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第二話 困っている女の人

 目が覚めると、そこには教科書で見た中世の街並みが広がっていて、見た事のない種族が街中を歩いていた。

 オーク、ゴブリン、エルフ、オーガ、リザードマンなど、まだまだ色々な種類が居たのだ。

 ドラ○エなどで培った知識が溢れ出す。


 ドクドクとする心臓の高鳴りを抑え、まず横たわっている情けない姿を直す。


 服の埃を払ってると、ズボンのポケットに違和感がある事に気付いた。

 そこにあったのは、ペンダントであった。

 赤い玉が日光を反射し、煌めいていた。

 これが、俺が行くべき道を示してくれるのだろう。

 でも、どうやって....


「ミュウゥ」


 俺の足から柔らかい感触が伝わる。

 もしかして――スライム!?


 足元を見てみると、楕円の膜に水が入れられてるようなスライムがそこには居た。

 俺の足を手で掴み、スリスリと柔らかい感触を押し付けてきた。

 ――可愛い。

 思わず、スライムを撫でてしまった。


「ミュウゥ!!」


 細い目を潰し、撫でられるのを受け入れるように嬉しそうに鳴いた。


 こんな奴が無限のアイテムを収納できるのか。

 想像できないな。


 スライム、ペンダントが身近にあったと言う事は、加工技術能力も俺の身近にあると言うことか。

 能力と言うことは、俺の体に刻まれていると考えるのが自然か。

 なら、まずこのペンダントの機能をこじ開けるために....


 そう思うと、スライムがペンダントの赤い玉を触った。

 その瞬間、バッと青色のメニューが目の前に出た。

 これが、道導....


 ────────────────────

 道導: ワシ作


【1,Step】....

【2,Step】....

【3,Step】....

 ────────────────────


 見る限り、3ステップまであるらしい。

 右左も分からない状態なので、もっと追加しとけよと思ったが、逆に言うとこれだけで、初動が終わると言うわけか。

 ならまずは、【1,Step】から始めようか。

 そうしてクリックしてみると。


 ────────────────────

 道導: ワシ作


【1,Step】困ってる女を助けろ

【2,Step】....

【3,Step】....

 ────────────────────


『困ってる女を助けろ』を助けろ....?どう言うことだ?

 女って....そこら辺に沢山居る中で、ピンポイントで探し出せる事が可能なのか?

 そもそも、これが国造りを始める上で何の関係が?

 何か恩を貰えるとか?


「ミュ?」


 スライムは俺の難しい顔を見たのか、俺の首へと登ってきた。

 そういや、名前決めていなかったな。

 ミュウミュウ言ってるし、名前は


「ミュウだ!!」


「ミュウ」


「そうミュウだ。よろしくなミュウ」


 ミュウは嬉しそうに頷いた。


 ◇


 そうして、『困っている女』とやらを探しを始めた。

 街中を歩いてみるが、そんな人は見つからない。

 ったく、あの神様、何処にいるかぐらい伝えとけよ。


 俺は、川沿いにある石の手すりにへと疲れたので座った。


 こんな闇雲に探しても見つかるわけが無い。

 見た感じ人口密度は、日本の都会ぐらいあるからだ。

 だとしたら、少なくとも、神様は俺の初期位置と『困っている女』との範囲を近くしたはずだ。

 じゃないと諦めと言っても良いだろう。

 なら、俺の初期位置から半径100mを範囲に絞って探そう。


 ――ドサッ!


 いきなり俺の胸元目掛け、女の人が倒れ込んできた。

 それと同時に、驚いたのかミュウが服へと潜り込む。


 女....女....困っている女!?

 もしかして、こいつが困っている女なのか!?

 どんな偶然――いや、どうでも良いか。


「おい、お前困っているのか?」


 俺は、女の人の肩を掴み言った。


「すみません!!いきなり....でも、今はこのままにいさせて下さい」


「??」


 女の人は、気絶するように眠った。

 女の人は、黒いロングの髪に、身軽な鎧、それに剣が携えてあった。

 周りの魔人、人などを見ていると剣を携えているような人達は居ない。

 ならば、この人は何か特別なのか。

 剣士...なのか?


 風で女の人の髪が靡く。

 そこから、クリックリの片目とスッとした鼻が見えた。

 綺麗な人だ。


 あれから1時間ほど経っただろうか。

 女の人は、ギュッと動き出し寝惚けた顔を俺に見せた。

 すると、女の人は顔を真っ赤にしアワアワと慌て出し、深く頭を下げた。


「すみません。すみません!!いきなり、見ず知らずの人の胸元で寝てしまって」


「いえいえ、それより困っていたのですか?」


「あ、え?困っていたと言うか....はい、困っていました。任務後のあまりの疲れに足が覚束ずかなかったので、身寄りが欲しかったのです。お陰で疲れも取れました。本当にすみませんでした!」


「なら、よかったです」


 よし、知らずの間に『困っている女を助けろ』をクリアした。

 これは順調なのか....?

 いや、順調に違いない。

 次は....


 ────────────────────

 道導: ワシ作


【1,Step】困ってる女を助けろ

【2,Step】女に土地の競売の場所を聞け

【3,Step】....

 ────────────────────


 か。


 女ってこの人の事か。


「あの土地の競売が行われている場所知っている?」


「あ、土地の競売をしている場所ですね。知っていますよ!でもあなたの格好....入る為の資格を持っているのですか?」


「資格....?」


「あー、私と一緒に入りましょう!!一緒に入れば問題ないです。さっきのお礼と言う事で、今回の件はおあいこにしてくださいね!!」


 彼女は、微笑んだ。


 なんだか、知らんが彼女の言ってる感じ、競売を掛ける所には『資格』がいるのだろう。

 勿論、俺はついさっき来た異界人なので、持っているはずもない。

 それ故の助けだったのか。

 なら、ここは....


「分かりました。なら、そこへと連れてって下さい」


「はい!!」


「名前は?」


「私の名はルナです!あなたは?」


 名前....旧名は違和感か。

 西洋っぽい名前を。


「ユレンだ。そして、こいつがミュウだ!」


「ユレン....ユレンですか。良い名前ですね!へぇミュウちゃん可愛い!!」


 ルナは優しく尻込みしているミュウを撫でた。


 敵意を感じなかったのか、ミュウはルナを受け入れた。

 案外、人懐っこいのかなと思ったが、それは俺だけの時だけなのだな。

 これは、神様が施したプログラミングかな。


 という事で競売の場所へと着いた。

 大きく華やかな建物で、多くの旗がはためいていた。

 多分、国を象徴する旗なのだろうか?

 それが何旗もある。つまり、国際的な建物?


 ルナは、警備員に資格を見せていた。

 資格とは一体何だろうか?地位的な物なのだろうか。

 確かに、地位が上がる人は総じて金も持っている。

 土地の競売は、貧乏人は要らないと言うことか。


 中に入ってみると、熱気に溢れたクールな格好のおっちゃん達が軽々と金の値段を言い、土地の値段を上げていく。


「俺は10万ルディだぁ!」


「なら俺は200万ルディィ!」


「200万ルディ入りました!!他に居ませんか?」


「じゃぁワシは500ルディを出そう!!」


「決まった!!じゃ500ルディで落札だぁ!!じゃ、次はこの土地だ!!」


「600ルディ!!」


 これが競売か。

『ルディ』って金のことを表しているのか?日本で言う『円』みたいな

 何と言うか、心が押し潰されそうな感じがする。

 ビビるな入れ。俺はコイツらがビビるような金で落札して....

 ――って!俺一文なしじゃねぇか。

 金もない金目のものも何もない一体どうすれば!?【3,Step】をクリックしてみた。


 ────────────────────

 道導: ワシ作


【1,Step】困ってる女を助けろ

【2,Step】女に土地の競売の場所を聞け

【3,Step】最後に紹介される土地を買え

 ────────────────────


『最後に紹介される土地を買え』って....だから、俺は一文なしなんだって。

 大丈夫なんだろうな?神様。


 取り敢えず、国会議事堂みたいに置かれている席を座り、その時を待った。

 隣にルナが座ってくれて、心強い。

 そして、何しろミュウが居るしな!!


「ミュウ!!」


「あの、何を買うんですか?」


 ルナは不思議そうに問いた。


「なんかよく分かんないけど、最後に紹介される土地を買うことにしたんだ」


「へぇ、そうなんですね。でも今更ですが、お金を持っていないように見えますよ?」


「いや、今は金など必要ない」


「はい?」


 ルナは怪訝そうな顔をする。


 いや、今更すぎる!気付くの遅いって!!

 余裕な顔をして言ったが、今でも胸が張り裂けそうだ。

 俺みたいな奴がここに居る人達とは釣り合わないし、異世界となれば、一文無しに来た俺がどうなるか分からない。そんな俺を連れてきたルナにもどんな事が起きるか分からない。

 手汗が大量に吹き出してるのを感じる。


「そして!!最後に紹介する土地はぁあああ!!『ヘルシャース』だぁあああ!!」


 黒いスーツを身に付けた競売人が、先程よりもテンションを異様に上げ紹介する。


 最後に紹介する土地!?俺が買う所だ。


 俺は周り見渡すと皆、不吉な物を見ているかのように目を細める。

「そろそろ帰るか」など小さな小言を口を揃えて言う。


 ルナは目を大きく開け、俺の手をギュッと握る。

 それはまるで、俺がこの土地を買ってはいけないと言うように。


「今なら!!この土地は無料で、買っていただけた方には1000ルディをお渡しします!!」


 嘘だろぉおおお!?神様そう言うことか。

 一文無しにも買える土地が今目の前にある!!

 その上、1000ルディも貰えるなど夢のようじゃないか。


 でも待てよ?何で、皆買おうとしないんだ?

 無料ほど怖い物は無いと言うように、何かこの土地が持っている不吉な物があるのか?

 それが呪いなのかもしれないが、神様はその土地を買う事が最善手と言っている。

 危険な土地を買うのが最善主....うん?矛盾してないか?

 安全な土地を買い発展させるのが普通だろ。前世でも温帯などの住みやすく比較的、安全な土地に文明が栄えていた。ならば、危険な土地を買うのはダメな選択ではないか?

 いや、この考え自体が間違っているのかもしれない。

 ここは異世界であり、前世の常識など通用する筈がない。

 ならば神様を信じ、買うしかない。


「こんな腐った土地誰が買うんだろうな?」


「買う奴なんて居ないだろ。魔物がウジャウジャと居る地獄の土地」


「地獄の土地故に人を引き寄せず、未だに未開拓」


「魔物がウジャウジャ居るどころか環境がイカれていて人が住めねぇだろ」


「あぁ、立地の良さから一つの国の軍がそこを平定しようと試みたが、それは失敗に至った。それどころか、戻って来れた奴は居なかったらしい」


 俺は買う為名乗り出ようとすると、クールなおっちゃん達の噂話が耳へと流れ込む。


 どうやら、この世界でも危険な土地に文明などは発展出来ないらしい。


 この噂が本当ならば、相当ヤバい土地なんじゃないのか?

 一つの軍も飲み込む地など、俺が行ったのならばすぐに死んでしまうよな?

 競売の運営人が金を出すほど手放したい土地。

 何一つ成功できるプランが見えない。

 それに道導となるペンダントは、ここで役目を終わってしまう。

 俺一人の頭で何が出来るのか?


 このペンダントの最善手は、国造りをする為のであって、生きる為の最善手ではない。

 なら、ここで辞退する手も....


 いや、違う。

 やってみせるんだ。

 こんな所でウジウジしてしまったら、異世界で生きていく事さえ出来るわけがない。

 それに、俺には生きていく為のサバイバルスキルがあって、便利クッズがあって、仲間がいる。日和ってる場面じゃねぇな。


「俺がその土地を買います!」


「ちょ!ユレン!!」


「おい、あいつマジか?」


「そんなに不毛な土地で死にたいのか?」


 騒めきがこの場に轟き、瞬く間に包み込んだ。

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