第四十話 幻奏掌
ラロット・リエル・リドル・ロイ目線
「ロイが使えると証明して欲しい」
ラロットは開けたバッタのいない空間で、石に座りながら言った。
「そうだな!使えないなら、無駄死にするだけだ」
リエルが同意する。
「ああ、分かっている」
ロイは手を重ね合わせる。
「俺の技――幻奏掌フランツェルテは、手に空気を震わせ音を出し、そこに魔力をのせることで、相手を操るんだ」
そうロイは言うと、手に口から空気を送り込む。
すると、とても綺麗な音が響き渡る。
「――うわ....え!!どうなってんだよ!!」
とリドルが叫びながら、リドルの体がダンスをしだした。
片手のつま先で地面に立ち、クルクルとコマのように回る。
そして、華麗にステップをするとジャンプをし、宙で体を回転させた。
地面に足がつくと、ようやく操りが終わった。
「どうだ?俺の技―― 幻奏掌は!」
ロイは誇らしげにラロットを見つめる。
「――おい、リドル。お前なにも抵抗ができなかったのか?」
「ああ。地面に足がつけるまでなにも抵抗ができなかった....」
「本物だな」
ラロットがそう微笑む。
「だが、音にのせて魔力を出すならば、耳に手を塞いだらどうだ?音が聞こえにくくなるだろう?」
「そうなると、幻奏掌の効き目は薄まるかな。それと耳に魔力を集中させることでも効き目が低下する」
幻奏掌にも弱点もある。
しかし、ラロットにはそんな弱点が些細なことにしか映ってなかった。
バッタの巣に乗り込み、卵全破壊など数秒で終わらせる。
バッタに効き目が薄いとしても、数秒ぐらいは持つであろう。
勝利の兆しが見えてきた。
ラロット達はロイに質問をする。
最大何匹を操れるのか。
何秒操れるのか。
その質問の答えは、こうであった。
何匹操れるかどうかは、音が聞こえた奴、全員を操れる。
何秒操れるかは分からないが、親などは一分ほど操ってたとか。
「早速、キングバッタに試してみようぜ!!」
とリドルは意気込む。
「ああ、そうだな。時間がない」
「俺もそうしたい。自分自身、何秒キングバッタを操れるかどうかが分からない」
すると都合が良いように、キングバッタの羽の音が聞こえてくる。
「実験材料がきたな。魔力に耳を集中させ手で塞いでおいて!」
ロイはそう言うと、木の上へと慣れた手捌きで登っていく。
「おいおい...あいつ前世猿かなんかか?」
リドルの困惑に、
「俺もそう思う。あれはちびっ子のすばしっこい猿だったと予想する」
とリエルは返答した。
そんなくだらない雑談をしていると、ロイが音を奏でだした。
ロイの技に対策を打っているラロット達は、なにも影響がない。
しかし、ロイの音が聞こえる範囲にバッタが入った瞬間、力が入らなくなったように、飛ぶのをやめ地面に落ちた。
そして、バッタ達は狂ったように暴れ始めた。
お互いがお互いを傷つけ始め、あっという間に死んでしまった。
この間、40秒であった。
「多分、これ以上は持たない。だから、殺した」
ロイは、スッと木を降りるとバッタを踏み付ける。
「こいつらはバッタの中でも弱い方だ。俺らが襲われた時、黒い鎧のようなものを身につけたバッタが何匹もいた。特にそいつらに能力が効かなかった」
「お前....凄いじゃねぇか!!」
とリドルは、ロイの元へと行くと抱きしめる。
「なに言ってんだ....これは俺が住んでたとこでは当たり前で....」
ロイの鋭い目つきは、柔らかくになり、照れから頬を赤く染めた。
「なに言ってんだ!俺はお前のことを褒めてんだ」
とリドルがもっと強く抱きしめる。
「これで、大きな巣にへと突入できる希望が見えたな」
とリドルはロイの方に手を置く。
「やめろ!!重いんだよ!!」
「ロイ、自分は君を心のどこかでみくびっていたらしい。それをここで謝罪する」
とラロットは頭を下げる。
「――だから、やめろって....」
ロイは自分の照れを無理矢理隠した。
◇
小さな洞窟で。
「美味しいなこれ!」
「だろう?ここら辺で取れる果実の中で一番美味しいんだ」
ラロットはそう豪語する。
「ああ、美味しい」
とリエルはガブガブと黄色の果実を食べた。
「確かに美味しいな」
とロイは不思議そうに食べた。
この黄色の果実は、毒性の強い皮に覆われている。
その皮を食べてしまえば、20秒でポックリと行くほどである。
それ故に、大型魔物すら食すのを拒む。
しかし、知恵があり器用な生物ならば、皮膚さえ取り除けば食べれたのだ。
それが人である。
「おい、ロイ。この戦いに無事勝ったら自分たちの仲間へと入らないか?」
ラロットは、黄色の果実を食べ終えると、ロイを勧誘した。
「どういうことだ?」
「もう少し生きてみないか?ってことだ。お前はここで死ぬような器ではない」
「そうだよ!!ロイ。俺ら友達だろう?俺は少なくともロイを気になったし、死ぬなんて言わないでさ!」
リドルはロイを真っ直ぐ見つめる。
リエルは黙ったまま、ロイを見ていた。
「ありがとうな。でもその勧誘は断るぜ。今の俺は復讐心で持ち堪えているだけで、仮にこの戦いに勝ったとしたら、俺は燃え尽きて死ぬさ」
リドルはなにも言えなかった。
リドルの友達だったディアが殺された時も復讐心だけで動いていたからだ。
仮にユレンが居なければ、リドルも自殺をしていたであろう。
大切な人を失った人の気持ちは、計り知れない。
「でも、それじゃダメだ。お前の母がどんな思いでお前を救ったのか!」
ラロットが声を大きくする。
「その話はやめろ!親がどんな思いで俺を救ったかは知らない。仮に生きて欲しいという思いでも、無責任すぎだ!俺の居場所は、あそこだけだ!!」
ロイが感情を露わにする。
怒りで首の血管が浮いている。
「親の愛を踏みにじる気か?」
その瞬間、ロイの瞳が鋭く変わった。
まるで、動物が獲物を狙っている時の瞳のようだ。
リドルはそれに気付き、割って入った。
「おい!やめろよ!!俺ら順調に行ってたろ?戦いの前に仲間割れは、バッタに有利になるぞ」
リドルの言葉にラロットはハッとする。
「すまない....」
ラロットは、時と場を弁えずにロイに思いをぶつけた事を反省した。
ロイは顔を俯き、黙ったままであった。




