第四話 準備と別れ
俺は貰った1000ルディをどこに使うかを考えてみた。
そして、まずは、『日が持つ食品』を買い漁り、ミュウ(スライム)に食べさせ保管することにした。
ルナと一緒に市場に行ってみると、やはり賑わっており、ここが都市だからだろうか色々な食品が置いてあった。
見た事のない、歪な形をした耳が長い動物――異世界版うさぎであろうか?そのような動物が足に針を貫通させ何匹も吊らせてあった。
他にも、首が異様に発達した蛇とキリンを足して2で割ったような動物が焼かれソースを付けられ店頭に並べられていた。
ルナ曰く日持ちがする食料は、豊富にある市場に似つかず、あまりないのらしい。
まず、死んだ生き物は魔力が抜けるので、魔力込みで生きていた生物は直ぐに腐るのだとか。だから、魔力が通常以上ある魔物/動物はまず保存するには不向き。魔力をあまり保有していない生物は、身があまり無かったり微生物が湧きやすく商売には不向きで売られていないのだと。この情報をルナから聞いた瞬間、俺の彩りの食生活は諦めるしか無くなった....
そして、数少ない日持ちする食べ物で売られていたのは、虫であった。
おぉう....何というかゲジゲジの巨大版であった。
魔力をあまり保有していないのと酸化しにくい肉体で、日持ち効く生き物らしい。
ダメだグロすぎる....食は食べたくなるからするのであるが、これを見ていると食欲が一気に落ちる。だが、買うしかない。
買った物をミュウに詰めた所、ルナがとても驚いてたのが面白かった。
そんなスライムなど存在しない、そんな生き物など存在しないと興味津々であったのも覚えている。
ゲジゲジの値段は安く20ルディであった。いや、安くはないと思う、それが正常の値段だ。
初めてお金に触れ合ったのが、金持ちがする土地買い。
100ルディ、500ルディ、600ルディなど軽々しく発せられていたので感覚がおかしくなったのだろう。
金の感覚を失うと、物の価値が見失いやすくなるから、気を付けよう。
次は『装備』を買う事にした。
と言っても、装備が土地の比にならないくらい高く、一番安い装備一式で900ルディを優に超えた。
俺は仰天し、店主に聞いてみたのだが、“職人の魂” “鉄の価格の高騰” “魔力を封じ込めるための期間”などを含め、このような事が起きているらしい。
その他にもオークションに掛けられている土地は、特色と気候、安全性だけ調べられた状態で手付かずの状態であるからだ安いらしい。
いや!?安くねぇけどな?
ルナは、良い装備を持っていた為、何ルディしたか?と聞いてみると600ルディ掛かったと言っていた。
ルナも今の装備のあまりの高さに目がクラクラとしていた。
その他にも欲しい物を買い漁り、買いたい物が揃った。
特に本を買い漁り、この世界の植物・食・現象・理などの知識を取り込んだ。
いつヘルシャースに潜るか考えていたが、考えてもしょうがないと言う事ですぐに潜る事にした。
それに、俺がヘルシャースを購入した事は瞬く間に広がっていた為、道行く人にそれは本当か?と話し掛けられるようになり、この国に居にくくなったのもあるんだけどね。
◇
俺が居た国の名前は、『ランジュ王国』と言い、西側に存在する王国らしい。
したがって、俺が最初に行く場所は熱帯気候である。
ランジュ王国と外の境界線である門をくぐると、国の境目は寂しいものか?と思っていたが、そうではなく商人がごった返していて賑やかだったのを覚えている。馬車の馬代わりに大きなトカゲを使っていたのは、印象に残っている。
そして、門から3km離れた場所に行くと、熱帯林らしき物が見えてきた。
あれがヘルシャースか。
ヘルシャースに向かっている途中、段々暑くなってきたのを覚えている。
「本当に行かれてしまうんですね」
ルナは物悲しげに言った。
「あぁ、短い期間だったが色々手伝ってくれてありがとうな」
「ユレンのモノ知らなさには驚きましたけどね」
そう言いながらルナは微笑む。
そして、険しい顔へとルナは変わり、続けた。
「ヘルシャースは『死の地』とも言われています。ミュウの能力などを含めても、まだ運が良くて1ヶ月程しか生きれないと思っています。でもあなたが行きたいのならば止めません。
そして、ここからが大事な事ですが、東の国『サンバキア王国』もヘルシャースを狙っていて、軍備の拡大なのを行なっています。ヘルシャースを平定できる軍備が整うのは、2年間程でしょう。あなたはその間にこの地を平定し国力を上げ、サンバキア王国を追い払う事が必要です。険しい道のりですよ。決して平坦ではありません」
東の国『サンバキア王国』....ランジュ王国がヘルシャースを手放したかったのは、そう言う経緯もあったのか。
それを教えないって酷すぎないか?
買われた土地は、運営は購買者が死んだとしても永久に責任を放棄する事も可能らしい。
だが、土地を買えるのは身分の高い人だけ。
そりゃ、命の価値が高い人はこう言うリスクとリターンが見合わないヘルシャースを買わないのだろう。
タイムリミットが存在する国造りと言うわけか。
こりゃぁ緊張感が溢れるな。
「タイムリミットは2年間。その間にサンバキア王国を超える国力を持たなければいけないのか。重荷が凄く増えたが、やってみせるさ。やり遂げた時は、お前をスペシャル客として最高級のおもてなしをしてやる!!約束だルナ」
俺は拳を前に突き出し言った。
「はい!!」
とルナも拳を前に突き出し、トンと触れ合った。
ルナの顔は頬に照らされ淡く染めていた。
これで俺が掲げる国造りは、俺だけの野望ではなくなった。
俺は絶対に皆に恐れられている地獄の地ヘルシャースを平定してみせる。
そう俺の心の中で誓った。




