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第二十一話 長の継承と宴

 太陽の位置的に、17時ぐらいだろうか。

 俺は、全ての者を集めた。


 緊張するなぁ....


「ユレン様。皆が集まっております」


 そう言うのはラロットであった。


「俺は、まだ長になってないんだから、その敬語はやめろ!!」


 そう、今から俺は、長になる事を表明し、この村の方針を伝えるのだ。

 すなわち、この村の最高司令官となり、皆を率いる存在となる。

 前まで異世界で工事などに携わっていた人がだ。

 未だに、これとなく実感が湧かない。


 だが、ここから始まるんだ。

 俺が子供の頃に見ていた国造り。

 そんなの無理だと思っていたが、運命は分からないものだ。

 神様見ているか?第一歩を俺は今から踏み入れるぞ。

 かと言っても、国と言うには小さすぎるから、村止まりだけどね。


「じゃあラロット行ってくる」


「いってらっしゃいませ」


 ラロットは丁寧に頭を下げた。


 俺は簡易的に作られた木の台に通じる階段を、一歩一歩踏み締めながら登り始める。

 足取りが重く感じる。

 何故だろうか。

 単なる緊張だけではない。

 もっと重要な何かのせいだろう。


 俺は、木の台に登り、集まった皆を見渡した。


 それは、逞しく頼もしい精鋭達が列をなし、威厳ある面構えが俺を捉えている。

 そこに風が突き切る。


 俺は手が震えていた。

 本当に俺がここのトップとなっていいのだろうか。

 本当に俺が民を責任持って率いる事ができるのだろうか。

 前世では中小の建設会社に勤めていた、しがない何処にでもいる男だ。


 俺は又もや自分に問いかけた。

 やめるなら今だ。

 この先に行くと責任を伴い引き返す事など到底出来ないであろう。

 俺には本当にできるのか?


 その時に、ふとこの異世界に来てからの事を思い出した。

 ルナとの誓い、ヘルシャースの逃亡劇、ヘルシャースでの仲間との死闘。

 そうだ、そうじゃないか。

 考えられない事を乗り越えてきたじゃないか。


 出来るのか出来ないかではない。

 するんだ。

 俺ならきっと出来るだろう。


 俺は静寂の中、腹から大声を出した。


「今、この場をもって、俺はこの村の長として、表明をだす!!」


 その瞬間、歓声と拍手が辺りを切り裂く。


 言えた....言っちまった。

 これじゃ、もう引き返せねぇな。

 後は使命を全うするのみだ。


 俺は、手を上げ、静まらせる。


 そして、俺はトップになるにあたって、皆に守って欲しい事を伝えた。


 一つ目は、長の事などで、恨みっこをしない。仲良く。平等に。

 二つ目は、国造りの野望。

 三つ目は、東の国――サンバキアにより、二年間で強大な力を欲すること。


 三つ目を話し終えると、騒めきだす。

 そりゃそうだ。

 ヘルシャースに住んでいるこの種族達は、知らない世界の話だ。

 相手の力量、文明の発展度合いも何も知らないのだろう。

 見えない敵ほど怖いものはない。


「そうだ!だから、お前らには、一丸となって発展に尽力して欲しい」


 するとナギが質問した。


「ユレン様は、ヘルシャースと言われるこの地からの外へ来たと言っていました。つまり、他国も見てきたと言うことですよね?ここと外の国の文明差は、どれほどでしょうか?」


「うーん文明差だけで言えば、ここが1に対し、あちらが70と言った所かな。俺が見た所は、東の国と違う国で、東の国との文明差はあまり分からない」


「分かりました」


 そうだな。

 俺らの利点は、東の国は、こちらへの偵察がしにくく、こちらは、東の国を偵察しやすい所でもあるな。

 東の国の軍事を環境+こちらの軍事で上回る必要もある。

 目安の軍事力を偵察すり必要があるな。


 と....後、質問はなさそうだ。

 ここで締めくくるとしよう。


「それじゃ、これで集会を終了するとする」


 よし!!それじゃぁああ。


「宴だぁあああああああああ!!」


 俺が叫んだ瞬間、それを覆い被さるように、大きく今までに聞いた事のない歓声が聞こえた。


 ◇


 美味しい物食べて、アルコールを体に入れたら、リザードマンとヴァンパイアとの間にある壁を取っ払う事が可能であろう。

 そう!名付けて仲直り作戦!!と言う奴だ。

 かと言って、殺し合いしてきた仲を払拭できるかどうかは、不安ではある。

 だが、酒を飲んで、本心で語り合う場も必要であろう。

 それにヴァンパイアの村だから、見張りを立てとけば、後は安全に食料を食えるはずだ。


 と思ってると、食べ物がずらずらと運ばれてくる。

 ラロットが指示をしているらしい。

 うん、頼もしいね。


 運ばれれくる食材は、大きなエビ、大きな牛?とか、もう色々である。

 でも、あくまで形が酷似しているだけで、色が青紫に彩られているモノもあれば、濃い緑色のモノもいた。

 明らかに毒が入ってそうな食べ物だが大丈夫か....?


 にしても、こんなに食べ物がいるのはなんでだ?と思って、そこらにいたリザードマンに聞いてみると、「戦による魔力の大量の流出が、魔物を沢山寄せ付けたせいです」と答えた。

 ひぇ....魔力が沢山流出する事で、こんなにも魔物が寄り付いてくるのか。

 火葬の重要性が、改めて分かった気がする。


 一通り食材を集め終わったのか、調理係の動きが目立ってきた。

 調理は、アスナを中心に行っているらしい。

 力あるものは、エビの殻など硬いものを大きな包丁で、取り外し、柔らかい部分などをアスナ達が包丁で捌いている。


 色々大変そうだなぁとトップながらもミュウと傍観していると、フィオナから誘われ、殻剥きを任された。

 いや!俺力ないよ!!

 と断りたかったが、皆んなが俺がするとなると、期待の眼差しを向けられたので、出来なかった。


 フィオナがデカい包丁を渡してくれたので、俺はそれを持ってみると、めちゃくちゃ重い。

 持つのでやっとってぐらいだった。

 ミュウも手伝ってくれるが、上手くバランスを取れなく、よろけだす。


「おい、待て!!転んじゃう」


「大丈夫ですか!ユレン様!!」


「んなわけ!」


 俺は、転ばないように、足でバランスを取ろうとするが、力不足により、転んでしまった。

 だが、幸いにも海老の殻の方に転がり落ち、その反動でエビを真っ二つに両断。


「流石ユレン様!!」


「硬い殻を一刀両断してしまうとは!!」


 と思わぬ勘違いをされて、トップの威厳とやらは、守られた。

 俺は終始愛想笑いで押し通した。


 少し時間が立つと、良い香りがどデカい鍋から溢れ出す。

 ミュウと俺はヨダレを垂らしていると、その料理が運ばれてくる。

 青紫色だった大きなエビは、すっかり真っ赤になっていた。

 その他に彩り溢れる野菜も香りを引き立てる。


 その他にも、主食用の牛肉などが運ばれてくる。


 そして、酒も運ばれてくると、食い物が揃った。


 しかし、皆、その料理を美味しそうに見つめながら、静かに待っている。

 そうか、俺の掛け声と共に食い出すって奴か?

 なら俺が声を張るしかないな。


 俺は、立つと、掛け声をだした。


「かんぱ〜い!!」


 すると、大きな声で


「かんぱーい!!」


 と言う入り混ざった声と共に、皆は食べ出した。


 ガブガブ、ゴクゴクと咀嚼音?が辺りに響き出し、その音は、次第に声へと変化していた。

 皆んな、アルコールがまわっているのか、少し踏み込んだ会話もし出す。

 内容を盗み聞きしてみると、戦いあった人たちなのだろうか、「お前のあれ実は、すげぇ危ない攻撃だったんだ!」とか「お前のあの斬撃は見惚れたぜ!」とかの会話が聞こえる。

 おいおい、殺し合い中の話を話し出すとかどんだけ脳筋の奴らなんだよ!

 ヘルシャースにいる種族だから、それはそうか。


 周りを見ていると、リドルとレインが皆んなの前で、変顔をしながら、ふざけていて、笑いを取っていた。

 リドルはそうなんだとして、レイン、そう言うキャラだったのか....?

 なんかこう....ね?言いたい事は分かるだろ?

 うむ....いや、そうか、楽しい事はトコトンしたいタイプだからこそ、戦いとか嫌な事は、逃げたくなるのかな?

 ま、俺が陰で、レインに爆笑していたのは、墓場に持っていくとしよう。


 俺とミュウは、他に美味しいモノを探し、片っ端から食べ歩きをした。

 その中でも一番ミュウが気に入っていたのが、甘い果実とゼリー状の物が混ざり合った、フルーツだった。

 俺がそのフルーツを食べさせてあげてる時、ミュウは満面な笑みで食べていた。

 本当に幸せそうで、こちらも幸せにる。

 今思えば、保存食とかそんなの食ってばっかで、作りたてなど食ってなかったもんな。


 そのまま食べ歩きしていると、ルラン、フィオナ、アスナの周りにリザードマンとヴァンパイア達が周りを囲んで、盛り上がってるのが見えた。

 何をしているのかと、人垣のほんのちょっとした隙間から中を覗いてみると、どうやら酒の飲み比べをしているらしい。

 俺の予想からすると、酒の強い順は、ルラン>アスナ>フィオナだ。

 ルランは、貫禄があって、筋をきちんと通さないと気が済まないタイプで、貫禄があるから、酒豪ってイメージがある。

 フィオナは、ワンパクすぎて逆に酒が弱いと言うイメージかな。

 アスナは、きちんとしたイメージあるし、そう言う人に限って、案外酒は強いってことがある。


 俺はそう分析していると、俺の存在にアスナが気付き、「飲み比べをしましょうよ!」と俺を誘ってきた。


「えっ?いや待って....!俺本当に酒弱いんだよ!勘弁してくれ!!」


 そう、俺は前世でビールを二杯くらい飲んだ所で、顔真っ赤になって、酔い潰れるのだ。

 そう言う酒飲み場に行った時は、吐いたり、その場に眠ってしまったりと、大迷惑を起こす程だ。

 そんなのが酒の飲み比べなど出来るはずがないだろ


 だが、俺の言葉は虚しく消え去り、その場のノリで、俺も戦いの土台にへと登る事になった。


「へぇ〜ユレン様も....お酒の飲み比べすることになったんですかぁ〜?えへへへへ負けませんよぉ!」


 フィオナは、頬がすでに赤く染まっていて、ベロンベロンに酔っていた。


 おいおい!フィオナもう退場した方がいいんじゃないか?

 これ以上飲むのは....いや?これはいいチャンスだ!!

 俺は、多分この中で一番酒が弱いだろう。

 だが、こんなにフィオナが酔っているのなら、げべは避けられるはずだ!


「よし!!お前ら、飲み比べを始めるぞ!!」


「これは負けていられませんな」


 ルランは、喉を鳴らし言った。


 俺は深く深呼吸をすると、酒に手を付けた。


 ◆


 翌日。

 後で聞いた話だけど、宴は成功に終わったらしい。

 ヴァンパイアとリザードマンの間にあった壁が無くなったらしいのだ。

 うん、良かった、良かった。


 うん?あの飲み比べはどうなったって?

 うーん....それが俺にも記憶がないんだ。

 最後の記憶は、二口目を飲んだ所。

 アスナ曰く、酔い潰れた順は、俺、フィオナ、ルラン、アスナだったらしい。

 いや、アスナ酒つよ!!

 てっきり、ルランが圧勝するかと思った。

 見た目だけでは分からないものだな。


 しかし、一番衝撃的なのは、俺が5口で酔い潰れた事だ。

 あぁ....嘘だろ?一杯も飲めなかったなんて....

 アスナは、二十杯くらい飲んだらしいのだ。

 なんて言う差なんだよ。

 情けないと言うかなんと言うか....

 そもそも、ここの酒のアルコール度数がバグっているだけだろ!

 そしてここで、育った奴がバグっているだけだ。

 うん。俺は至って普通なはずだ!

 頼むから、そうだと言ってくれ...


 今日も色々する事がある。

 だがまぁ、優先的にやるのは、前からやりたかった『主従契約』だ。

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