、二戦目がはじまるぞ」
恨みがましい視線を向けてくる望愛に、ぴしゃりと言い放つ。
冷たくあしらってしまったことに罪悪感を覚えるが、いまは心を鬼にしなければならない。望愛にエッチなことをするわけにはいかないのだから。
二戦目も俺が優勢だった。もともと実力差があるうえ、一戦目で望愛の戦い方を把握したので、先ほどよりも楽なくらいだ。
望愛がなんとか食いつこうとしているが、差は縮まらない。望愛が使用するキャラのHPバーは、ドンドン削れていく。
このままたたみかける!
勝負を終わらせるべく、決め技のコマンドを入力しようとした――そのとき。
「ふぅー」
「ふおっ!?」
耳に息を吹きかけられて、間の抜けた声を上げてしまった。怯んだせいでコマンド入力に失敗し、決め技は不発に終わる。
「隙あり!」
「ちょっ!?」
そのミスに望愛はつけ込んできた。
望愛が仕掛けてきたコンボ攻撃から逃れることができず、俺は敗北してしまう。
「二戦目はあたしの勝ち! これでイーブンだね!」
「んなわけあるか! 無効試合だろ、これは!」
平然と勝利宣言する望愛に、流石に黙っていられなかった。噛みつくように抗議する。
「いまのは卑怯だぞ、望愛!」
「な、なにがー?」
「とぼけるな! 俺の耳に息を吹きかけただろ!?」
「負けそうだったから溜息をついただけだよー? わざとじゃないよー? 不幸なアクシデントだよー?」
追及から逃れようと、望愛が棒読みな言い訳をする。決して目を合わせまいとする態度からも、嘘をついているのが丸わかりだ。
盤外戦術まで用いてくるとは思いもしなかったぞ! そこまでしてエッチなことをさせたいのかよ、望愛は!?
「ほ、ほら、三試合目がはじまっちゃうよ?」
「く……っ!」
俺の抗議を回避しようと思ってか、望愛がテレビ画面を指さした。
お説教は後回しだ! ひとまず、この勝負を制する!




