第十話 ある魔族
目を開けると、鋭い牙を紅い目を持った人?が目の前に居た。
あ、え?何だ?こいつら。
クッソ!縄で縛られていて動けない....
確か、作業していると、首筋に痛みが走ってそこから....
と言う事は、俺は連れ去られたと言うことか?
いや、食料として俺を捕獲したと考えた方が自然なのかもしれない。
....そうだ?ミュウは?ミュウがどこに?
「落ち着け。俺はお前に危害を加えるつもりはない」
紅色の髪を揺らし、鋭い眼光を俺に向けた。
「危害を加えるつもりはない?なら、この状況はどう説明する?」
「すまない。俺らの状況を偵察しにきた、敵魔族かと思い、誘拐してしまったらしい。すぐ解放する」
「ーッ!?」
正直、謝罪までされるとは思いもしなかった。
見た感じ、目に見えて分かるくらい痩せ細っている為、相当の飢餓状態にあるのだろう。
なのに、俺を食べないのはどう言う事だ?
食い物としてなるだろう。
「なぜ俺を無事で帰してくれるんだ?」
そう言うとフフッと、心外だなと言いたげ顔を向け微笑んだ。
そして、何かを噛み締めるかのように唇を噛んだ。
「俺らはあいつらみたいな非道な奴ではない....」
「はい、そうです。私達は必ず筋を通します。なので、あなたを食べたりなどしません」
そう言って、出てきたのは、ピンク色の長い髪の毛をした女の人であった。
いや、人では無いな、魔人であろう。
この魔人達は、一貫してある魔族を嫌っている。
先程の言っていた“敵魔族”の事か?
ヘルシャースにもこんな文明があったとは驚きだ。
「何があったんだ?」
飢餓状態なのは、どうも気になる。
ヘルシャースであるから、食糧難に陥りやすいとも言えるが、何か引っ掛かる。
俺の見た感じ、こいつらは高位の魔人だと見ている。
食糧難などに陥るものなのか?こうも酷く。
「別にお前に言っても、何も変わらない。それより、この件にお前は手を突っ込むな。お前の命が危険になるぞ」
顔を俯せ、何かを思い出したかのように、眉尻を下げた。
「攫ってきた奴に、命をも気にかけるのか。お前は悪い奴では無さそうだ。話してくれ、何があったかを」
「誰かに思いをぶち撒けたら、楽になると言うし、言うだけ言うか....」
そう言って、話し始めた。
敵の魔族とは、前までは仲良くやっていて、村ぐるみで絡んではいなかったが、長とその地位に近いもの達が絡んでいたと言う。
だが、ある夜、長同士、酒を飲み明かしていると、敵の魔族の長がこの村の長を殺したと言う。
敵魔族の長の付き添い人も殺し、俺も長の付き添いとしていたので、抵抗してみたが、ボロボロになって負けたそうだ。
そして、敵魔族の長は、自分の付き添い人がこちらの長によって殺されたので、あいつらを滅亡させると、デマを流し、敵の村ぐるみで、この村を破滅に追い込もうとしているらしい。
なぜ、このような行為に至ったかは、不明らしく怒りに満ちた顔をしていた。
「名前は?」
「俺のか....?ラロットだ」
「ラロットか....良い名前だ。相手の戦力は?」
「分からないが、今の状態では、万全な状態でも勝てるかどうかは分からない....」
「敵の魔族は、リザードマンです」
ピンク色の髪を持つ魔人が言った。
俺は、少なくともこの話が、嘘をついているようには見えなかった。
それに、こいつらは優しい魔族だとも見てるし、嘘は付かないと思う。
だから、俺はこいつらをある条件を付けて、助ける事にした。
「俺と主従契約を結んでくれ。そうしたら助けてやる」
主従契約――それは、違う種族に対し主従関係を結べるようにする事が出来るものだ。
つまり、配下に置くことが出来るというもの。
俺がそれを望んでいるのだから、目的は一つ。
国造りの為の戦力と国民を増やす事にある。
ラロットらは良い魔人そうだし、正直配下に欲しい。
「――え?」
「あぁ、もちろん!勝ってから結んで貰っても良い。だが、結んでくれるのなら、俺は絶対、この戦を勝たせて終わらしてやるどうだ?」
「どうしますか?ラロット」
しばらくラロットは眉を下げ、口をへの字に曲げていたが、決断を下した
「じゃ、そうしよう。頼む、俺らを勝たせてくれ」
「よし、契約成立だ」
そして、俺の初めての戦が始まりを迎えた。




