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「ところで炭鉱掘りのことなのだが――」
「陛下、この熊鈴にはわたくし自らが刻印しておりまして。それでも特別感がないのでしょうか?」
あぶなっ。陛下あぶなっ。うっかりしてると炭鉱の話に持っていかれがちです。
「刻印があったとて、熊鈴は熊鈴。無用の長物だよ」
「そうでしょうか?」
「先ほどから話をわざとそらせておるな?」
「なんのことでしょう?」
あえて笑います。ここは笑わなければならないところです。
「我は炭鉱掘りに行きたいのだ。そこでさりげなく我の評価を聞いてみたい」
「評価を聞きたいだけでしたら、なにも陛下直々にうかがわなくても、わたくしめが聞いてまいります」
「だが、悪いことは言わないつもりであろう?」
「さてさて。なんのことでしょう?」
「とぼけるでない。我はそこまでおろかではないぞ」
「陛下の悪口を言うような愚民はおりませんよ」
「そうであろうか? だが、ジェイクのことがバレたらと思うと、な?」
陛下、気にしすぎですよ。シャノン様のことはもちろん、ジェイク様の存在は口外禁止令が出されております。
ジェイク様には悪かったですが、彼の存在を知っている人はかぎられております。
そのために、あえて無線で連絡を取り合っているのですから。
「陛下のご心配には及びませんよ」
「だがな。我は一度でいいから庶民の暮らしをしてみたいのだよ。そのためには職が必要となる。炭鉱だ」
「いや、いきなり炭鉱なんてあぶなすぎます」
僕が力を込めて訴えたところで、陛下の御心を変えることはできません。
「だがな、我の魔力は炭鉱掘りに使えるのではないかと以前からたくらんでおったのだ」
「以前から、とは……」
「以前とは、以前だ。とにかく我は炭鉱掘りに行きたい。ジェイクの話はしなくてもよいが、庶民の生活を知ってこその王だと信じておる」
「そこまで本気でしたら、しかたありません。わたくしも同行することが条件でしたら、そのように報告書に書きます」
「書かずともよい」
陛下はぴっかぴかの笑顔で僕に笑いかける。ああ、このお方が楽しいのならばそれでもいいか。
「仮に書いたとしても、判を押すのは我だからな」
こうして、熊鈴の話は売っちゃられてしまい、国王陛下と一緒に炭鉱掘りに行くこととなりました。
ジェイク様のことで塞ぎ込んでいた陛下の御心が少しでも癒されますよう、心からお祈り申し上げます。
つづく




