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第二十八話 思わぬ事態

 ラロットが先頭をきり、女王バッタがいると言う場所まで、案内してくれた。

 そこの場所に向かっている途中、バッタ共が、空を飛び回り、何か探しているようだった。

 赤月の2日前に大量の卵を産み出すと言っても、産む為の準備に必要なキングバッタ達は産んでいるのか。


「アイツら何してんだ?」


「おそらく、女王バッタの食料を探しているのだと思います」


 そして、ラロットが続ける。


「まだバッタが肉食系に変化したか雑食系に変化したかどうかは、分かりませんが、自分達が見つかると、戦いになるかもしれません。見つからない様に行きましょう」


 ラロットがそう言うと、木々の隙間の方へと入っていく。

 そうか、俺はてっきり肉食系に変化したと思ったが、雑食に変化した可能性も大いにあるのか。

 女王バッタの産卵にバッタ達は、血眼になって、食料を探している。

 雑食に変化した方が、食のバラエティが増え、生存にも有利な方向に傾く可能性がある。

 植物も魔物も荒らされたら、食物連鎖が一気に狂う。

 それだけは、避けたい。


 見つからない為に狭い所を通っているが、これでは、陣形が上手く取れないが、仕方ない。

 戦いが起きなければ、陣形もクソもないから、戦いから避けるのが得策である。

 それに、俺らなら、十分な隙間など必要ないからな。

 いや俺らと言うか俺以外と言うべきか。


 道中に魔物が居た。

 俺達は、作戦通り、連携した動きで、魔物を一秒も満たないスピードで倒す。

 魔物との戦いが長引いたら、バッタに見つかるかもしれない。

 そうなると非常に面倒くさい事が起きるので、魔物倒しに時間をかけてはならない。

 だが、思ったよりも魔物がウジャウジャいる。

 本当に鬱陶しい。


 隣にいるレインは、震えていた。

 そこら辺にいる魔物に恐れているのではなく、魔物を要因にバッタに見つかりそうで恐れているのだろう。

 やはり、この地に生きてきた者、バッタの恐怖が分かっているのだろう。

 俺は、まだバッタの怖さがよく分かっていない。

 ボヤッとした感じだ。

 なんとなく、この作戦で、バッタを封じ込めれるだろうとそう感じてた。


 ◇


 なんとか、魔物の処理を失敗せず、女王バッタがいるであろう場所に近いエリアに着いた。

 周りには、バッタが同じ上空を何回も旋回しており、女王バッタがいる場所に近付いた事は、誰の目から見ても明白であった。


 後少しで、女王バッタの元へ行けるだろう。

 だが、バッタ兵共が多くて近付けない。

 今見ただけでも、三十匹ぐらいいるだろう。

 だから、こうして木の物陰に隠れながら、様子を見ている。

 どう詰めればいいのだろうか。


 そういえば、ラロットのお父さんは、どうしていたのだろうか?

 女王バッタと女王バッタが生まれる卵以外、殆ど壊してたとか言ってたもんな。

 それを参考にすればいいだろう。


 ラロットにラロットのお父さんは、どうやって女王バッタの元へ行けてたのか、と聞いてみた。


「自分の親父は、魔物に一定の時間、気付かれないと言うユニークスキルを所持していました。

 そのスキルは、触れた対象にも触れている時間だけ、付与出来ると言うものでした。

 なので、親父と俺は、最短距離で進めたんですが。

 それに、一匹、二匹しか居ない時に、女王バッタの討伐に行っていたので....」


 そのユニークスキル、ヘルシャースにうってつけのスキルじゃないか。

 そのスキル欲しいなぁ....ってそんな事、考えている暇はない!!

 とにかく、ラロットのお父さんのやり方は、全く参考にならないと言う事が分かった。

 あぁ、どうしよう。


「地形に隠れて進んでいくのが良いんじゃないですか?」


 フィオナがそう言う。


 フィオナなら、突っ込みましょう!とか脳筋発言するかと思ったが、拍子抜けである。

 うむ、その案が一番現実的だろう。

 だが、その提案の元、物事を進めるとなると。


「ここの地形をよく知っている人はいるか?」


 と俺は聞いてみる。


 地形の隠れながらと言うやり方だと、女王バッタに近付く為に、ウジャウジャといるバッタを目を盗んで、進む必要がある。

 そうなると、ここの地形をよく知っている人が必要だろう。


 しかし、俺の質問に答える人はいない。

 ラロットは?と聞きたくなる人もいるだろうが、“最短距離”で進んでいた為、あまりよく知らないのだろう。

 困ったものだが、考えてみれば、ラロットのお父さんがいる以上、ここの地形をよく知る必要がなかったもんなぁ。

 それにしても、万が一に備えて、ここら辺の地形を把握しておいてくれ!と言うのは、あまりに他責思考であろう。

 俺も長の座に就任してから、村の発展、役割をあてる、今後の方針を立てるなどなど、すげぇ忙しくて、そこまで手に回らなかった。

 今となっては、後の祭りだが、もっと充填的な準備をしておけばなぁ。


 そう思っていると、大勢のバッタがまるで、何かに惹きつけられたかのように、その場を後にする。


「バッタ達が一斉に飛んで行きました....!!」


「何が起きている?」


「考える前に、今がチャンスだから、正面突破しましょう」


 リエルが、ドヨメキを収め、方針を提案する。


 どこかへ行ったバッタも戻りそうもない。

 リエルの提案が一番いいだろう。

 迷っている時間などない。


「お前ら、正面突破だ!!最短距離で進むぞ!ラロット案内を頼む」


「はい!皆んな!!俺に続いてこい!」


 ラロットが木陰から抜け出し、一気に最短距離への道を辿る。


 それに、すぐ気付いたバッタは、大きな声を出した。

 仲間がワラワラ呼び寄せる。

 だが、それも少量の仲間だろ?

 賭けではあったが、どこかへ行ったバッタ達には、大きな声など届かないのだろう。

 お前らだけなら、俺ら八人で余裕だ。


「白く凍てつく精霊よ、時の流れさえも拒め!絶零氷獄グラシア・ネヴァ」


 と後方にいるリエルは、少し端折った詠唱を唱える。

 すると、冷えた空気がバッタの足にまとわりつき、次第に氷へと変化しながら、バッタの足を拘束する。


 後方にいるルーディアが弓を構え、バッタを狙おうとする。

 だが、上からバッタが飛んできており、そのバッタがルーディア目掛け、攻撃を止めようと、一直線に向かってくる。


 俺はレインを連れ、向かってくるバッタの行手を阻もうとする。


「ミュウ!!」


 俺は、首に巻き付いていたミュウに合図を送り、ミュウは自分の弾力を活かし、俺の踏み台となった。

 俺は、その踏み台に乗り、上空にいるバッタとの距離を一気に詰めた。


 俺は、剣を握り込み、バッタの胴体目掛け、狙いを定める。

 俺ならやれる!!

 俺は一気に剣を振り翳した。

 力、振る方向、俺にできる剣技の範囲で、何もかも完璧に出来た。

 だが、その剣は、「お前には、バッタの身体を貫く事は、無理だ」と言いたげに、擦り傷すら負えず、弾かれた。


「え?」


 俺は唖然とした。

 すぐに俺は、バッタにカウンターを入れられそうになった。

 バッタも前足が、俺の首筋を確かに狙った。

 だが、ミュウの炎吹きにより、攻撃は、当たらなかった。


 一方レインも俺と一緒にミュウで上空へと飛ばされていた。

 レインは、バッタとの接触が怖く、目を瞑ったまま剣を振ると、バッタはスパっと頭が切れ、死んでいった。

 そのまま、俺が斬ろうとしていたバッタも倒してくれた。


「ありがとう!!レイン、ミュウさん、ユレン様!!」


 ルーディアは、そう叫び、重厚な弓に矢を三本構え、引いた。

 矢は、レーダーのセンサーでも付いてんのか?とツッコミたくなるように、異様に曲がりながら、バッタの頭へと吸い付き、刺さる。

 その攻撃により、足を凍らされたバッタのもがきは、鈍くなった。


 前衛にいるラロットが地面を強く踏み付け、空を飛んだ。


「灼炎斬しゃくえんざん」


 ラロットは、そう叫び、剣を横に一振り。

 炎がバッタ達を切り裂く。


 そして、フィオナとリドルが倒しきれなかったバッタを、楽々と倒した。


 気付けば、周りのバッタは居なくなっており、それはバッタを倒し切った事を意味していた。

 だが、少ないバッタ達、相手でもここまでの時間と労力を要するとは、思わなかった。

 それは、ナギも苦戦する筈だ。

 それが、大勢相手になると、手の打ちようがない。

 それに、ラロットからの話だと、繁殖力が強く、卵から孵るのも早いらしい。

 なんと2日あれば、孵るのらしいのだ。

 良かった、ここで手が打てて。

 下手をすれば、千匹とかがこの熱帯を覆い尽くす事になっていただろう。


 それにしても、ナギが言ってた二本足?のバッタとやらにまだ出会ってない。

 ナギ曰く、そこら辺のキングバッタよりも比べ物にならないらしいのだ。

 そんな奴、女王バッタの周りの近くに居るとばかり思っていたが....

 そうでもないらしい。


 俺は、皆んなに労いの言葉を送ると、走りながら女王バッタの場所へと急いだ。


 ◆


「女王バッタがいない....」


 ラロットは、そう入り口のデカい、洞窟内で呟いた。


 俺は、聞き間違いなんじゃないか?と思い、ラロットに聞き直した。


「それに、次世代の女王バッタの卵すら....見つからない」


 ラロットの声は、焦りと恐怖が入り混ざっているようだった。


 俺は、自分の目で確かめる。

 女王バッタがいない。


 は?なんで?本当にこの場所であってるのか?

 女王バッタが生まれる卵の特徴は、本当にあってるのか?

 本当に生まれた場所に又戻ってきて、律儀にそこに生むのか?


 俺は、色々浮かびあがった考えをラロットにぶつける。

 だが、返ってくる言葉は、同じだった。


「はい。間違いありません」


 冷や汗と身体の震えが止まらない。

 なぁ?女王バッタは?どこに居るんだ?

 このまま好き放題させていたら、あのバッタ達は、何倍、何十倍にも増えて、俺らを....この土地を襲うだろ。

 いや、その被害は、ヘルシャース全体に及ぶかもしれない。

 どうするんだ。

 どうすればいいんだ。

 俺は、回らない頭を精一杯回してると、リエルが口を開く。


「何が何だか分かりませんが、女王バッタはいないし、次の世代の卵もありません。それは、突然異変による、バッタ達の何らかの変化によるものじゃないでしょうか?少なくともここに長居は出来ません。引き返しましょう」


「私もそれに同意です。いつあの大量のバッタ共が戻ってくるか分かりません。一旦撤退して、引き返すのが良いと思います」


と同意をするルーディア。


 あぁ、その通りだ。

 実にその通りである。

 焦りも何も感じられない冷静で合理的な返答だ。

 いや、何、考えてんだ、俺は。

 焦りがないのが、まるで悪いと言いたげな思考を出しやがって。

 俺も落ち着くんだ。

 俺は、深く深呼吸をする


「そうするか。一回戻って、状況の分析と作戦を練り直す。一回この場を引こう」


 そうして俺らは、村へと帰還した。

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