↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/22

第十六話 この地の理 フィオナ目線

 私の名はフィオナ。

 五憲の守人の中の一人だ。


 私がユレンに言い渡された役割は、仲間のヴァンパイアを守りながら、リザードマンの数を減らす事である。

 ここまでの乱闘になると魔物達がこぞって集まりだすので、私が討伐する。

 五憲の守人以外なら、強い魔物を倒す為にヴァンパス七人を必要とする。

 だが、私なら一人で倒せる。


 誰も死なせない....なんて無理だけど、私の手が届く範囲は全員仲間を救う。

 でも、いくら五憲の守人と言う肩書きがあっても、限界がくる。

 戦闘は初めてなのか?と言う程の慣れない手付きの若い男の子をリザードマンから救ったが、その際に右手に割と深めな傷を負ってしまった。

 分かっていたのだ。

 救うなら、ある程度の傷を負ってしまうよう程に、あの子の命は、ギリギリだった事ぐらい。

 あそこの最善策は、あの子を見捨てて、リザードマンを斬る事だったが、どうもそれが出来なかった。


 私は、男の子を戦線から引かせる。

 向かってくるリザードマン、魔物を細長い剣で捌ききる。

 武器強化のお陰で、感覚の1.5倍程攻撃範囲が伸びているから戦いやすい。

 だが、私は右手で剣を握る為、さっきの傷が戦闘に響く。

 回復魔法を使いたい所だが、生憎、私には使えない。

 自分の得意不得意もあるのだが、回復魔法は、難しすぎるし、魔力も使う。


 何より、リザードマンがすばしっこい。

 私が入ったと思った攻撃は、たまにすり抜けている事がある。

 それを可能にしているのは、私達にはない尻尾と太く筋肉質な足。

 それによって、機敏な動きを可能にし、すり抜けてくるのだろう。

 いつもの感覚でやっていれば、相手に隙を与えかねない。

 少々、魔力の無駄使いになる斬撃が増えるだろうが、魔力をもっと放出することにしよう。


 リザードマンは多数で陣営を作り、私に攻めてくる。

 あるリザードマンは上から、真正面から、下からと四方八方だ。

 だが、リザードマンは案外積極的に攻撃をしてこない。

 どっちかと言うと、防御に徹している感じがする。

 そうか、ここはあくまで時間稼ぎで、長同士の戦いが勝利を決める。

 だから、リスクある攻撃は必要なく、防御に徹しているのか。

 でも、私が一瞬でも隙を見せると剣で心臓を一刺しされる。

 手を抜けない。


 リザードマン達の統率された連携に、難色を見せながらも、前線を追い上げていると、五本の矢が私の頭を狙い飛んでくる。

 私は間一髪で、その矢を剣で、叩き落とした。

 息をする間もなく、四本の矢が飛んでくる。

 私が横にへと避けると追撃するように、矢がグイっと曲がり、私の眉間を狙う。

 だが、いきなり矢の運動方向を変えた弊害により、矢の威力が落ちていた。

 それにより、足で矢を弾けた。


「ふーん、不意打ちの攻撃二連続を避けられちゃうか。流石五憲の守人って感じね。長様が私達に振り分けた理由も頷ける」


 その声は、若くも芯のある女の声であった。


 こんな芸当ができるのは、『弓使いのルーディア』であろう。

 なぜここにルーディアが居るのだろうか。

 ただ単に、ここに五憲の守人が配属される事が分かっていて、いたのか。

 それとも、五憲の守人が倒して、ここに来たのか。

 後者だと最悪だ。

 レイン、ナギ、アスナは大丈夫かな。


「卑怯な手を使いますね。リザードマンはそんな卑劣な事をする種族なのでしょうか?」


 私は、嘲笑いながら、体勢を整え、矢が飛んできた向きへと剣を向けた。

 ルーディアは木の枝に乗っているのが見えた。


 ルーディアは、蔑んだ目でこちらを見ると、後方に飛び、森の中へと入っていった。

 私は、距離を取られるのは、まずいので、すぐさま後を追いかける。


 案の定、無数の矢が無秩序に飛んでくる。

 木の葉で、太陽の光は遮られ、木々が死角になり、どこから矢が飛んでくるかは、分かりづらい。

 矢には魔力が込められているので、私の間合いに入れば、探知でき辛うじて探知ができ対処は出来た。

 だが、このままだとあちらが優勢のままだ。

 どうにかしてこの状況を変えたい。


「あなた本当に分かっていないわね」


 ルーディアは、木の枝を飛び転々としながら言った。

 卑劣と言ったことに対して言い返したのだろう。


「ここは、殺やるか殺やられるかの世界。不意打ちが卑怯で卑劣?バカなんじゃないの?どんな手でも使って、勝ちにいく。情なんて捨てる。それが私のやり方よ。あなた達が長様を殺そうとしたのも、別に卑劣だなんて思っちゃいない。だって、これが世界の理なんだもの」


 元々リザードマンとは、話す気などなかったが、話してしまったのが悪かった。

 こいつの話を聞いてると、反吐がでる。

 リザードマンの長を私たちの長が殺そうとしたと言い、嘘で固め、この世を理由に己の行いを正当化しているんだから。


「私は、最初から敵同士なら、殺し殺されもこの世の秩序だと思う。でも、情を捨て、裏切って種族を殺すのは、理を言い訳に出来ねぇだろうが」


 片足で一気に地面を踏み込み、ルーディアを捉え、木々を切りながら、直線距離で一気に間合いを詰める。


 ルーディアは、矢を一気に六本放つ。


 矢を剣で空中へと飛散させ、ルーディアの腹に蹴りを入れる。

 ルーディアを木から地面へと落とし、動きを封じ込める。

 動きを封じ込めれば、ルーディアは、私から距離を取れない。


 私は、ルーディアの間合いに入った。

 刃がルーディアの首から20cmまで詰めれた。

 届く。

 やれる。


 とった!





 グサッ!!





 まるで、弾力のある物体を鋭利なモノが刺したかのような音が響く。

 それと同時に、私の首と肩の間から熱さが溢れ出す。

 その熱さとは裏腹に、足先から寒さが徐々に私の体に広がる。

 力が入らない。

 今の自分を足で支える事がやっとだ。


 熱さの原因を探る為に、自分の首の付け根に目をやると、赤黒い液体が吹き出している。

 血が吹き出す入口には、一本の矢が斜め六十度ぐらいの傾きで刺さっていた。


 ◇


 私の名は、ルーディア。

 長様から、五憲の守人を討ち取れと言われたので、長剣を持った女と戦ってる。


 長期戦でこいつを矢で削りに削って、倒すのも良いと思ったが、手の内が分からない以上、不意を突いて殺す事にした。

 最初は、魔力を込めた矢を打ち続け、魔力探知のみの防御に切り替えさせる。

 そして、私の徹底的な隙を見せ、こいつに勝ち筋を見せる。

 そうすれば、こいつは、乗ってくるだろうから、防御に隙が出来た瞬間に、予め上空に打っておいた魔力が付与されていない矢を当てた。

 完全に私の勝ちだ。


 この女は、バカだ。

 それは、戦いに『情』と言うものを持ち込んでいるからだ。

 私は遠くから見ていたが、その右手の傷は、仲間を庇った時のだろう?

 ほら、戦いにくそうだ。

 見捨てていれば、お前は、怪我せずに済み、もっとマシに戦えただろうに。


 情など、この地では、頭の中から排除しなければならない。

 それが出来なかった奴の死に様を嫌と言う程見てきた。


 私よりも強かった同世代の奴は、魔物に捕まった仲間を助けようとして、死んだ。

 そして、私の友達だったあいつも、雨の日に、私を魔物から庇って死んだ。

 本当にバカだよ、私なんて見捨てて逃げれば助かっていたのに。


 友達を失くして、泣いてる私に「この地に生まれた者は、それを耐えなければいけない」と長様がそう言った。

 はっきり言って、耐えるなんて無理だった。

 辛すぎたのだ。

 だから、こんな辛い思いするならば、戦いに情など捨てればいいと思った。

 それが例え、大事な人であっても。

 そうしてきた事で、今、五憲守人であるこの女に矢を向けれているのだ。


 私は、魔力を込めた矢をおもいっきり弓で弾いた。

 私の攻撃で、顔を俯かせて、動かないこの女を見ると、私のやり方は間違っていないと思える。


「こう見ると、情を持っているあなたと情を捨てた私。どちらが正しいかは明白ね」


 そう私は哀れみの目を向けながら、矢を放った。


 その瞬間、この女の右手がバッと動き、矢を受け止めた。


「嘘ッ....!!」


 思わず動揺で、そう言葉が出た。

 この戦いで、魔力を一番込めた矢を、直線距離で、至近距離で打ったはずなのに受け止められたからだ。

 しかも右手で...!!

 怪我をしていて使え物にならないんじゃなかったのか?


 その女は、矢を地面に放り投げ、長身の剣を左手で握りしめる。

 そして、ニヤリとした目をこちらに向け、私のお腹をシュパッと剣を振り抜いた。


 私は意識を失いそうになる最中、こいつは、澄まし顔で言った。


「勝ち筋を見せたら、私の狙いに簡単に引っかかってくれたわ」


 そう言うと、ピュッと、口から赤い液体が付いた植物の膜みたいなのを吐き出す。

 匂いからするに血だろう。

 そう言う事か、こいつは、ヴァンパイアだ。

 血を飲めば、一時的でも回復ができるんだ。

 口に血が入った膜を含んだのは、私を蹴った隙であろうか。

 

 にしても、もっとマシなやり方があったろ。

 わざと矢を首の付け根にあて、カウンターを狙うとか、脳筋すぎる。

 でも、不思議と負けた気分は悪くない....

 


「私が情を否定したのは....」


 私は、本当の自分に向き合う事にした。

 この女が、私自身と向き合える時間を与えてくれたからだ。


「きっと、また情を持つのが怖かったんだと思う」


 戦場で死んでいく仲間を見捨て、私がどう立ち回れば、勝てるのかを考えてきた。


「情を捨てた事で、仲間が死んでいく死に様もどうとでも思わなかった。そっちの方が幾分も楽だった。――私は嫌なものから逃げた弱者だったのかもしれない」


 やっと私の本当の気持ちに向き合えた。

 あぁ、私を助けてくれた仲間、私が見捨てた仲間にどうやって謝罪しよう。

 いや、きっと皆んながいる所にいけないな....


 そう考えてると、その女がしゃがみ込み、私に顔を近づけた。


「あなたもう動けそうにないだろ?動けたとしても、私にすぐ殺されるだけだ。よし、あなたを長の元へ連れて行く。処遇を決めるのは、私じゃないし」


「へぇ、あなた達の長が勝った確信でも?」


「負けた時は私達は自害する。あなた達の言いなりなど絶対嫌だからね」


 そう不敵な笑みを浮かべて言うと私の首根っこを掴まれ、引きずられヴァンパイアの長の元へと進み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。