2ー1
「それでは、行ってくる」
ジョゼフ国王陛下はジュリア王妃様にしばしのわかれを言い置いたのちに、熱い抱擁を交わした。
「ジェインも気をつけてねぇ〜」
ああ、シャノン様。なんとおかわいらしいのでしょう。
「はい。シャノン様も、あまりリリーさんを困らせないようにしてくださいね」
「うん! ね、リリー。シャノンと仲良しだよね?」
「はい、シャノン様」
リリーさんは少しも僕の顔を見てくれずに、シャノン様の髪を直してあげております。
これを慈悲の女神と言わず、なにが女神なのでしょう!?
「……やはり、熊鈴は受け取ってもらえませんか?」
僕があまりにも悲しそうに告げたからでしょうか。リリーさんが少しだけぶっきらぼうに答えます。
「そこまで言うのでしたら、もらいますよ?」
「……本当ですかっ!? やった!! これ、ちゃんとあなたの名前を刻印したのですよ」
受け取ってくれるという嬉しさから興奮のあまり、言葉が紡ぎ出す。
「そうなのですね」
「僕が刻印したのですよ」
「へぇ〜? 器用なのですね」
前回はこのやり取りもないうちに突き返されてしまいましたからね。
「僕になにかあったら、この鈴を鳴らしてください」
「なにかあったら困りますっ!」
ああ、リリーさん。なんと麗しい言葉をかけてくれるのでしょう。愛してます、が口から出かけたので言葉を飲み込みました。
ついにここまで進展したのですっ!!
「とにかく、気をつけてくださいましね?」
「はいっ!! 粉骨砕身がんばりますっ!!」
ここでリリーさんの手に熊鈴が渡りました。ついでに手を握ろうとして拒否されてしまいました。
「では、きりがないのでここまでにしておこうか。行くぞ、ジェイン」
「はい、陛下」
こうして僕はリリーさんにまんまと熊鈴を渡して、陛下と共に歩き始めました。
いやぁ、久しぶりの徒歩移動。楽しいです。
しかも隣には陛下がにこにこしております。
一応盗賊対策として短剣をさげている僕たちですが、これを使う機会がないことを祈ります。
「時にジェイン。ここからはもう我を呼び捨てにしてくれたまえ」
「はっ」
「その堅苦しい言葉もなしだ」
「そうはおっしゃいますが。なんとも癖になっているものですから」
「まぁよい。ところでジェインよ。囲われているぞ」
「……はい?」
陛下はすぱっと短剣を抜きました。
まだお城からそんなに離れていないところで盗賊に囲まれてしまいました。
僕も本気で短剣を抜きます。
よし。やっつけてさしあげましょう。
つづく




