第二十二話 主従契約
俺は密室な場所に一人で入る。
その部屋に光が差し込む格子窓がある。
俺はその格子窓に、腕を置く。
そこから流れ込む涼しい風が、俺の髪を靡く。
コンコンコン、と言う音と共に
「入ってもよろしいでしょうか?」
と言うラロットの声がする。
「入って良いぞ!」
と俺が返すと、ゆっくりと扉が開く。
そこには、落ち着いた表情のラロットが現れた。
ゆっくりとした足取りで、こちらの前方1mまで進んでくる。
そして、腰を落とし、しゃがむ。
「こう一対一で改まると照れるな」
と、俺は笑ってみる。
「何を言っているんですか。もう自分は、ユレン様の配下なんですよ?気を遣わないでください」
「ラロット....お前には本当に感謝してる。他の人もそうだが、お前が居なかったら、きっと今の俺も居ないし、今の俺らも居ない。あの時、初めて会った時から、俺を信じて全てを懸けてくれてありがとう」
「それなら、ユレン様を攫ってきてくれたナギにも同じ感謝を伝えておいてください」
とラロットがニコりと笑う。
ギクッ!
俺を攫ってきたのは、ナギだったのかよ....!
ナギもそれを黙っていたのか!?
あの慣れた手付きの攫い方....ナギって怖いな。
少しだけ距離を置くことも検討しようかな。
「それじゃ、手を出してくれ!」
「はい」
ラロットはそっと握手をするような手の形を前に出す。
「それじゃぁ、主従契約を結ぶ」
――主従契約。
違う種族同士が結べる契約。
この契約を結ぶとメリットがいくつかある。
一つ目は、能力の底上げ。
二つ目は、味方同士の魔力の相性を上げる。
三つ目は、魔力の質を上げる事だ。
主従契約を結ぶには、手を交じらせ、主が従に魔力を分け与える。
その魔力を従が受け入れた場合に、主従契約を締結される。
そうなると、従の中に主の魔力と同じ魔力が生成され出すようになるらしい。
だが、従の魔力より少ない量が同時に生成されるから、従の魔力は無くならないのだとか。
うむ、完全に同じ魔力を100パー持ってる奴が居ると少し気持ち悪いから、それで良いね。
個性もありふれるわけだしね。
俺は、ラロットの手を掴んだ。
全身の魔力を手一点に集中させ、一気に注入した。
強い者程、他の魔力を無意識に体が拒む習性がある。
だから、俺の魔力を惜しみなく....!!
手が熱く、震えだした。
腹の奥底から搾り出されている感覚がする。
手の交わり合っている所に紫色の魔力の渦が形成され、たちまちラロットの体へと収束していった。
「ど....どうだ?」
俺は、ラロットに恐る恐る聞いてみると、ラロットは眉を下げた。
「特に変化は....」
「えぇぇええ?」
何かやり方ミスったか?
でも、ピタ!っと決まった感あったけどな。
なんでだろうか。
これは失敗なのだろうか。
それとも特異体質とか....?
主従契約結べませんよ的な。
「ですが、ジワジワと微小ですが、強いエネルギー的なものが湧き出してくる感じがします」
「それなら、時間が経てば、何か変化があるのだろうか」
「違う魔力の適合時間があるから、すぐに変化は見られないとか....ですかねぇ?」
「魔力の適合時間か」
うーむ、それっぽい事をラロットが言っているな。
俺もその線が本軸に見えてきたな。
よし!この調子でドンドン主従契約を結んでいこう!
その後、俺は村の皆全員に主従契約を結んだ。
結んだ人全員が、口を揃え特にこれと言った変化はないと答えた。
うーむ、やっぱ特異体質によるものでもないみたいだ。
ならば、後々その変化は見られるのだろうか。
最後の人と主従契約を結んだ時には、俺は何の言葉も理解出来ないほど頭が回らなかった。
体すらも言う事が効かない。
これが魔力切れか....
俺はミュウとアスナに運ばれて寝床へと戻った。
◇
気付くと朝になっていた。
あまりの倦怠感に、いつの間にか寝てしまったらしい。
今は何時だ?と時計を探すが、ここは前世の世界ではない事を思い出す。
相当疲れてたんだなぁと思う呆れ笑いを浮かべた。
隣には、ミュウがスピーっと寝ている。
寝顔も可愛いなと思いつつ、頬をツンと触ってみる。
触り心地は、まさにスライムで、柔らかく弾力のあった。
すると、ドアがノックされ、
「失礼します」
と共に、ヴァンパイアの女の人が入ってきた。
濡れたタオルを片手に持っているので、俺の看病をしにきたと言う所だろうか?
「あ、起こしてしまいましたか?すみません。食い入るように寝ていらっしゃったので、お絞りを使って、顔を拭こうと思ったのですが」
「あ、いや。さっき起きた所だ。お気遣いありがとう。そのお絞り貰ってもいいか?」
「はい!勿論のこと」
俺は、自分の顔を拭きながら、ある事を考える。
うーん?この人居たか?
いや、みんなの顔は、ある程度覚えたはずだし、こんな美人な人、見つけたら忘れるわけがない。
ピンク色の長髪、スッとした顔立ちに、華奢な体躯。
そして、ヴァンパイアにしては、色素が薄い目。
でも、どこか既視感ある顔だ。
あ、そうだ!アスナだ。
てか、昨日アスナに運んで貰ったんだった。
感謝を伝えたい。
アスナはどこにいるのだろうか。
「ね!アスナを呼んできてくれないか?」
俺はそう言うと、ピンク色の女の人は、困ったような顔をして、少し不機嫌な声で言った。
「何を言ってるのですか?私がアスナですよ?」
俺は、言葉が詰まる。
思考停止をし、一瞬体が固まる。
だが、次第に言ってる言葉を処理できた。
え?アスナって言った?え?全然違うように....
「えぇえええええ!?」
と過去一大きな声で、驚きを示してしまった。
俺の声は、家を超えて家周辺にも声が届いたらしく、五憲の守人らしき人達が俺の部屋へと揃って来た。
「お!起きられましたか!ユレン様」
「おはようございます。ユレン様」
「おはよーう!!ユレン様」
「起きたのですか!!ユレン様。早く言ってくださいよ。アスナ!」
えぇ...あぁ...え??
一気にこう来られると!
ヤバい情報量が。
頭がフラフラしてくる....
あかん!!処理しきれなくて、強制ログアウト....
そのまま俺は、気絶した。
◆
俺は再び起き、ミュウを抱え、状況を整理し直す。
まずは、紅色の髪の人は、ラロットであろう。
元からヴァンパイアで人間味があった顔が、人間と比較しても大差ないぐらいに人間に近付いた顔立ちをしていた。
なんか気のせいだろうか。顔はスッとしている。
目立つのは、顔に付いた紅い線だろうか。
そして、体もなんだろうガッチリとしている。
縦にも伸びたよな?
嘘だろ....主従契約に能力の底上げと言った項目があったが、ルックスすらも底上げしたのか?
ナギとレインも自分の個性を最大限活かしたカッコいい感じになっている!
ナギは黒い髪をした日本人色が強かったが、身体が一段とスッとなって、スーツを着ると色男と言った感じだろうか?
どこか俯瞰していそうなイメージを一層強まったと思う!!
レインは、キリッとした見た目じゃなくて親しみやすそうで、無邪気そうな顔を残し、体がバッとデカくなった気がする。
なんだろう何か母性本能と言うのかな?困っていたら助けてあげたくなる様な可愛いらしく、整った顔立ちをしている。
俺は男として....この三人に負けた気がした。
フィオナは、ワンパクで、キリッとしたイメージを持っていたがそれがもっと、引き立っていて、少し色気を感じる。
それを裏付ける様にお姉さんと言いたくなる様な、大人の体に育っていて、スタイルが抜群と言って良いほどだ。
前世でここまでのルックスを持っていたならば、世界一美しい女性と評されるぐらいじゃないか?
皆んな共通として、人間に近い見た目になっていた。
だとすれば、主の種族に近い見た目に従がなるのか。
興味深い。
とすれば、リザードマン達は、どうなったのだろうか?
そう思い、部屋を出てみるとそこには、美人の女の人がいた。
背には、弓と矢が担いでいた。
顔は、もう人間と言っても良いぐらいだ。
特徴はタレ目って所だろうか?
「お前はルーディアか?」
「あ、はい!」
ルーディアはびっくりしながらも、そう答えた。
足と手は、人間とは言えない、鋭い爪と厚い筋肉があった。
それに、一番変わったのは、羽の存在だ。
前からリザードマンを見ては、違和感を覚えていたのは、この羽の存在だったのかもしれない。
そう!前のリザードマンは羽が無かったのだ!!
ドラ○エもして育った俺は、やはりリザードマン=羽ありと認識していたらしく、そこに無意識に違和感を感じてたらしい。
「あの....どうかしましたか?」
とモジモジし出したルーディア。
その後には、ルラン、リエル、リドルがいる。
「どうですか?我輩もあなた様に少しは近付けましたでしょうか?」
「起きられましたか?ユレン様」
「良い朝だね!!ユレン様〜」
皆んなルーディアと同じく、人間味を帯び出していた。
「お前ら、随分と前と変わりやがって....俺にとってはとっても嬉しいぞ!!」
そして、俺は気になっていた羽の存在について尋ねた。
どうやら、この羽は、リザードマンを飛ばすには、小さいのだとか。
だから羽はお飾りと言った感じらしい。
しかし、5秒程度なら、5mぐらい飛べるのらしいが、めちゃくちゃ疲れるから、コスパが悪いのだとか。
羽は飛べたらかっこいいし、実用的でもあったが、少し残念ではある。
だが、まぁいい!
見た目だけでもカッコいいからね!!
外に出てみると、ヴァンパイアとリザードマンは、皆んな同じように進化していた。
何しろ、皆んなデカイ....!だから、俺の肩身が狭い。
俺の身長は170台なんだけど、他の女性の人とあまり身長が変わらないぐらいだった。
あぁ、皆が少し怖い....
けど、その分皆んなは、頼りになりそうである!!
国の発展には、それは欠かせないであろう。
主従契約成功だぁああ!!
◇
どこにでも居る一般男性の俺。
だけど、ひょんな事から、神様に出会い、運命の巡り合わせのように、色んな仲間と出会い、夢を追えている。
その一時が俺にとっては、ありがたい幸せであり、何にも変えれない幸せな時間である。
いつ死んでもおかしくないような所に身を置いてますが、その生活はとても充実しています。
っと、日記に俺は記した。
日記と言っても、区切りの時に書く日記で、毎日書くようなものじゃないけどね。
俺は、椅子に座り、天井をボケーっと見上げ、皆んなに役割を振らないとなーとか考えてると、ラロットが部屋にへと入ってきた。
「失礼します」
ラロットは、焦りを見せている様子だった。
「どうしたんだ?いつもの様子じゃないけど」
俺は不思議がりながら聞いた。
「あと一週間後赤き月が昇ります。万全な対策をしなければ、この村が崩壊します」
「え?」
あまりに突拍子のないラロットの発言に、俺は唖然とした。
貴重なお時間を割いて、最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
ここで一旦完結に致します。
良かったら、評価のほどよろしくお願いします。




