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第二十四話 村の課題

 ラロットに、「対処しなければ、村が崩壊する」と言われたので、要因を聞いてみれば、どうやら『キングバッタ』と言う魔物が、関係しているらしい。

 赤月も相当魔物がウジャウジャと湧くらしいのだが、ほとぼりが冷めるまで、大人しくしておけば、ダメージはないのらしいのだ。

 元々、この村は、他の周辺よりも魔物が近付かないらしいからでもある。

 理由は知らない。


 本題に戻すと、キングバッタと言う魔物は、大量増殖をし、草木を全て食い荒らす害虫と言った所らしい。

 それを放置してしまうと、草木を荒らす→その草木の栄養でまた増殖をする→草木を荒らすと言う雪だるま方式で、爆発的に、増殖と草木の破壊繰り返し行うらしいのだ。

 それにより、草食型動物は、一気に減少し、それに釣られ、肉食型動物も死滅していく。

 そう言った食物連鎖の破壊は、俺達にも直結してくると言う事だ。

 だから、手を打たねばなるまいと言うらしい。


 それに一番厄介なのは、俺がいた前世のバッタとは違う進化を遂げたことにある。

 それは『社会性』を築いた事だ。

 アリと同じような進化を遂げ、それ故に同一された連携で、ここまでの所業を可能とした。


 だが、社会性を築いた虫には、弱点がある。

 そう、『女王』である。

 女王が居なくなれば、指揮系統が崩壊し、増殖も不可能になるので、女王を討伐すれば、危機は回避できるとのことだ。


 だが、ここまで長々と話して悪いが、卵を生む場所は、大体特定できるらしいのだが、問題は、卵を生む時まで、女王バッタは姿を見せないと言う事だ。

 女王バッタにより、初めて卵が生まれるのは、赤月の“2日前”、そこから赤月に合わせ、卵を生む。

 故に、卵を産卵するまで、女王バッタの位置など分からない。

 赤月が登る日から一週間前の俺らには、何も出来ない。

 なんと言うことか....

 ま、その分、俺達は準備できると言う事だ。

 良しとしてみるか。


 話は変わるが、今日のやりたかった業務は終了。

 気分転換に発展していってる村の見回りでもしようかなぁと思う。


 ミュウも連れて見回ろうかなと思って、ミュウがいる場所(俺の仕事用机)を見てみると、ミュウはぐっすりと熟睡中であった。

 スライムだから、べちゃっと潰れた状態になっている。

 だけど、ちょっと触ってみると、弾力がある。


「可愛いな」


 と思いつつ、気持ちよく寝ているようだから、起こさないように、静かに部屋を出た。


 ◇


 あまり説明をしていなかったが、俺の執務室がある建物――『中枢議事堂』は、この村の中で一番デカい。

 例えるなら国会議事堂の二周りぐらい小さく、2階建てである。

 俺の“加工技術能力”と“豊富な物資”、それに“屈強なリザードマン”が入れば、三日間で出来た。

 ま、あともう少しの技術と土地があれば、もっとデカいのを作れるのだが、ここの丘は、村から町にへとギリギリ変化、出来るかどうかの広さだからね。

 現実は厳しそうだ。


 他にも中枢議事堂には、会議室、俺の寝床、調理室、休憩室、作業室、資料室、医療室、研究室なども完備されている。

 ありとあらゆる事は、ここで議論し、決定するのだ。

 かと言っても、道路の整備の手配や技術不足などなどで、『中枢議事堂』は、不完全な整備になっている。

 今は、やる事がありすぎて頭がパンクしそうだ。

 分かっては居たけど、皆を引き連れてトップになるのは、しんどいよぉおおお!


 俺は、試作用に石塁を引いた道路を歩いていると


「「あ!ユレン様お疲れ様です!」」


 と皆が俺とすれ違うと労いをくれる。

 

 あぁ、嬉しい!

 これが俺が頑張れる理由である。

 割と前世してた仕事よりも長の仕事は、ブラックで、責任も伴うから神経をすり減らしている。

 だから、労いの言葉を掛けてくれるだけで、救われるのだ!!


 よし!!気合い入れるぞ!!


 国造りをする為に、根本的に必要になってくる事は、衣食住。


 食は、今のところは、なんとかなっている。

 ラロットを仮の食の安全を保つ為の大臣として就任させ、ラロットの元で、食を運ばせている。


 食は、魔物の肉、植物などを主軸にしている。

 食物は少しクセがあるが、味付けなどをしっかりしていれば、美味しい食べ物となる。

 アスナが料理をして、俺達に出してくれるのだが、これが本当に美味しいんだ。

 異文化の食事で、日本では食べられなかった変わった食べ物を食べれる。

 毎日、新鮮な気分で食べれると言うわけだ。


 だが、困った事に、ここは熱帯雨林。

 言いたい事は、分かるだろ?

 食事の保存が本当にしにくい!!

 湿気が大量にあるから、ただ放置していれば、5時間も経てば、その食べ物は、食えないものとなっている。

 前、俺も少しだけ放置していた食べ物を、チョロっと食べてみると、腹を壊してダウンしたのだ。

 お気に入りの食べ物は、ミュウに詰め込むなど対策をしているが、厳しい所がある。

 その他にも色々、保存する方法があるっちゃあるが、中々に非効率ではある。

 何とか対策をせねば....!


 住は、問題ない!って言いたい所だが、問題は、リザードマンである。

 ここはヴァンパイアの村だから、ヴァンパイア達の住はあるのだが、リザードマンの住が満足にないのである。

 早急に作ってはいるが、それでも枯渇している状況。

 ヴァンパイアの人達の家に居候させたり、大きな建物を寝床にし、そこで暮らしてもらったりと、色々しているが、それだとリザードマンにとってもヴァンパイア達にとっても不満が溜まるだけであろう。

 何かしら対策を打たねばならない。

 リザードマン達は、里帰りはたまにするようだが、夜になる度に、村に帰ってもらう!など出来るはずないしね。


 衣服は、なんとかなった。

 そもそも、ここに居た魔族達のヴァンパイアとリザードマンは、裸族ではない。

 だから、色んな衣服が用意されており、それを作る為の技術者もいる。

 しかし、森の中にいる魔族は、裸族っていうイメージがあったが、ここまで技術が発展しているものなのか。

 不思議なものである。

 衣服の素材は、ここが熱帯雨林と言うのもあり、色んな植物が生い茂っており、その中で繊維がとても取れる植物を刈り取り、作っているらしい。

 この土地は、資源だけは、とんでもない量があるわけだ。

 後は機械などを扱える技術があれば、大量生産は、容易であろう。


 ここの土地の文化でもオシャレという概念があるらしく、特に村の女性達が、着飾っている所をよく見る。

 そのオシャレのベクトルも倫理的にセーフな範囲の素肌晒しだったり、羽織を体に巻き付けたりと色々である。

 正直に言うと、美しいと思う。

 だが、ここはこの村のトップである俺は、威厳を示す為に、気にしないフリをしなければならない!


「あら?ユレン様、あちらの女性に目をキラキラさせ、見ているのは何故ですか?」


「ヒッ!!」


 俺は、聞き覚えのある声に、背筋がビクッとする。


 あぁ、この声は――アスナだ!


 案の定、後ろを見てみれば、ニコっと笑っているアスナがいる。

 だが、瞳の奥には、何か冷たく怒りがこもっているようだった。


「アハハ....なんで、ここにアスナが?」


 俺は震えた声で、アスナに問う。

 アスナは、俺の事をじっと見ると、ため息をついて話した。


「ユレン様がインフラの整備の計画を立てる為に、視察してくれ!と仰ったので、ユレン様の秘書である私が見に行った帰りですよ」


 そうだった。

 石塁を引いた道路を引くと言っても、ただ引いては、入り組んだ使いにくい道路へとなるだけだ。

 その為、計画を組んで、実行する必要がある為、アスナに視察を行わせたんだ。

 色んな業務がありすぎて、頭からすっぽり抜けていた。


「あ、あそうだったな。それで、どうだった?」


「それは、この資料に問題点をまとめてみました」


 そう言うと、アスナが腕に抱え込んでいた紙を俺に渡した。


 俺は、軽く目を通す。


 やはり、道路を作る上で一番の難敵は水であった。

 水を沢山含んでいる地盤の上に道路を作ってしまえば、道路は歪み出したりする。

 それ故に、排水機構を作らなければ、道路作りなどお話にならないであろう。


 道路作りをもっと難航させているのが、この土地である。

 熱帯雨林は、急激に雨が降り出す現象がある。

 それを、前世では“スコール”と言われている。

 その、現象のせいで、地面がたちまち泥へと変化し、軟化した地盤になるのだ。

 テルテル坊主でも作って、雨を降らないよう願うなんて事は、通用しないからね。

 悩ましい問題だ。


 まだ、この土地の特色で、道路作りが難航している理由がある。

 腐植土である。

 植物が生い茂っているこの土地では、葉っぱなどは枯れ落ちると、分解される。

 その過程が繰り返される事により、腐植土は、沢山出来るのだ。

 これまでは、学生の時に習ったと思うが、この土は、道路の土俵とするには、柔らかすぎるのだ。

 腐植土をガッチガチに押し潰し、固めるか、取り除き、他の土へ埋め変えるか。

 悩ましい所である。


「ユレン様、ここで考えるよりは、執務室で考えた方がいいのでは?」


 とアスナに言われたので、それはそうだなと思い、資料をアスナに渡した。


「アスナは、これから中枢議事堂に行く気だろ?この資料を俺の仕事用机に置いといてくれないか?」


「はい、分かりました!ユレン様は、これからどちらへ?」


「俺は、これから村を見回ろうかなと思ってくるんだ」


「そうでありましたか。それでは私は、ここで失礼します」


「いつもありがとうね」


 と言い、俺が別れようとした瞬間、何かを思い出したかのように、アスナが足を止め、俺を呼び止める。


「それと、女の子に目を奪われるのも程々にしてくださいね」


 と満遍な笑顔を見せ、アスナが深く静かな声で言った。


 ば、、、バレてた??

 アスナ以外にはバレてないよな??

 このままでは、トップとしての威厳がなくなるどころか、イヤらしい人としての烙印を押されてしまう....

 それだけは避けなければならない!!

 気をつけなければ。


 ◆


 俺は、村を見回り墓地へと入った。

 リザードマンとヴァンパイア達の墓が置いてある。

 前世のような、デザインの墓を作ったのだが、皆にはどんな印象を抱いているのだろうか。

 皆は、良い!と言ってくれるが、お世辞だったりとかするのだろうか。

 

 そう考えながら、墓地の周りを見ると、そこにはリドルが悲しそうに佇んでいた。

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