第十二話 戦の準備
いつリザードマン達が攻めてくるか分からない。
故に、リザードマンの動き、強化武器の慣れ、罠張りを一気に進める必要があった。
万全に敵を迎え打つために、『五憲の守人』をどう扱うかを考えてみた。
まず、“ナギ“と”レイン“を偵察に行かせた。
ナギは、クールで、頼りになるが、レインが驚く程怖気ついていたのが以外であった。
レインが、嫌だ!こわ〜い!!罠張りを手伝うよぉ!!などほざいて居たので、なぜ五憲の守人になれたのか、疑問に抱くほどだ。
まぁ、この感じで甘やかすと、決戦当日でもやらかすと思うので、ここは厳し目に!と無理矢理偵察に行かせる。
”ラロット“は、長なので全体の大まかな指揮系統を任せた。
どうやら村の皆んなラロットを慕ってるようで、適任である。
ラロットも声を張り切り、指示を的確にこなしていたので、安心だ。
”アスナ“は、補助を頼んだ。
料理、元気付け、罠張りの手伝いなど。
サブカル的な立ち位置ではあるが、ここを抜けてもらうと円滑に作業が進まないので、大事な存在である。
”フィオナ“の武器は、長細い剣を扱い、力強いので、罠張りなどの力仕事を任せる。
わんぱくな性格で、何事にも張り切っていたので、作業が早く進みそうだ。
張り切りすぎて、たまに空回りしている所があるが、元気な子だと言う証明だろう。
フィオナが異常に俺に懐いているのが、少し困ってる....
ミュウは、資材を運び、俺の所へと持ってくる。
それを俺が罠に貼るための形に整えていく。
村の皆んなは、そんな俺達を見て、目を点にしていたのを覚えている。
あははは、そりゃそうだ、軽く引くよなぁ。
本来であれば、見ず知らずの違う種族が、いきなり来て統率を取っている状況な上、信じられない現象を目の当たりにするのはね。
ヘルシャースの魔物が厄介であった。
村には、魔物が無闇に襲ってくる事は無かったが、村の外へと出ると別で、狂ったように襲ってくる。
流石、この地で住んでいるヴァンパイアと言ったところか、襲ってきた魔物を数人で直ぐに沈めるが、これでは作業に遅れを取られたので、花を作業する辺りにばら撒いた。
それでも、襲ってくる魔物も居るが、九割ぐらい襲われるのを減らしたかな。
日が真上へと差し掛かった頃、朝から取ってきた魔物をアスナは全て捌き切り、料理として出してくれた。
中には歪で不味そうな魔物も取ってきたのだが、どれも上手く調理されている。
とんでもない魔物がいるヘルシャースで、作業も難航して進んでいる中、皆疲弊していたが、全ての疲労が取れたかのような顔を皆が見せてくれた。
まだナギとレインは、任務中ではあるが、帰ってきた時には、労わってやろう。
そして、俺の設計通りに罠を作り作業が八割型進んだ頃、夜になり作業を切り上げた。
そうして少し経つと、ナギとレインが帰ってきた。
レインがもうダメだと言いたげな、顔をしていた。
あぁ花持たせれば良かったな....すまん!レイン、ナギ。
すると、ナギが状況を報告してくれた。
どうやら、リザードマンの村に近付くにつれ、リザードマンの見張りが増えていき、困難を感じた為、リザードマンの見張りが本来居ない場所で、木の上で待機していると、背後から襲われたらしいのだ。
襲ってきたのは魔物では無く、リザードマンだったらしい。
その事から、リザードマンが俺らの村の周辺を偵察していた可能性が高く、罠の事も知られているかもしれないのだと言う。
そうだなぁ....リザードマンの見張りが居ない場所に、リザードマンが居た時点で、偵察された可能性が高いよなぁ。
これが、意味する事は、罠の完成をさせたくないリザードマンが、早期に攻めてくる可能性があるのだ。
いつ来ても良いように、準備しとくか。
レイン、ナギにご飯を食べて休むように、アスナが言うと温かいご飯が持ち運ばれて来た。
ちなみに、この地の魔物は食える魔物が限られており、昼ごはんを食べた俺らに、夜ご飯はないと言う事だ。
あぁ、クソ!改めて、日本人が当たり前とする三食がどれ程ありがたかったが思い知らされる。
皆、体を休ませる為に、木造建築である家に入っている。
一応、いつでも戦えるように準備しとけとは、忠告しておいたが、大丈夫かな?
寝ていて、戦いが始まった時、上手く動けるかどうかが心配だ。
俺が最後の罠確認をしようと、家から外へと出ると、レインが焚き火を見て、一人蹲っていた。
「どうしたんだ?」
俺がそう聞くと、顔を埋めた。
「びっくりしたでしょ?俺が五憲の守人で、あいつらと同じように肩を並べる立ち位置にいるって事」
レインは、自嘲するように微笑みを見せた。
「....」
掛ける言葉のない俺は、黙ってしまう。
ここで、掛けるべき言葉を瞬時に出せない俺は、国造りを俺が皆を引っ張っていけるのだろうか。
「俺ってさ、不甲斐なさのあまり、大好きな長に怒られてばっかりだったんだ。でも、ラロット達を見ると憧れて、必死に追い付こうと、がむしゃらに走っていた。その甲斐もあったのか、長に認められたんだ。だけど、こんな状況で、皆辛い筈なのに気持ちを切り替えて、前向きにやってんのに、俺だけは、気持ちを切り替えれない自分が居る。怖い事からは、逃げようとして、本当に不甲斐ないよなぁ」
震えた声で、涙を流し言った。
「気持ちが切り替えられないのは、人一倍、長の事が好きだったからじゃねぇか。この村の皆んなを薄情物とか言いたい訳じゃなくて、仕方がないって言う事。無理にその気持ちを変える必要はないさ」
「え?」
レインは俺に責められると思っていたのか、俺の返事に唖然としている。
「俺もさ、嫌な事は逃げてっばかりの人生送ってきたさ。無理なものを無理矢理こじ開けようとせず、自分の保身に走って、人生に妥協をしていたんだ。それで良いと思っていた」
「ユレンもそんな事が」
「でも、まぁ縁があって、人生やり直せるって時に、無理だと言われる事に挑戦してみたら、楽しくてさ。何の為に俺が生まれてきた意味も分かったし、お前らにも会えた。俺もそうだったが、レインは、嫌な事の後にある幸福を知れてないんだと思う。だから、俺は言う、嫌な事から逃げる人生に後悔だけが積もるって事をな」
「確かに、嫌な事から逃げると、俺の所には、幸福は降ってこない。ありがとう、俺の背中を押すような力をくれて。自分が自分であるように、嫌な現実から目を逸らす事をやめる。そしたら、俺の所にも幸福が降ってくるよな?」
「あぁ、当たり前だろ?」
そうして、グータッチを決めた。
澱んでいたレインの目は、すっかりと綺麗に透き通っていた。




