3ー5
島の住人すべてをどこかの陸地にワープする案が出たばかりですが、まだ完璧とはいきません。
「くらげ島で一番魔力だまりがあるのはこの滝壺です。ここに住人を集めるためには、一時的にでも滝の流れを止めなければなりません」
「うむ。滝の流れを止めつつ、ワープもすると。住人も全員ここに集めるのは一度では無理だな」
そこまで言うと、陛下はふっと僕の顔を見て微笑みました。
「ジェイン。最近あまり全力で魔法を使っていないだろう?」
「そうですが。平和が一番ですから」
「どうだ? 我とそなたで一度どこかの陸地にワープしてみないか?」
「二人で、ですか?」
「もちろん、そなたにかけた術は解除することにしよう。最近リリーに冷たくされているのを見てしまったからな」
全力で魔法を使う、か。赤ん坊の頃から魔力が暴発していた僕に、運命の人と一緒でないと、本来の魔力が使えない術をかけられて早二十三年。
僕の運命の人はリリーさんですが、どうやら僕は嫌われてしまったようですので、陛下のお誘いは断りがたいものです。
「いいですね。はたして陸地にあがれるかどうか、またここに戻ってこられるものかどうかを調べる必要はありますものね」
「そうだ、ジェイン。そなたと我の魔力ならば、くらげの電力を上回る自信がある。うまくすれば、住人を数十人ずつワープさせることも可能になるかもしれん」
それはなかなか魅了的なお誘いです。
ここで一度でも成功したら、未来に希望が持てるかもしれません。
「やります、陛下。皆のためにも、自分のためにも」
「これが成功したら、もう道化師としてつまらない口上を話す必要もなくなるな」
それは、少しばかりさみしいですが。
そう、今はそのお誘いに乗るしかありません。
「陛下、それではワープします。しっかり手をつないでください」
「うむ。リンレイは少し離れていてくれたまえ。成功したら、そなたを外の世界に連れ出すことができるかもしれん」
「はい」
そして、陛下は僕にかけた術を解除しました。
と、同時に、身体に圧力がかかり、空間が揺れてきます。
ワープ。
いつもより長いワープに酔いそうになりながら、僕は陛下の手をぎゅっと握りました。
ふっと重力が一点に集中したかと思うと、どこかの砂場にたどり着きました。
「ここは、どこなのだ?」
陛下の声がすぐ近くで聞こえました。
つづく




