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何度転生しても逃げられない  作者: S@Y@


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第八十三話 もう一つの秘密


 翌朝。


 エヴァンローズ公爵家から届いた手紙を、ノアとリゼリアは並んで読んでいた。


「もう一つ、なくなっているもの……?」


 リゼリアが呟く。


 ノアが手紙の続きを読む。


「『古い記録と一緒に保管していた、家紋入りの箱がなくなっていた』。」


「箱?」


「ああ。」


 そこへレオンが入ってきた。


「父上から聞いた。」


「その箱について何か分かった?」


「昔からエヴァンローズ家で保管されていたらしい。」


 レオンは椅子に座る。


「ただ、箱の中身を知っている人間はほとんどいないそうだ。」


「お父様も?」


「知らないらしい。」


 リゼリアは首を傾げた。


「じゃあ、どうしてそんなものを盗むの?」


「それを調べる必要がある。」


 ノアが答える。


 その時。


 扉が開いた。


 エヴァンローズ公爵家から来た使者だった。


「リゼリア様。」


「どうしたの?」


「公爵様から、もう一つ伝言があります。」


 使者は一枚の紙を差し出した。


 リゼリアが受け取る。


『その箱は、お前が幼い頃に一度だけ見たことがある。』


「……私が?」


「はい。」


 リゼリアは記憶を探る。


 けれど、何も思い出せない。


「全然覚えていないわ。」


「無理もない。」


 使者が答える。


「かなり昔のことですから。」


 ノアが手紙を見る。


「箱には何か特徴が?」


「黒い木箱で、エヴァンローズ家の紋章が刻まれていたそうです。」


 リゼリアは少し考えた。


「……待って。」


「どうした?」


「黒い箱……。」


 頭の奥で、何かが引っかかった。


 幼い頃。


 父の書斎。


 大きな机。


 その上に置かれていた、小さな黒い箱。


「……見たことがある。」


 ノアがリゼリアを見る。


「思い出した?」


「少しだけ。」


 リゼリアは額に手を当てる。


「お父様が、誰かと話していた。」


「何を話していたかは?」


「分からない。」


 けれど。


 一つだけ覚えていた。


「その箱を見て、お父様がすごく怖い顔をしていた。」


 部屋が静まり返る。


 ノアが低く呟く。


「それなら、その箱はただの古い箱じゃない。」


「うん。」


 リゼリアは頷いた。


「何か、大事なものが入っていたんだと思う。」


 レオンが立ち上がる。


「父上に聞こう。」


「ああ。」


 ノアも立ち上がる。


「ただし、今度は慎重に動く。」


「犯人は、まだ近くにいるかもしれないからな。」


 リゼリアも頷いた。


 その時。


 使者が慌てた様子で口を開いた。


「……実は、もう一つ。」


「何?」


「公爵様が、こう伝えてほしいと。」


 使者はリゼリアを見つめた。


「『その箱を探しているのは、エヴァンローズ家の過去を知っている人間だ』と。」


 リゼリアは息を呑んだ。


 自分の知らない過去。


 そして、それを知っている誰かがいる。


 ノアがそっとリゼリアの手を握る。


「大丈夫。」


「今度は、一緒に知っていこう。」


 リゼリアは小さく頷いた。


「うん。」


 二人は顔を見合わせる。


 その頃。


 誰もいない場所で、一人の男が黒い木箱を開けていた。


 中に入っていたのは――。


 一枚の古い肖像画だった。

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