第三十三話 時は一刻と
ラロット・リエル・リドル視点
あれから一日経った。
今日が拠点に集まる日である。
「あちこちのキングバッタの巣に卵が大量にある。これどうすんの??」
リドルはそう言う。
「そうだな。小さな巣にはまだキングバッタがあまりいないから制圧できるが、大きな巣になると、キングバッタの出入りも多い」
とラロット。
「その大きな巣に限って大量の卵が産まれている。このままじゃ本気でやばいのでは?」
とリエル。
「あぁ、早く拠点に戻り現状の状況を説明するぞ」
事態は急ピッチで進んでいた。
周りを見れば、昨日までは数匹だったバッタが今日には数十匹にへと増えている。
どこか知らない場所で繁殖が進んでいたのだ。
まだチラホラといた魔物達も今ではすっかりといない。
赤月が昇る日に近いからと言う理由もあるが、バッタ達に食い荒らされた結果でもある。
ラロット組は走って拠点にへと戻っていた。
バッタの侵食のせいでルートは限られ、遠回りをする羽目にもなっている。
それに少し苛立ちも抱いていた。
すると、遠くから無数の羽音が聞こえる。
右からである。
すぐに、ラロット組は木陰へと入り息を潜める。
空が、埋め尽くされていた。
最初は、黒い雲が近づいてきたのかと思った。
だが、違う。
雲ではない。
長い後脚を折り畳み、鋭く尖った脚を宙に突き出しながら、何百という数が群れを成して飛んでいる。
ラロット達は息を呑んだ。
羽ばたくたび、空気が震えた。
――バサッ、バサバサバサッ。
無数の翅が生み出す音は、遠くから聞けば雷鳴のようであり、近づくにつれて地鳴りにも似た轟音へと変わっていく。
太陽が隠れた。
巨大な身体が幾重にも重なり、空を覆い尽くしていく。
地上に落ちた影は、まるで夜そのものだった。
そして、その暗闇が――ゆっくりと、こちらへ迫ってくる。
先頭には、一際目立つ3倍ほど大きな黒いキングバッタがいた。
二本足のバッタではない。
群れ全体が、ラロット組の真上を通る。
空が揺れた。
大地が震えた。
巨大なバッタの群れが、まるで黒い津波のように押し寄せてくる。
その光景を前にして、理解した。
あれは、ただの魔物の群れではない。
――災害だ。




