↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/42

第二十三話 時期外れ

第二部開始です!!

よろしくお願いします。

 俺は、今ユレン様の命令の元、村から少し離れた場所で見回りをしている。

 だが、夜だから周辺が暗く、見渡しが悪い。

 魔法の炎で辺りを照らしながら、足を進めている。


「雰囲気あるよねー!こうなったら、魔物よりも幽霊的なモノの方が怖いかも!!」


 そう冗談混じりに笑いながら言うのは、ヴァンパイアの女子、イザベラが言う。

 華奢な体躯に赤と黒が混じるショートヘアである。


「あぁ、そうだな」


 と冗談に笑いながら答えるのは、リザードマンの男子、ドンである。

 黒い髪に、ヴァンパイアと比べれば、屈強な体の持ち主だ。

 何しろ手に生えている鋭い爪、これが一番怖い。

 俺がヤスリで、鋭い部分を削ってやりたいぐらいだ。


 こいつらが軽い口を叩けるのは、赤月が近いからである。

 どう言うことかと言うと、赤月の日に一気にこの場所にへと魔力が集まる。

 そこから、魔力は次の赤月に向け、徐々に下がっていく。

 つまり、次の赤月に近づくにつれ、魔力量が減り、魔物の数、強さも減っていく訳だ。


 自己紹介遅れたが、俺の名前は、ルイス。

 自分で言うのも変だし照れ臭いが、真面目さと正義感だけは、人一倍あるつもりだ。

 だから、イザベラとドンの任務に必要ない話も俺が止めるとする。


「おい、お前らそんなくだらない話をしてないで、任務に集中しろ!ユレン様に頂いた大切な任務だぞ!」


「それは分かってるけど....ルイスが一番不純な気持ちで任務を行なっているんじゃないの??」


「そうだな、もうデレッデレだったもんな!!」


 とイザベラとドンは、ケラケラと笑い合う。


 こいつらが、言ってる事は、この二人と同じく、ユレン様の部屋に呼ばれ、この任務の命を受けた時のことである。

 ユレン様に任務内容を聞き終え、立ち去ろうとすると、ユレン様が俺に話を振ってきたのである。

 どうやら、俺が子供でありながらも、リザードマンとの戦いに志願し、参加していた事が、ユレン様の耳に入ってたそうだ。


 そして、ある質問を受ける。

「ルイスは、憧れの人とか居るのか?今回も志願方式で、人を集めたのだが、君が真っ先に志願してきた」

 と言われた。


 その憧れの人が、同部屋に居て、気恥ずかしく、言うのかどうか迷った。

 だが、ユレン様の質問なので、答えなくては!と思い、決心をして言った。


「フィオナ様です!!フィオナ様に戦場で助けられて以来、僕も仲間を守れるような強い存在になりたいと強く決心しました!」


 と、緊張のあまり余分な声量で答えてしまった。

 顔も炎に炙られてるんじゃないか?と思うぐらい熱く、真っ赤だっただろう。


 リザードマンとの戦いに出たのは、俺がこの村の役に立ちたいと思ったからだ。

 その戦いで、俺の事を手に傷を負ってまで、助けてくれたフィオナ様を見て、素直にかっこいいと思ってしまった。

 だから憧れた。


 そんなフィオナ様に習い、もっと村の為に何かをしたいと思い、この任務に志願したのだ。


「おいおい!そこは一人の名前だけ出しちゃダメだろ!!」


「そうだよ!長の名前も言わないと、失礼だよ!!」


 ドンとイザベラに慌てた様子で小言に突っ込まれた。

 俺も「あ...」と思うのと同時に脳がパンクしてしまったのを思い出す。

 だが、そんな中でもユレン様の高らかな笑い声で、「俺はそんな絶対王政などやるつもりはないよ!」と言っていた事と、フィオナ様の笑顔だけは、未だに脳に焼き付いている。


 その事を思い出し、イザベラとドンに頬を突かれながら、また脳がショートしそうになってしまった。


 そんな不純な気持ちを抱えながら、前へと足を進めた。


 ◇


 見回りも中盤に差し掛かっただろうか。

 三匹、四匹の中型の魔物が襲いかかってきたくらいで、難なく事を進めていた。


 赤月になれば、三匹、四匹の魔物が、五十匹の大型魔物に変形するって言うんだ。

 本当に狂っている。

 が、赤月に近付くにつれ、魔物達は、殺し合い、数を減らし、種を増やす為に身を隠す。

 結果、ここまで減ると言う訳だ。

 殺伐とした雰囲気の温度差で、風邪をひいてしまいそうだ。


 だが、本当にここの雰囲気は、趣味が悪い。

 風による葉が揺れ、重なり合う事で、俺らを嘲笑っているような、音を生み出す。

 まるで、俺らが何か不吉な出来事が起きると言いたげのようだ。


「あ、あの足、魔物じゃない?」


 と、イザベラが鋭い声で言い放つ。

 剣先を顔の前へと持っていき、戦う姿勢にする。


 俺は、先の方をよく見てみると、木の枝から少し、緑色の節足型の魔物の足が見える。

 これは、バッタか?


「いや、待て!足が異様にデカくないか?」


 ドンが震えた声で叫ぶ。


 どうやら、俺とドンの考えは同じく、バッタだと思っている。


 この時期にいるのは、ミドルバッタと言う小型のバッタぐらいである。

 だが、あの足は、中型の魔物より一回り大きかった。

 おかしい、ミドルバッタがあそこまでデカくなる筈がない。


 もしかして、あれは――キングバッタか?

 しかし、この時期にいるバッタではない筈だ。

 何が起きている?


 その緑色の足は、震えながら、前へと運ばれていき、木から姿を現した。


 黒い触覚に、焦点がどこにあるか分からない黒い瞳。

 頭と同等な細さの身体の部分から伸びる、不釣り合いな後ろ足が折りたたまれている。

 所々に細い線が模様になっている矢が体に刺さっていた。

 そこから出血しているのか、血のような赤い液体が、顔、腹、羽などに付着している。


 やはりバッタである。

 見た事のない、矢の模様が、刺さっているのは何故だ?


 だが、バッタは、草食であり、肉を食べない。

 故に、俺らにとって危険性はない筈だ。


 そう考えてるとバッタは、口を小刻みに動かしカチカチと動かし出す。

 バッタの焦点の合ってないような目は、食に飢えていた猛獣が、食にありつけた時のように、俺達を捉えていた。


 考えるよりも先に、体が動いた。


 早く逃げなければ!!


 悍ましいほどの恐怖が、無数の毛穴に針を刺す様に、押し寄せていた。


「逃げろ!!お前ら」


 俺は、二人の背中を手で押した。


 俺が囮になり、この二人だけでも....!


 アイツは、草食などではない。

 たった今、肉食にへと変化しやがった目だった。

 突然変異体の肉食の中型魔物に三人では、部が悪い。


 誰かが犠牲になれば、二人は救われる。


 その甘い考えは、一瞬で、崩れ去った。

 そのバッタは、折りたたまれた、異様にデカい後ろ足をパッと力強く伸ばす。

 音をも超えた速さで、イザベラとドンを狙い、鋭く尖った前足で体をギシャリ、ギシャリと刻んだ。

 そこには、そいつらの声に変わり、取り止めのない血の滴る音だけがある。


 息ができそうになかった。

 仲間が呆気なく、まるで元々存在しなかったと言いたげに、この世から消える。

 囮役にへとなった俺を狙わず、二人を狙ったコイツは、知性がある。


 バッタがこちらへと振り向き、もう誰の血か分からない血が、びっしりとついた顔を覗かせた。

 バッタは狂気ステップで、俺へと近付き、人間一人やっと飲み込める大きさの口を開け、無理矢理俺を押し込んだ。

 俺は窮屈な場所にへと押し込められる。


 肌に焼かれる様な痛みが走る。


 声が出ない。

 飲み込まれる時に、キザキザとした突起に喉を切られたからだろう。

 溢れ出す血が体の表面を温める。

 だが、体の深部が徐々に、冷えていってるのが分かる。

 寒い、痛い、苦しい。

 これが死というものだろうか?

 あぁ俺は、もう死ぬ。


 ――嫌だ、死にたくない。

 もっと仲間を守る為の役に立ちたい。

 フィオナ様の笑顔を見ていたかった。

 あわよくば、フィオナ様の温もりに触れてみたかった。


 あぁ、俺は何にも出来なかった。

 これも全て、俺の弱さのせいなのか?



 視界は暗闇に包まれていく。

 死は無情に俺の体を蝕んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。