第九十五話 夜の襲撃
次々と矢が飛んでくる。
「全員、墓石を盾にしろ!」
レオンが叫ぶ。
騎士たちが散らばる。
ノアはリゼリアを抱えるようにして、墓石の陰へ移動した。
「怪我は?」
「大丈夫。」
「本当に?」
「うん。」
リゼリアが頷く。
ノアはほっと息を吐いた。
「よかった。」
その直後。
男たちが一斉に墓地へ入ってきた。
「来るぞ!」
レオンが剣を抜く。
騎士たちも応戦する。
金属音が夜の墓地に響いた。
リゼリアはノアの背中を見つめる。
「ノア……。」
「ここにいて。」
「でも……。」
「大丈夫。」
ノアは振り返って微笑んだ。
「絶対に守る。」
男が一人、リゼリアへ向かって走ってくる。
「リゼリア!」
ノアがすぐに間へ入る。
ガキィン!
剣と剣がぶつかった。
ノアが相手の剣を弾き飛ばす。
「リゼリアに触れるな。」
男が怯んだ。
その隙に騎士が取り押さえる。
しかし、まだ敵は残っている。
「多すぎる!」
レオンが叫ぶ。
その時、アレクシスの血を継ぐ男が前へ出た。
「こちらへ!」
「この墓地には、抜け道がある!」
ノアがリゼリアを見る。
「行こう。」
「うん。」
三人は男の後を追う。
エレノアの墓の裏へ回る。
男が墓石の一部を押す。
ゴゴゴ……。
地面の一部が開いた。
「地下道?」
リゼリアが驚く。
「ああ。」
男が頷く。
「エレノアが、いざという時のために作ったものだ。」
全員が地下へ入る。
ノアが最後に振り返る。
敵はまだ墓地にいる。
「急げ!」
レオンが叫ぶ。
扉が閉まる。
暗闇の中を、ランタンの明かりだけを頼りに進んでいく。
しばらくして。
リゼリアが口を開いた。
「エレノアは……本当に、何者だったの?」
男が答える。
「普通の令嬢だった。」
「ただ、間違ったことを見過ごせない人だった。」
「だから、アレクシスを守った。」
リゼリアは黙って聞いている。
「そして、そのせいで命を狙われた。」
ノアが尋ねる。
「エレノアは、その後どうなった?」
男は少し黙った。
「……記録では、病死したことになっている。」
「だが、本当は違う。」
リゼリアが振り返る。
「違う?」
「ああ。」
「エレノアは――殺された。」
リゼリアは息を呑んだ。
「誰に?」
男は首を振る。
「分からない。」
「でも、一つだけ確かなことがある。」
男は立ち止まった。
「エレノアが亡くなる直前、最後に会った人物がいる。」
ノアが尋ねる。
「誰だ?」
男はリゼリアを見る。
「エヴァンローズ家の当主だ。」
リゼリアの顔が強張る。
「……私の先祖?」
「ああ。」
男は頷いた。
「そして、その人物が――」
「エレノアの最後の秘密を知っていた。」




