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18/20

5ー2

 リリーさんにさしあげるため、刻印を彫ること数時間。ようやく納得のいくものが彫れたような気がします。


「リリーさんだから百合の花。わかってくれるだろうか?」


 これまでの女性は、僕が誘えば簡単に着いてくるような人たちばかりでした。


 ですが、リリーさんは違います。


 あの手この手でプレゼントをしても、甘い言葉で囁く前に拒絶されてしまうのです。


 まるでこの世界に僕なんて必要ないかのように扱われて。でも、あきらめきれないのです。


 僕は本気でリリーさんに恋をしているのに、どうしてわかってくれないのでしょう?


 そしてリリーさんはどんな人が好みなのでしょう?


 知ったところで僕がヒョロ男な優男であることは変わりがありませんし、変わることは難しいでしょう。


 それでも僕は、リリーさんと一緒にいたい。


 くらげ島から新天地に移れば、もう気軽にリリーさんに会えなくなってしまう予感がするのです。


 そしてもっと、僕とは違うがっしりとした男を好きになってしまうような気がしているのです。


 だからこそ、指輪にすべての想いを込めて刻印したのです。


 いよいよ今日、全員が新天地に移ります。


 その時果たして、リリーさんは指輪を受け取ってくれるでしょうか?


 それとも?


 コンコン、とドアがノックされました。


 最後まで料理番までをも務めてくれたリリーさんが、シャノン様と手をつないで立っていました。


「もう時間ですか?」

「ええ。持ち物は持ち出せましたか?」


 リリーさんに問われて、僕はなんとも言えない顔をしてしまいました。


 ポーカーフェイスが台無しです。


「僕が持って行きたいものは、かぎられていますから」


 今、このタイミングで指輪を渡すのはどうだろう? 


 シャノン様の前で、リリーさんが恥ずかしがるのではないだろうか。


「では、行きましょう。陛下がお待ちです」

「待ってください」


 ぼくは、小箱から指輪を取り出してリリーさんの前に差し出します。


「どうかこれをお受け取りください」

「指輪? なぜですか?」

「刻印がすべてです」


 照れながら僕が言うと、リリーさんはまぁと頬を赤らめます。


「結婚してください。リリーさん。僕が好きなのはあなただけです」


 その返事を聞くのは、もっと先になってもかまいませんから、どうか。


「リリー、結婚しちゃうの?」


 シャノン様はとてもかわいらしく小首を傾げておいでです。


「わたくしは……」


 リリーさんは語尾を濁しました。


     つづく

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