第三十四話 加工技術能力①
ラロット達が村を出た後のユレン視点である。
◇
「行ってしまいましたね....」
アスナが心配そうに胸に両手を近づけ、ギュッと握る。
「大丈夫さ!きっと、アイツらなら生きて帰って来れる。だから、俺らも頑張ろう!あいつらを温かく迎え入れる為にな!!」
俺は心配そうにしているアスナにポジティブな意見を言ってみる。
「流石、我輩の長でありますな!!このルーレトもユレン様が居てくださるだけで、元気をもらえます」
とルーレトはガハハと笑った。
「そうですね!!皆んなは絶対生きて帰ってきます!!だから、私達も頑張りましょう」
「ああ、アスナは俺の身の回りを頼む。俺は今から修行をするつもりだ」
するとミュウが俺の服の中から顔を出し、肩に乗っかる。
「分かりました!ミュウちゃんのお世話も致しますよ〜!」
とアスナはミュウの頭を優しく撫でる。
「ミュウ!!!」
ミュウも嬉しそうだ。
アスナにミュウを構ってもらおう!!
俺はミュウを構えないから、きっとミュウも寂しがるだろうしな。
「それで、俺の修行なんだがルーレト、お前に手伝って欲しいんだ」
「我輩ですか....?」
「ああ、でもその前にしたいことがあるから、明日に頼む」
「分かりました」
と軽くお辞儀をする。
◆
俺は修行をする為、言っていた通りミュウはアスナに預けた。
ミュウのプニプニぶりにアスナは可愛い〜!!と言いながら、頬を擦り付けていた。
ミュウも笑っていたが、アスナの頬攻撃にミュウはハハハと乾いた笑いになっていたのが気がかりだ。
アスナは、可愛いものになるとどうにも見境がなくなる節がある。
いつもは、きちんとしているのだが、それの反動かどうか分からないが、おかしくなる時があるのだ。
だが、俺は一番のしっかり者という評価なのは変わりない。
ちょっと、たまにおかしくなるだけだよね。
ルーレトには、村の周りを見張りするように頼んでおいた。
まぁ、少しの間は休んでいてもよかったのだが、歳により今回の任務に加われないことで、少し追い目を喰らっているらしいのだ。
何かをしていないと、ムズムズとして居ても立ってもいれないらしいのだ。
これが禁断の発作なのだろうか....!!
しかし、ルーレトも見張り班に加わってくれることで一層に安心感を得られる。
よし、それじゃあ俺は“したいこと”をするとしよう。
そのしたい事とは、“加工技術能力”の拡張と機能の確認である。
拡張といっても、ただ強くするって意味の拡張なのだが。
ナギが言っていた通り、加工技術能力は名前の通り能力なので、レベルアップが出来る筈。
だから、極めることができると言う寸法だ。
二本足のバッタ....突然変異の象徴とも言える存在。
もう一度説明するが、その二本足が不明な点も多い中で、体が硬いモノに囲まれているらしいと言う情報はある。
そのモノはとても硬く、ナギの攻撃に対し傷一つも付けなかったと言う。
そんな存在に対し対抗手段がないと言うのは、バッタとの戦いに勝利をする為には心許ないだろう。
だから俺が対抗手段になればいい。
そう思った。
だけど、加工技術能力の拡張の仕方が分からない。
だから、まずは機能について確かめてみることにした。
この能力が俺の取り柄としてきたのに、まだきちんと機能に関しては調べてなかった....
やはり俺は前世の俺だ。
安心感と切迫感に苛まれた。
まずは、この能力がどの対象に対して発動するのかが気になった。
ある程度予想は付いているが、きちんと整理をしておこうと思う。
まずは、無機物と有機物のものを用意した。
無機物は石である。
当然、無機物である石は加工技術能力により、加工された。
ならば有機物はどうであろうか?
準備したのは、腐ってしまった肉である。
食ない以上こう言う所に役立ってもらおう。
俺は肉を握り加工技術能力を発動すると、思い通りに加工された。
このことから、無機物・有機物は加工できる事が分かった。
次は、生き物である。
生き物は無機物と有機物の塊みたいなものだから、一見加工されるように思えるが。
そこら辺にいたカエルを捕まえた。
本当にすまない!!カエル!!俺の実験台となってくれ。
俺は加工技術能力を発動させ、カエルを加工するよう試みた。
しかし、カエルにはなんの変化もない。
ただただ、先ほどのようと同じように逃げようともがいているだけだ。
別に魔力量がカエルにあると言うことでもないし、単純に生き物にこの能力は使えないのだろう。
仮に使えたとしてそれを想像してみれば、相当グロい....
自分の手が殺戮兵器に見えていただろう。
あぁ....恐ろしい恐ろしい。
次は、どれだけの魔力を含んだモノならば、加工できなくなるのかを確かめた。
まずは、大きな魔石を加工してみることにする。
普通のそこら辺にある魔石ならすんなりと加工できるのだが、どうだろうか?
結果は、ギリ加工できた。
ギリというのは、加工することに対し時間が掛かってしまったからである。
仮説ではあるが、モノに加工技術能力の力を行き渡らせる際に、魔力量があるモノだと反発が喰らうのだろう。
それをどれだけ強く抑え込めるかが鍵なのかもしれない。
その大きな魔石より一回り大きな魔石を用意して、加工を試みてみる。
結果は、惨敗。
加工できる気がしなかったのだ。
どうやら俺の限界はここなのだろう。
こんな魔力量の魔石も加工できないなんて、本当に二本足のバッタの鎧を加工できる事はできるのだろうか?
やばいプレッシャーで吐きそうだ....
次は、どれだけのデカいモノを加工できるかだ。
する条件は、デカいモノから小さいモノを集め、同じ魔力量であることだ。
俺は、準備を終えると加工技術能力を試した。
と、その前に、表面積・体積・質量で発動に変化が生じるのかを確かめてみた。
結果は、質量と体積だけが関わっているらしい。
表面積の広さを変えた葉っぱで実験を何回かしたのだが、顕著な変化を見られなかったからだ。
逆に体積や質量などをドンドンと変えていくと、能力の発動に変化が見られた。
で、今回は、どれだけデカいモノだと加工できなくなるかの実験でもあるから、質量を変えず体積だけを変化させた。
結果は、高さ35mの木が限界であった。
多分それ以上は、無理である。
俺は、地面に倒れ夕焼けに染まった空を見上げる。
これで、『加工技術能力』の性質がある程度分かった。
ノルマ達成!!
体をギュッと伸ばし深呼吸を吐く。
もうこんな時間かと思う。
今頃仲間は大丈夫なのだろうか?
順調に作戦は進んでいるのだろうか。
俺はアスナに仲間は大丈夫さなど呑気なことを言ったのだが、心の中では心配で気が気ではない。
だが、こんな時だからこそ長の俺は示しを付けなければならない。
それが人の上に立つ者の責任であろう。
「ミュウ!!」
地面に寝っ転がっていた俺の顔にミュウはいきなり飛び付いてきた。
「うわ!ミュウ!!いたのか」
とミュウを優しく抱きしめる。
「お疲れですか?」
アスナの落ち着いた優しい声が聞こえる。
アスナはしゃがみ俺の顔を覗いている。
「ああ、疲れた。だが、達成感でいっぱいだよ」
するとアスナはフフッと笑う。
「それは良かったです。お食事の準備はできていますので、手を洗いお食事を食べてください」
とアスナは言うと、俺の体を支え立たせた。
「ありがとな。どうだった?ミュウは。迷惑しなかったか?」
ま、ミュウはイタズラするような奴ではないので、安心しきっているが。
「ミュウちゃんは、良い子でしたよ!!手伝いは器用にやってくれますし、言うことは聞いてくれます。でも、少し元気すぎたあまりミュウちゃんが皿を何枚か割ったのは、気をつけて欲しいですね」
と次第にドスの効いた声になっていく変化が読み取れた。
「ミュウ....」
とミュウは、そんなアスナを怖がり俺の背中にへと回る。
「いえいえミュウちゃん!!私は全く怒っていませんよ!元気なことは良いことです!次から気をつければいいことですので」
とアスナは優しい口調で話す。
すると、ミュウは安心したのか俺の頭頂に乗りダランとした。
「可愛いですね」
とフフっと気品のある笑い方をする。
「自慢の相棒さ」
と俺はミュウを撫でた。
よし!次はルーレトに修行を付けてもらい、加工技術能力の拡張を試みてみよう!!
こうして俺の一日は終了した。




