表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度転生しても逃げられない  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/18

第九話 婚約


 月日は、穏やかに流れていった。


 リゼリアは八歳。


 ノアは十歳になっていた。


 二人が顔を合わせることは、もう珍しいことではない。


 月に一度のお茶会。


 一緒に本を読む時間。


 庭園を散歩する時間。


 その全てが、リゼリアにとって当たり前の日常になっていた。


 そして、その日常は――何より幸せだった。


 ◇ ◇ ◇


「リゼリア」


 夕食後、公爵が娘を執務室へ呼んだ。


「少し話がある」


「はい、お父様」


 父の向かいへ座ると、どこか嬉しそうな表情が目に入った。


「レイヴェルト公爵家から正式なお話があった」


 リゼリアの心臓が跳ねる。


「正式な……?」


「ああ」


 父は優しく微笑んだ。


「ノア君との婚約を進めたいそうだ」


 一瞬、言葉を失った。


 婚約。


 ついに。


 その日が来た。


「もちろん、お前の意思を一番に考える」


 父は真剣な眼差しで続ける。


「まだ子ども同士だ。嫌なら断って構わない」


 リゼリアは俯いた。


 嫌。


 そんなはずがない。


 最初は、生き残るためだった。


 あの人から逃げるため。


 普通の人生を手に入れるため。


 だから選んだ相手だった。


 でも。


 今は違う。


 ノアと話す時間が好きだった。


 ノアの笑顔を見ると安心した。


 また会いたいと思った。


 もっと一緒にいたいと思った。


 気づけば。


 『安全だから』ではなく。


 『ノアだから』。


 そう思うようになっていた。


「……お父様」


 リゼリアは顔を上げる。


「私は」


 少し照れくさくて。


 でも。


 自然と笑みがこぼれた。


「ノア様のお嫁さんになりたいです」


 父は目を丸くしたあと、穏やかに笑った。


「そうか」


 それだけで十分だった。


 ◇ ◇ ◇


 数日後。


 婚約の席が設けられた。


「リゼリア様」


 正装姿のノアは、いつも以上に緊張していた。


 眼鏡がずり落ちそうになるたび、慌てて押し上げている。


「今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ」


 二人は向かい合って座る。


 両家の親たちは、少し離れた場所で見守っていた。


 ノアは何度も口を開きかけては閉じる。


「ノア様?」


「あ、あの……」


 ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。


「ぼ、僕なんかで、本当にいいんでしょうか……」


 その言葉に。


 リゼリアは思わず笑ってしまった。


「また、それですか」


「だ、だって……」


「私が選んだんですよ?」


 ノアはきょとんとした。


「え?」


「ノア様がよかったんです」


 その瞬間。


 ノアは固まった。


 耳まで真っ赤になる。


「そ、そんなことを言われたら……」


「?」


「すごく……嬉しいです」


 その笑顔は。


 少しだけ照れくさそうで。


 でも、とても幸せそうだった。


 リゼリアも笑う。


 ああ。


 この人を選んで、本当によかった。


 あの恐ろしい日々は、もう終わったのだ。


 私はきっと。


 この人と幸せになれる。


 そう信じて疑わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ