表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度転生しても逃げられない  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/89

第七十話 黒幕の影


 翌朝。


 屋敷は、昨夜の事件の影響で慌ただしかった。


 庭には騎士たちが集まり、屋敷の周囲を調べている。


 使用人たちも、いつも以上に慎重に動いていた。


 リゼリアは窓辺に立ち、外の様子を眺めていた。


「まだ調べているのね。」


「ああ。」


 後ろからノアの声がする。


「昨夜の男は、まだ捕まっていない。」


「……そう。」


 リゼリアは小さく息を吐いた。


 怖くないわけではない。


 けれど、昨夜のノアの言葉を思い出す。


 前世。


 自分を失うことを恐れ、自由を奪ってしまったノア。


 今世では、同じことを繰り返さないようにしている。


「ノア。」


「ん?」


「今日、少し外へ出てもいい?」


 ノアの表情が僅かに固まる。


 昨夜のことを考えれば、反対したくなるのだろう。


 それでも。


「もちろん。」


 ノアは頷いた。


「ただ……騎士を同行させてもいいか?」


「ええ。」


「ありがとう。」


 ノアは少しだけ安心したように笑った。


 その時。


 コンコン。


 扉が叩かれる。


「どうぞ。」


 入ってきたのはレオンだった。


「おはよう。」


「兄上。」


 ノアが振り返る。


 レオンは二人の様子を見てから、静かに口を開いた。


「昨夜のことだが。」


「父上から、少し話を聞いてきた。」


 ノアの表情が引き締まる。


「何か分かった?」


「ああ。」


 レオンは手にしていた書類を見せる。


「昨夜、襲撃犯が使っていた短剣について調べてもらったらしい。」


「柄に、見慣れない紋章が刻まれていたそうだ。」


 ノアが書類を受け取る。


 そこに描かれた紋章を見た瞬間。


 ノアの表情が変わった。


「……この紋章。」


「知っているのか?」


 レオンが尋ねる。


 ノアはしばらく黙っていた。


「父上から聞いたことがある。」


「王都では存在しないことになっている組織のものだ。」


「名前は?」


 リゼリアが尋ねる。


 ノアは静かに答えた。


「黒蛇。」


 その名前に、リゼリアの胸がざわつく。


「暗殺組織なの?」


「ああ。」


 ノアが頷く。


「ただ、表立って活動している組織じゃない。」


 レオンも難しい顔をする。


「昔から噂だけはあった。」


「貴族同士の争いに関わっているとも、王都の裏側で仕事をしているとも言われている。」


「でも。」


 レオンは首を傾げた。


「なぜ、リゼリアさんを狙うんだ?」


 ノアは答えなかった。


 書類へ視線を落としたまま、何かを考えている。


 やがて。


「……分からない。」


 低い声が落ちる。


「ただの無差別な襲撃ではない。」


「そう思う。」


 レオンも頷く。


「俺もそう思う。」


 兄弟の間に、重い沈黙が落ちる。


 その時だった。


 コンコン。


 再び扉が叩かれた。


「失礼いたします。」


 入ってきたのは、屋敷の使用人だった。


「ノア様。」


「王宮から使者が参りました。」


「昨夜の襲撃について、急ぎお伝えしたいことがあるそうです。」


 ノアが顔を上げる。


「何か分かったのか?」


「はい。」


 使用人は緊張した面持ちで頷いた。


「襲撃犯について、少しだけ情報が得られたそうです。」


「それで?」


 ノアが尋ねる。


 使用人は一瞬ためらった。


「……襲撃犯は。」


「リゼリア様のお名前を知っていたそうです。」


 部屋の空気が凍りついた。


 リゼリアは息を呑む。


 昨夜の男は、偶然リゼリアを狙ったのではない。


 最初から。


 誰かに命じられて――。


「私を……狙っていた?」


 ノアは何も答えなかった。


 ただ、リゼリアの手をそっと握る。


 その手は、以前のように閉じ込めるためではない。


 震えるリゼリアを安心させるために、静かに寄り添っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ