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第三十一話 四方八方...?

 ナギ、フィオナ視点。


 ナギとフィオナに課せられた任務はこうだ。

 バッタを観察し、その行方から女王バッタの場所を見つける。


 卵壊しに行った時に、一斉に動き出したバッタ。

 その原因は、女王バッタにひかれたのだろう、と考えた。

 だから、バッタは女王の場所が分かるのだと踏んだ。

 ならば、バッタを尾行することが得策である。


 志願でこの作戦に入った人もいたが、その人たちは女王バッタが卵を産んでいた場所で、監視させている。

 女王バッタがいつ来ても良いように。

 ナギとフィオナは、あくまで早期発見を目的とした部隊である。


 ナギとフィオナは、できるだけ身が隠しやすく、高い場所にへと足を運んだ。

 足を運んでる最中にも、バッタが三匹、四匹と見つかる。

 そこら中歩けば、もっと見つかるだろう。

 それ程キングバッタの繁殖力は、常軌を逸するものだった。


「たくさんいますね....」


「そうだな。ぱっと見、二十匹ぐらいだろうか」


 ナギとフィオナは、草むらに隠れ、バッタの様子を伺っていた。


 キングバッタは、狩をしているのだろうか。

 空中と地を行き来していた。

 そして、中型の魔物を次々と狩っている。

 中型の魔物が中型の魔物を圧倒している姿、旺盛な狩。

 バッタの恐ろしさが垣間見えたのだ。


 だが、狩は、中々終わらない。

 それに痺れをきらしたフィオナが、


「もう遅い!!私が行って、懲らしめていきます!!」


「バカか。俺らがやる事は、バッタの行方を追うことだ!バレたら本末転倒だろ!」


 勿論、バッタ10匹いる場所に突っ込みでもしたら、命が危うくなるだろう。

 それ程、キングバッタは“個”ではなく“組織”としての能力が高い。


「うぅ〜〜〜」


 とフィオナはモゾモゾしている。

 脳筋やろうが....とナギは頭を悩ませた。


 すると、狩りを終えたバッタは上空を飛んだ。

 ナギとフィオナは、キングバッタの飛んでいく方向を注意深く見据えていた。

 しかし、キングバッタ達は一定方向に行くのではなく、四方八方にへと飛んだのだ。

 なぜなのだ?

 過剰に狩をして得た魔物は、女王に献上するのではないのか?

 ナギは、頭を悩ます。


「ナギ、なぜバッタ達は四方八方へと散っていくのでしょうか?」


 フィオナは、首を傾げる。


「フィオナもそれを疑問に思っていたのか。驚いた」


 ナギの言葉に、フィオナはプツンとなる。


「はぁ??どう言うことですか!!私がバカって言いたいのですか?そんなことぐらい分かります!!私バカじゃないです!!」


 ナギはポカーンとした顔で、フィオナを見つめる。

 なんですか!!と言いたげにフィオナはムッと見つめ返す。


 ナギは、いかんいかん!と首を振り、任務のことを考え直す。


「取り敢えず、俺らのすることはキングバッタの尾行だ。もしかすると、尾行をすれば何か良い手がかりでも掴めるかもしれん。四方八方にキングバッタが別れたから、二手に別れたい気持ちもあるが、相手はキングバッタだ。一緒に行動をしよう」


 ナギは、細い糸を魔力で作り出し、手の指に巻き付けていく。


「そうですね!!キングバッタをやっつけてしまいましょう!!」


 少しトンチンカンなフィオナの返答に、ナギは静かに返す。


「いや、俺らは戦わない。なにしろ、どこまでキングバッタが仲間との連携を取れるか分からないからな」


 その時、草が何かに掠れ、ガサガサと音がした。

 ナギは、すぐさま音のなった方へと視線を向けた。


 木々が影になっていて見づらい。

 しかし、ハッキリと見えたものがあった。

 それは、丸くジロリとしたキングバッタの目であった。


 バッタは、不気味な声をあげ、仲間を呼び寄せる。


 剣を抜こうとするフィオナを見る。


「バカか」


 ナギはフィオナを担ぎ、一目散に逃げた。


 まずい、まずい、まずい。

 見つかってしまった。

 気配も何一つ出してなかったぞ?それほど、静かに潜伏をしていた。

 なら、たまたま見つかったのか?

 それなら俺は相当ついていない!!

 と、心の中でナギは叫ぶ。


 いやな羽音が、後ろから聞こえる。

 何匹のバッタがいるかが分からない。

 いや、数えたくないのだ。


 ナギは必死に逃げ道を探す。


「あそこの中に入るぞ!!」


 ナギは、小さな穴が入り口の洞窟を指差す。


「え?ちょ!あの中にバッタ以外の魔物が居るかもしれませんよ!そうしたら、挟み撃ちになってしまいます!」


「これしか方法が見つからん。それに小さい穴だから、バッタは入ってこれない」


 肩に担いでいるフィオナを胸元まで持って行き、腕で抱えながら、穴へとスライディングを決める。

 穴は、滑り台のように斜め下へと行く経路になっていて、ナギとフィオナは滑り落ちていく。

 地面が平面になり、足を地面につき、一筋の光が差し込んでいる穴の方を見上げる。


 ガガガガ....キィイイイイイイ....!!


 バッタは、まるでデスゲームにでも参加している人間のような顔の形相で、無理矢理穴へと入ろうとする。

 穴の縁の石の部分が、バッタの体当たりにより、少しずつ割れていく。


「このままじゃ....!!」


「ああ、狂った野郎だ」


 ナギとフィオナは、洞窟の奥へと足を進める。


 洞窟の中は、外よりも湿気が高く、寒い。

 所々、石を打ち付ける水滴がポツンポツンと落ちている。

 ヘルシャースのツタが、洞窟の壁に沿って、グルリとはっている。

 小さな虫たちが、ナギとフィオナが通るたび、散らばって逃げていく。


 足元の悪い不気味な洞窟の奥に足を進めると、そこにはデカさが規格外の洞窟があった。

 緑が生い茂っており、魔物の鳥が旋回しながら飛んでいる。

 鳥の他にも、緑にくっつきながら移動する、猿みたいなのもいれば、ワニみたいなのが壁を這っていたりする。

 下などは、深い黒が邪魔をし、見えない。

 しかし天井には、ツタの所にできた明るく光る実が、辺りを照らしていた。


 もう一つの生態系が、洞窟の中にへと形成されているようだった。

 そのような規模がでかいものができた要因として、ヘルシャースという地で進化した生物が、太陽光、豊富な酸素を必要とせず、魔力を大きく欲していたことが考えられる。

 つまり、この状況は、ヘルシャースでしか見れない情景であった。


「何なんだ....ここは!!いや、今は考えてる暇はない。ここを渡るぞ」


 ナギは、ツタが這っている天井を指差し言った、

 そして、剛糸を魔力から生成し、手に持った。


「えぇ!?まさか、ナギだけでその糸で渡る気じゃないですよね!!」


「お前は筋肉あるから、猿みたいにぶら下がって移動できるだろう」


「はぁああああ??ちゃんと、私を見て下さい!!こんなに可愛くて、華奢なんですよ!!私は歴とした乙女なんです!!」


 バッタの羽の音が後ろから聞こえてくる。

 どうやら、あの小さな穴をこじ開け、入ってきたようだ。

 羽の音は洞窟に響き渡り反響する。


 ナギとフィオナが渡ろうとしている天井の下は、どこまで続いているのか分からない暗い闇。

 そして、大型動物もチラホラと緑にくっついていることが分かる。

 周りをチラチラと見ていることから、獲物を探しているのだろう。

 そして、旋回を繰り返す鳥の魔物。

 渡ろうとしている途中に、襲ってくることは明白であった。

 だが、引き返せない。

 後ろにはキングバッタがいる。


 時間がないと悟ったナギは、フィオナの手を掴んだ。


「振り落とされるなよ」


「え?え?」


 ナギは剛糸を天井にくっつけ、飛んだ。


 ナギの目に映ったのは、真下から見る緑だった。

 太陽の光も届かぬ場所で、立派に育った植物たち。

 凛々しく育っており、どんな環境でも、しがみつくと言わんばかりであった。


「キィイイイイイイ」


 バッタ達の不気味な鳴き声がすぐ後ろから聞こえる。

 止まったら、キングバッタがすぐさま襲ってくるだろう。

 止まれない。


 ヒューー


 冷たい風を切り裂きながら進んでいるため、その音が耳にこだまする。


 バタ....バタ....バタ....


 鳥の羽音がこちらへと近付いてくることが分かった。


「俺は前を向いてなければいけない。だから、頼んだぞ。フィオナ」


 フィオナはそれを聞くと、フフッと少し笑い言った。


「任してください!」


 フィオナは長剣を抜くと、腕に全神経を注ぎ込み、鳥が間合いに入る瞬間を注視する。


 バタ


 入った!とフィオナは思った瞬間、長剣をスパンと空を切り裂き、鳥の首を切り落とした、


「ナイスだフィオナ」


「なんてこともないですよ」


 ナギとフィオナは軽く会話を挟んだ。


 ナギは糸を次々と次の地点へ結びつけていく。


 すると、小さな穴が見えた。

 ここから出れる出口だ。

 ナギは出口に向かって弾力糸を飛ばし、一気に直進した。

 そして、出口に入ることに成功した。


「なんとか切り抜けましたね!」


「ああ、でもバッタがまた出口を壊して入ってくる。早くここから離れよう」


 ◇


 ナギとフィオナは洞窟を出て、キングバッタの目につかないであろう場所で、岩に背を預け休憩をしていた。


「あぁ....もう!服汚れてる!!」


 とフィオナはムカムカしながら、上着を脱ぎ手で払う。


「ったく....あれから逃げ切り、気にすることがそれか?」


「どういうことですか?逃げ切ったので終わったことですよ??」


 ナギは、苦笑し、大きく深呼吸をする。


「これから、どうしますか?キングバッタを追いかけますか?」


「そうするつもりだ。だが、キングバッタが四方八方に散る姿は、未だに意味が分からない。明日、拠点に皆が集まって、集めた情報を共有するだろう?それまでは、控え目に捜索しよう」


「そうですね!!それが良いです!!」


 フィオナは上着を着た。


 こうして、ナギとフィオナはまた歩みだした。

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