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ところがです。庶民に化けるにあたって、そこそこな庶民の服を着なければならず、ブラックカードも使うことはゆるされず、またそこそこな宿屋にしか寝泊まりすることができず、あげく、最小限の金貨しか持っていけないというありさまに僕は愕然と膝をつきました。
だってそうでしょう?
そりゃあ、空間魔法を使えば、陛下の見ていない間にズルをすることはできますが、それが陛下にバレた時のことを思うとズルはできません。
「よいか、ジェイク。ズルいことはしてはならんぞ」
「それを言うのならば、陛下の方こそお言葉遣いでバレてしまいますよ?」
う、ううん、と陛下が咳払いをしました。
「しばし、我のことは陛下ではなくジョゼフと呼ぶように。それと、そなたも相当堅苦しい言葉遣いをしておるぞ」
「……名前呼びは、ちょっと」
「なに気にするでない。我も楽しみたいだけなのだからな」
それはどうなのかかなり悩みましたが、せっかくですので呼び捨てにすることにしました。
「おい、ジョゼフって感じですかね?」
「かまわんぞ、ジェイン。ただ、なぜだろうな? 少しだけ胸がムカムカするのだよ。あっはっはっはっはっ」
笑ってません、陛下。目が笑っていません。
「衣服は手に入れたとして、空間魔法が付与しているサコッシュは持って行ってもかまいませんよね? 人前で使いさえしなければ、大丈夫なはずですし」
「ほんとうならばそれすら邪道なのだが。ジュリアがどうしてもそれだけは持って行けとうるさくてかなわん。サコッシュとやらには我の位置情報が付与されておるらしいのだ」
おやまぁ。一見おだやかそうな王妃様ですが、そこはやはり女性なのですね。陛下のことが心配なだけではなく、しっかり手綱を握っていたいのですね。
「そういうことでしたら、なおさら必要です。さぁさ、これで準備ができましたよ。王室御用達の人材派遣会社に問い合わせてみたところ、現在炭鉱掘りを行なっている場所はレモンティ国しかないそうです」
「随分と手回しがいいな?」
「そりゃ、陛下を危険な目にあわせるのですから、なるべくリサーチしておかなければなりません」
「途中、養護施設に寄って行こう。こういう時でもなければ、我がボランティアに参加することはないからな」
まったく、陛下はお人好しなんですから。
このお方の人たらしにはかないません。
だから皆様に好かれるのでしょうね。
つづく




