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何度転生しても逃げられない  作者: S@Y@


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第九十六話 エレノアの最後


 地下道の中。


 リゼリアは足を止めた。


「エヴァンローズ家の当主が……?」


「ああ。」


 アレクシスの血を継ぐ男は頷いた。


「エレノアが亡くなる前、最後に会ったのは当時のエヴァンローズ公爵だった。」


「その人が何を知っていたの?」


「そこまでは、私にも分からない。」


 ノアが尋ねる。


「では、なぜそう言い切れる?」


「エレノアが残した手紙に書かれていた。」


 男は懐から古い紙を取り出した。


「『この秘密を知るのは、私とアレクシス。そしてエヴァンローズ家の当主だけ』と。」


 リゼリアは紙を見つめる。


「だったら……。」


「当主が真実を記録に残した可能性がある。」


 レオンが続けた。


「だから、古い記録が狙われているのか。」


「ああ。」


 ノアが頷く。


「でも、一つ気になる。」


「何?」


「なぜ今なんだ?」


 男が黙る。


 ノアは続けた。


「百年以上前の秘密だ。なぜ今になって、リゼリアまで狙われる?」


「……理由はある。」


 男はリゼリアを見る。


「エレノアの記録には、最後にこう書かれている。」


「『次の血を継ぐ者が生まれた時、真実を明かす』と。」


 リゼリアは目を見開く。


「私が生まれたから……?」


「おそらく。」


 ノアがリゼリアの手を握る。


「だから、犯人は君を探している。」


「でも、それなら殺す必要はないんじゃ……。」


「そうだ。」


 ノアの表情が険しくなる。


「だから、俺は別の目的があると思ってる。」


 その時。


 地下道の奥から、かすかな物音がした。


「……誰かいる。」


 レオンが剣を抜く。


 全員が身構える。


 暗闇の奥から、一人の女性が姿を現した。


「……お母様?」


 リゼリアが驚く。


 そこにいたのは、エヴァンローズ公爵夫人だった。


「どうしてここに?」


「あなたたちを追ってきたの。」


 夫人は息を整える。


「公爵家に戻ったら、屋敷の外に敵が集まっていた。」


「それで、地下道を使ったの。」


 ノアが尋ねる。


「お母様は、地下道のことを知っていたんですか?」


「ええ。」


 夫人は頷く。


「昔、母から教えられた。」


 そして、リゼリアを見る。


「それと……。」


 夫人は胸元から一枚の古い紙を取り出した。


「母が亡くなる前に、私へ渡したものがあるの。」


「何が書いてあるの?」


 夫人は紙を開く。


「エレノアの最後の言葉よ。」


 リゼリアが覗き込む。


 そこには、震えた文字で一文だけ書かれていた。


『アレクシスを守るためではない。』


『私は、リゼリアへ続く血を守った。』


 リゼリアは息を呑んだ。


「……私へ?」


 ノアも黙って紙を見つめる。


 エレノアは、百年以上前から――。


 自分の遠い子孫を守ろうとしていた。


 その理由は、まだ分からない。


 だが。


 リゼリアが生まれたことで、封じられていた秘密が動き始めた。


 そしてその秘密を知るためには――。


 エヴァンローズ家の当主だけが知る、最後の記録が必要だった。

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