悲劇の根源
万里乃はいつの間にかシールドを張っていて、アークナーの女が撃ってきた銃弾は弾き飛ばされた。
「妹って……。けど今、妹は入院中じゃなかったのか?」
「そうよ!だから、妹がこの世界にいるはずが無いの。だけど、あれは間違いなく妹よ!」
冬牙は状況が理解できないまま、女の挙動を伺った。
その時、頭上からアークナーの女を目掛けて氷柱が降ってきた。女は余裕で避けると、必然的に冬牙達と距離ができた。
その場にいた全員が空を見上げると、そこには九聖衆のハンナと剣を肩に担いでいる、深い藍色の髪をした騎士の様な青年が空中に立っていた。
「久々のアークナー様様だな!」
騎士の様な青年は剣を構えると、空中から猛スピードでアークナーの女に切り掛かった。
女は剣の猛追を間一髪の所で避けながら、隙をついて銃を発砲した。
しかし、騎士の様な青年も銃弾を剣で受け止めながら更に剣技を繰り出し、炎を纏わせた剣でとうとう女の腕に切り傷を負わせた。
「今日こそ観念しろよ、アークナー!俺様がその頭ぶった斬ってやるからな!冥土の土産に名乗ってやる!俺様の名前は弘次!ヒーローを継ぐ男だ!」
弘次はそう言うと、再び炎を纏わせた剣で女を真っ二つに切り裂いた。
かに思えた。しかし、女は全くダメージを負っていなかった。
女は不敵な笑みを浮かべると、腕の傷をそっと撫でた。
すると、そこにあったはずの切り傷は綺麗に無くなっていた。
「おいおい、回復持ちかよ!ずりぃぞ!」
「弘次!駄洒落はいいから早く討伐するよ!」
頭上からハンナの声が降ってきた。
「駄洒落じゃねぇし!バカにするなよ!?」
「いいから、今は敵に集中しなさい!」
「それよりも馬鹿にした事早く謝れよ!このあばずれ!」
「はぁ!?誰があばずれよ!この厨二病!」
ハンナはカチンと来たのか、弘次と言い合いを始めた。
そんな状況の中、
「由香梨!」
万里乃が女にそう声をかけた。しかし、女は何も反応しなかった。
「由香梨……なんでしょう?私よ、あなたの姉の紗月よ!」
すると、突然アークナーの女は頭を抱えて唸り始めた。
「由香梨……!?」
万里乃は女に近づこうとしたが、冬牙がそれを制止した。
「ぐぁあぁぁああぁあああ!!」
女は持っていた銃を落とすと、その場で頭を揺さぶったり、悲鳴をあげたりして狂い始めた。
「なんだ?」
弘次は状況に気づき、ハンナも言いかけた言葉を噤んで女を見た。
アークナーの女は縋るように手を空間に伸ばすと、そこに人が1人通れるくらいの黒い穴が出来た。
「おい!待て!」
弘次はアークナーの女に斬りかかったが、間に合わず、女は黒い穴と共にその場から消えてしまった。
「くそ!また逃がしちまった!!」
弘次は悔しさで剣を地面に突き刺した。
「一体何があったのよ」
ハンナは万里乃にそう言うと、万里乃はアークナーの女が妹にそっくりで、名前を呼んだら突然狂い始めたと伝えた。
「どういう事なの?居ないはずの妹がこのゲームにいるなんて。もしかしてこの世界に取り残されている……?」
冬牙はそれを聞いて、あの時食事中に出会った男、スライザスを思い出した。
「その可能性は大いにあるかもしれないな」
冬牙はハンナにそういった。
「スライザス……でしょ?」
万里乃も思い出したようにそう言った。
「スライザス?そいつがどうしたの?」
「そいつに誘われたんだ。こっちの世界に来ないかって」
「なるほどね、そいつもアークナーの可能性があるわね。寧ろそいつが悲劇の根源かもしれない」
「しかもそいつは、俺の職業がウイルスだって事も知っていた」
「え?それはおかしいわ。あなたの事を知ってるのは少なくとも、あなたの連れや私達九聖衆と上層部くらいよ」
っと言うことは……。と、ハンナはある答えに辿り着いた。
「アークナーは九聖衆か上層部にいるってこと?」
それを聞いて、その場にいる全員が凍りついた。




