表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度転生しても逃げられない  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/82

第三十一話 逃げられない理由


 リゼリアは震える足で、一歩後ろへ下がった。


 けれど。


 もう壁だった。


「……来ないで」


 かすれた声で言う。


 ノアはそれ以上近付かなかった。


「安心しろ」


「安心なんて……!」


 思わず声を荒げる。


「あなたは毎回そう言うの!」


 涙が滲む。


「『安心しろ』って!」


「『愛してる』って!」


「『君のためだ』って!」


 胸が苦しい。


「そのあと、いつも私を閉じ込めたじゃない!」


 部屋に静寂が落ちる。


 ノアは否定しなかった。


 言い訳もしない。


 ただ静かにリゼリアを見つめている。


「どうして……」


 涙が頬を伝う。


「どうして普通に愛してくれないの?」


 その一言に。


 ノアはほんの少しだけ目を伏せた。


「普通、か」


 静かな声だった。


「俺は毎回、そのつもりだった」


「嘘よ!」


「嘘じゃない」


 即座に返ってくる。


「一度目は、俺も普通に愛そうとした」


 リゼリアは息を止めた。


「君が笑ってくれるだけで満足だった」


「君が隣にいてくれるだけで十分だった」


「本当に、それだけだった」


 その声に偽りは感じられない。


 だからこそ、怖い。


「でも」


 ノアは苦く笑った。


「君は死んだ」


「……」


「俺より先に」


 リゼリアの瞳が揺れる。


 前世の最期は、ほとんど覚えていない。


 監禁されていたことばかりが強く残っている。


「二度目は、守ろうと思った」


「危険な場所へ行かせないようにした」


「三度目は、もっと護衛を増やした」


「四度目は、誰にも近付けなかった」


 一つひとつ。


 静かに語る。


「全部」


 ノアはリゼリアを見つめた。


「君に生きていてほしかったからだ」


 リゼリアは首を振る。


「だからって!」


 涙を拭う。


「自由を奪っていい理由にはならない!」


「ああ」


 ノアはあっさり頷いた。


「分かってる」


「……え?」


「普通じゃないことくらい」


 リゼリアは言葉を失う。


 否定すると思っていた。


 正当化すると思っていた。


 でも違った。


「俺は、自分が壊れてることくらい知ってる」


 穏やかな声で。


 まるで天気の話でもするように言う。


「それでも」


 ノアは迷わなかった。


「君を失うくらいなら」


 一歩。


 リゼリアとの距離を縮める。


「嫌われてもいい」


 また一歩。


「憎まれてもいい」


 もう逃げ場はない。


「生きていてくれるなら、それでいい」


 その言葉に。


 リゼリアは初めて理解した。


 この男は。


 自分を信じていないのではない。


 愛し方を知らないのでもない。


 全部理解した上で。


 それでも、自分を閉じ込めることを選んでいる。


 それが、この男の答えなのだ。


 リゼリアはゆっくりと首を横に振った。


「……そんな愛は」


 涙が零れる。


「幸せじゃない」


 ノアは静かに微笑んだ。


「そうだな」


 否定しない。


「でも」


 その笑みは、どこまでも穏やかだった。


「君が生きている世界が、俺にとっての幸せなんだ」


 その一言は。


 どんな脅しよりも。


 どんな狂気よりも。


 リゼリアの心を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ