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『金運』の勇者~お金を稼ぐだけの外れスキルは、どうやら買った人を覚醒させるらしい~  作者: キノコのほうし
1章 獣人の少女

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第7話 獣人の少女、またの名を——

 そうだ、ギルドに行こう!


 冒険者ギルド——それは街の人たちから依頼を募り、ギルドに登録されている冒険者と呼ばれる人たちに、その依頼を斡旋する組織のことである。


 まぁ、単発バイトや日雇いの派遣のようなものだな。


 それらと同じように、冒険者の仕事は多岐にわたり、国周辺の魔物討伐やダンジョンの攻略、武具制作、食材調達、掃除、治安維持活動など依頼の数だけ仕事がある。


 自分が得意とする依頼を引き受け、お金を稼げることから、とても人気の高い職業だ。


 事実上の雇用主がいないことも、人気の理由の1つと言えるだろう。


 しかし、その性質ゆえ荒事に巻き込まれることが多々ある。


 ギルド発足時は、実力を見誤った冒険者が多く、死者もいたとか。


 それを受けてギルドは、鑑定魔法を応用し、基本的な身体機能を数値化して実力を測るステータスを開発した。


 そして俺は少女のステータスを見るため、2人で冒険者ギルドへと訪れていた。


「お次の方、どうぞー」


 列が進み俺たちの番がやってきた。


「はい、今日はどうなさいましたか?」


「えっと、この子の冒険者登録をしたいんですけど」


 俺は横にいる少女のことを手で示す。


「冒険者登録ですね。では、こちらの石板にお連れ様の必要事項の記入をお願いします。書き終わりましたら、三番の窓口に提出してください。ご記入の際は、あちらの席をご利用くださいませ」


「わかりました、ありがとうございます」


 俺は受付のお姉さんから、薄い石板と棒を受け取って席へと向かった。


 意外とすんなり行けたな。


 勇者の証を外してきたとはいえ、ギルドにはダンジョン攻略をサボってる件で目を付けられているから、受付で捕まることも覚悟していたんだが。


 まぁ願ったり叶ったりだ。


 えーと、それで何を書けばいいんだ?


 俺は石板に視線を落とした。


 見てみると、そこそこ記入項目があった。


 ------------------

 名前:


 年齢:


 種族:


 性別:


 流派:


 魔法適正:


 身元保証人:


 *15歳未満の方は身元保証人の同意を得る必要があります。


 ------------------


 記入事項はざっとこんなところか。


 しかし、初っ端から難易度の高いものが来たな。


 名前...後回しにしていてまだ考えてないんだよな。


「ちょいちょい」


 俺はそう言って、服をパタパタとさせている少女の肩をつついた。


 布一枚の巻頭衣では外に出せないので、俺の服を改造して作ったワンピース(笑)だ。


「...っ! は、はい」


 少女は少し体をビクリと震わせて答えた。


「名前を書かないといけないんだけど...どんな名前がいいとかある?」


 少女は『う~ん...』と頭をひねって考えている。


 一口に名前と言っても、この世界に公的なものは存在しない。


 公的な名前を持っているのは貴族や大商人のような、ある程度の身分がある者だけだ。


 日本と違って戸籍や住民票がないため、ギルドや銀行など、登録する場所によって名前を使い分けていて、複数の名前があるなんて人もザラにいる。


 契約の魔方陣があるので、特に名前にこだわる必要はないのだと俺が冒険者登録するときに教えてもらった。


 だから、別に適当に名前を付けてしまってもいいのだが、一度登録すると変更ができないため、変な名前を付けると後悔することになる。


 今後、冒険者として活動していくことも考慮するなら、真剣に考えた方がいいだろう。


「わ、わたしは...主様につけてほしい...です」


「え、俺?」


「主様のつけた...なまえが...いいです」


「そうだなぁ...」


 いやぁ、困ったな。


 俺はこういう名づけが死ぬほど苦手なんだが。


 とはいえ、遠慮しがちなこの子が、自分から要求してきたんだ。


 できる限り断りたくはない。


「う~ん......」


 猫、ネコ、ネコ耳...茶髪...ストレート...パワー系...なんか連想ゲームみたいになってきたな。


 ミオ、スズ、コハク、シロ、どれもパッとしない。


 ていうか、全部ペットの名前みたいなだな。


 もっと自然で、冒険者にいても不思議じゃない名前にしたい。


 強い感じの。


 強さは力、力...チカラ...チカ...あ、チカでいいんじゃないか?


 なんかそれっぽいし。


 いやいや、さすがに安直すぎるか?


 でも、本当に何も思いつかないしなぁ。


 まぁいいか。


 たかが冒険者名だし、何も普段からこの名前を使うこともないだろう。


 俺だって登録してある冒険者名なんて名乗ったこと一度もないし。


「チカ...なんてのはどうだ...?」


「…ちか。ちか...ちか...ちか」


 チカは俺が言った名前を何度も繰り返す。


「えへへぇ...ちか...ちか」


 気に入ったのか、笑みがこぼれている。


 そうだよ、本人が満足ならそれでいいじゃないか。


 由来なんて些細なこと。


 うん、そう、絶対そうだから。


「気に入ったか?」


「はいっ! ありがとう...ございますっ」


 チカが目を輝かせて答えた。


 やめてくれぇ。


 そんな純粋な目を俺に向けるんじゃない。


「お、おう。それはよかった」


 俺はそう言うと、逃げるように石板へ視線を落とした。


 名前が決まってしまえば、あとの項目を埋めるのは簡単だった。


 俺が記入している間もずっと隣で『ちか...ちか...ちか...うぇへへぇ』と聞こえて俺の罪悪感を刺激したが、気にしたら負けだ。


 チカの由来については墓場まで持っていこう。


「よしっ、じゃあ窓口に行くぞ...チカ」


「はいっ!」


 ***


「すみません、これお願いします」


 そう言って俺は、石板を窓口に提出した。


 ------------------

 名前:チカ


 年齢:11


 種族:獣人


 性別:女


 流派:なし


 魔法適正:なし


 身元保証人:サイジョウ・カズキ


 *15歳未満の方は身元保証人の同意を得る必要があります。


 ------------------


「えーと、チカ...さんの登録ですね。年齢は11歳ですか。身元保証人のサイジョウ様というのは...?」


「あ、俺のことです」


「サイジョウ...カズキ...。はぁ...わかりました」


 うん、よくある名前だからね。


 どこかの『金運』の勇者とは違う人だよ...?


「あと、ステータスの鑑定をお願いします。まだ子供なので、どんな力があるのか知りたくて...」


「はい、ステータスですね。準備しますので少々お待ちください」


 ギルドに登録する人の中には、自分のステータスを測りたいだけの奴もいるくらいだ。


 こういった、要求は慣れっこだろう。


 少しすると、窓口のお姉さんはザ・水晶って感じのを持ってきた。


 ハンドボールくらいのサイズ感の水晶をカウンターに置いた。


「では、こちらに手をかざしてください」


 お姉さんがチカを見ながら言うと、チカは恐る恐る手を伸ばして水晶に触れた。


 そして、鑑定結果がホログラムのように俺たちの前へ映し出される。


 -----------------------------


 名前:チカ

 年齢:11

 称号:『金運』勇者の眷属

 加護:金運

 体力:300(加護+3000)

 魔力:20(加護+400)

 筋力:50(加護+4700)

 速力:70(加護+3500)

 防御:20(加護+3200)

 器用:100(加護+3000)


 -----------------------------


「はっ...?」


 なんじゃ、このバケモノみたいなステータスは。


「えっ...」


 お姉さんもチカのステータスをみて驚いて——


「勇者...?」


 あ、このステータス...俺の正体まるわかりじゃん。



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