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第三十二話 卵

 ルーディア・レイン目線


 ルーディアとレインもキングバッタの行方を追い、女王バッタの場所を特定する係である。


「言っとくけどね、レイン。足引っ張ったら承知しないからね」


 ルーディアは前を見ながら、横で走っているレインに冷徹に言い放つ。


 レインはブルブルと震えながら、ルーディアの方を見る。


「う....うそ!!ねぇ、俺怖いよぉ!!俺を守ってよぉ!!」


 とレインは泣きべそをかいて、ルーディアに縋る。


 レインは、分かっていた。

 今の自分がどれだけ情けないのか、どれだけ無責任なのかを。

 しかし、怖いものは怖い。

 リドルとの戦いで掴んだものもあったが、根本的な精神の弱さはまだ残っていた。

 レインは心の中で、長に「怖いのは嫌だ。ごめん!!」て何度も謝っていた。


「鬱陶しい」


 と縋ったレインを振り解く。

 そして、レインをギロリと睨みつけた。


「言っとくけど、使えないと思ったら見捨てるからね。それが嫌なら怖がらずに、任務を遂行してね」


 ルーディアのキッパリとした言葉に、レインには第二の怖い存在が誕生した。


「怖いよぉおお!!ルーディアちゃーん!!」


 レインは泣きながら、前へと走った。


 ◇


 ルーディアとレインが拠点から離れた場所に差し掛かると、キングバッタの羽の音が聞こえる。

 聞いただけで不快な音だ。

 まるで、本能に不快な音というのがプログラミングされてるのでは?と思うほどだった。


「ヒッ!!」


 レインが羽音を聞いた瞬間、恐怖で思わず声が出る。


「伏せて!」


 と、ルーディアはレインの肩を下げさせ、木陰にへと隠れる。

 すると、四匹のキングバッタ達が木の上をブーンと羽音をたてながら、遮る。

 それをレインとルーディアは、目線を上げながら見ていた。


「しめた。あのキングバッタ達に付いていくよ」


 ルーディアが口角をあげた。

 そして、ルーディアは、バッタを追いかけるため、走り出す。


「ちょ....待って!!一人にしないでぇ」


 と足がすくみ転びながらも、レインはルーディアについて行った。


 バッタを追いかけ数分、バッタ達は止まり、中型の魔物の猿の親子を狩ろうとしていた。


「う....うそだろ」


 レインは、草むらに隠れながら小声で呟く。


 親子の猿は、バッタ達と戦っても勝てないと踏んだのか、子供を抱えバッタ達に背中を向けた。

 だが無情にも、親の猿は背中がバッタの鋭い牙により抉られ、腕を引きちぎられ絶命した。

 子供の猿の鳴き声とバッタの咀嚼音だけが辺りに響く。


 ルーディアは咄嗟に自分の口とレインの口を手で押さえる。

 あまりの酷い状況におもわず声を出してしまうかもと思ったからだ。


 猿の親の体重で身動きを取れなくなった子供の猿は、なすすべなく首を一突きで死んだ。


 子供の鳴き声がなくなった今、肉を引きちぎり噛む音だけが辺りを包む。

 非常に不快で辛い状況である。


 猿の親子を食っていたバッタ達が急に食べるのをやめ、周りを見渡す。

 口周辺には赤い血がついている顔、ギョロリとした目で見渡す。


 ルーディアとレインは、バレたのか!?と思いつつ、顔を地面に伏せる。

 息をすれば、位置がバレてしまうのではないか?と息を上手くすることすらできない。

 静かな空間の中で、心臓の音だけが異様にうるさい。

 早くこの瞬間が無事に過ぎ去れと心の底から願った。

 その願いが叶ったのか、バッタ達は何事もなかったかのように、猿の食いさしを持ち運び飛んで行った。


 レインは、安堵と恐怖で声が出せなかった。

 顔が真っ青になっていた。


 ルーディアは、自分の気持ちを落ち着かせる為に深く呼吸をする。

 自分の顔を平手打ちし、気持ちを無理矢理変える。


「レイン立てる?アイツらを追うわよ!」


 怖さを押しつぶす為、必要以上に声を出した。

 大きな声を出すことすら危険な状況で、その判断を鈍らせる程、恐怖が体を蝕んでいた。

 あんなのに捕まれば、あれほど酷い殺し方をされると考えると動きがぎ固まる。


「ね!レイン聞いてる??」


 レインは、すでに恐怖で腰を抜かし体が動かなくなっていた。


 すぐ動くようになるだろうと考えたルーディアは、レインを背負いバッタを追いかける。

 バッタ達がどこに向かっているかは、不明だが今のルーディア達にはそれをするしかなかった。


 ◆


 キングバッタ達は、壁の穴に入っていく。

 そう思うと数匹のバッタが出ていく。

 また狩にでも出かけたのであろうか?

 いずれにせよ、バッタの住居っぽいところである。


 あそこに女王バッタがいるのか?

 にしては、バッタの兵などが少ない。

 だけど、今の私達ならあそこに突撃する力などない。

 今は、機会を伺うしか....とルーディアは考えていた。


「レイン!!レイン!!意識ある?」


 ルーディアは、レインの頬をペチペチと叩いた。


「ああ、でも一瞬流れる川を見たような....」


「それ見ちゃダメなやつ!!!」


 と、またルーディアは心の中でため息をしながら、ペチペチと頬を叩いた。


 そのようなやり取りをしていると、バッタ達が又もや移動をし始めた。

 もう、穴からはバッタの音が聞こえない。

 もしかすると、全員離れたのではないだろうか?


「全員離れた....?今がチャンス....でも、また?なぜ?」


 と頭の中でクルクルと疑問が回る。


「全員出たのか?なら今、巣?みたいなところに突撃するべきでは?」


「そうね。バッタ達を追う体力は、今はあまり残ってないから巣を覗きましょう。何かあるかも」


 とルーディアとレインは、巣に入ると、目を疑うものがあった。


 それは卵だ。


「な....なんで?」


 ルーディアは固唾を飲む。


「ルンの話だと、女王しか産めなくて、その女王は今どこかを彷徨っていて産めてないんじゃないのか?それに、その女王は決まった場所にしか産まないって」


 レインも動揺していた。


「分かっている!!少し黙ってて」


 ルーディアは、考えてみるが考えても仕方ないと思う。


「今は考えてても仕方ない。この卵も孵化するものだから、壊しましょ」


 そうして、ルーディアとレインは、卵を余すことなく壊した。


 ◇


 ラロット・リエル・リドル視点


「おいおい、どうなってんだよ!卵は一定の場所にしか産まないんじゃないのか?」


 リエルは、岩に腰をおろし言った。


「分からない。何が起きてるんだ?バッタの卵が産んであるなんて....」


 ラロットが頭を抱える。


「俺も分かんないや!これは一回拠点で、皆んなの意見を聞くしかねぇな」


 ラロット組は、バッタを追いかけ、休んでいる隙を付き奇襲を仕掛けたのだが、成功した。しかし、そこにはキングバッタの卵があり、頭を悩ませていたのだ。

 色々と憶測が飛んでくるが、どれが正解なのか分からない以上、皆と意見を共有し擦り合わせるしかない。

 そう考えたラロット組は、引き上げることを決断した。


「皆引き上げるぞ」


「とは言っても、集まるの明日だよ?」


「あ...そうだったけ?」


「ラロット....お前が決めたことだろ。覚えておけ」


ラロットは軽く失笑をした。

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