第十二話 会いたいという気持ち
ノアへ手紙を送ってから三日。
リゼリアは、なぜか落ち着かなかった。
「お嬢様、お花はいかがですか?」
「え? あ、ありがとう」
花瓶に花を飾る。
本を開く。
刺繍をする。
どれも長続きしない。
気づけば窓の外を眺めている。
「……まだかな」
ぽつりと呟いてしまった。
返事が届くには、まだ早い。
分かっている。
分かっているのに。
「私、どうしちゃったのかしら」
自分でも笑ってしまう。
◇ ◇ ◇
「お嬢様!」
昼過ぎ。
侍女が少し嬉しそうな顔で部屋へ入ってきた。
「レイヴェルト公爵家からお手紙です」
「……!」
リゼリアは立ち上がりかけて、はっと我に返る。
「……そ、そう」
平静を装いながら受け取る。
「ありがとう」
侍女が部屋を出るのを待ってから。
「……!」
急いで封を開いた。
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リゼリア様
お返事をいただけると思っていなかったので、とても驚きました。
何度も読み返しています。
花の名前も覚えました。
今度お会いした時、間違えずに言えたら褒めてください。
それから。
リゼリア様も、本がお好きになったら嬉しいです。
今度、おすすめを持っていきます。
お会いできる日を楽しみにしています。
ノア・レイヴェルト
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「……何度も?」
思わずその一文を見つめる。
何度も読み返している。
そんなに。
私の手紙を。
嬉しかったの?
胸が、くすぐったい。
気づけば。
リゼリアもまた、その手紙を二度、三度と読み返していた。
◇ ◇ ◇
一週間後。
待ちに待った訪問の日。
馬車がレイヴェルト公爵家へ到着すると、リゼリアは自然と窓の外を見た。
「あ……」
玄関前には、ノアが立っていた。
まだ馬車も止まりきっていないのに。
こちらを見つめている。
扉が開く。
「リゼリア様!」
ノアは一歩前へ出ると、すぐにはっとして足を止めた。
「あ……す、すみません」
勢いよく迎えに来てしまったことが恥ずかしかったのだろう。
耳まで真っ赤になっている。
「待っていてくださったんですか?」
「えっと……」
ノアは視線を泳がせた。
「た、たまたま外に……」
その時。
「ノア様」
近くを通った庭師が、不思議そうな顔をした。
「今日はずいぶん早くから玄関にいらっしゃいましたね」
「…………」
ノアが固まる。
リゼリアも固まる。
庭師は首を傾げたまま去っていった。
しばらくの沈黙。
「……ふふっ」
リゼリアが笑うと。
ノアは顔を真っ赤にして俯いた。
「ぼ、僕……その……」
「待っていてくださったんですね」
「……はい」
小さく頷く。
「会えるのが、楽しみだったので」
その一言が。
リゼリアの胸を優しく満たした。
「私もです」
自然に言葉がこぼれる。
「ノア様に会えるのを、とても楽しみにしていました」
ノアは驚いたように目を見開き。
それから。
子どものように嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、リゼリアも笑う。
今日もきっと。
穏やかで、優しい一日になる。
そう思うと、自然と足取りも軽くなった。




