第10話 帰宅
ギルドで俺がチカを頼ると決めた後、少し話をしてすぐにお開きになった。
俺もチカも冷静ではなかったし、具体的な計画についてはまた後日相談しようということになった。
今日はとりあえず、ダンジョンを攻略することが決まっただけで十分だとガルファルドは言ってくれた。
停滞を感じた俺にとってその言葉は、着実に前進していると認めてもらえたようで嬉しかった。
誰かに頼ることができるってだけで、ずいぶんと気が楽になるものだ。
そうして、ギルドを後にした俺とチカは夕日に赤く染まる空の下、2人で並んで家へと向かっていた。
***
「...」
「...」
うーん...気まずい...。
思い返すと、ギルドで俺は相当恥ずかしいことを言っていた気がする。
——俺は...チカを家族だと思っている。だから、責任をもって一生をかけて幸せにするつもりだ
——チカ、俺のこと...助けてくれるか?
うっぐぅ...。
冷静になるとキツイ...。
でも、何か話さなくては。
「あ、あぁ...あのなぁ! チカ...」
「は、はいっ!」
「お、お腹空かないか?」
俺はふと目についた、露店を指差して言った。
「た、たべたい...です!」
「よしっ、行くか」
「はいっ!」
***
「すみません、これ2つお願いします」
「はい、ツメルバンザのアイザル焼き2つね。2ゲルゼだよ」
俺はお金を渡すと、ナントカ焼きを受け取った。
テキトウに目に入った露店のものを買ったので何かわからない。
というか俺は基本的に外でご飯を食べることがないので、この世界の料理について詳しくないのだ。
見た目は祭りとかで買う、イカ焼きに近いだろうか。
楕円形のぶよぶよとした肉?が棒に刺さっていて、横にシマシマの焼き目がついてる。
ただ、匂いが独特でかなり生臭い...。
「はい、これチカの分ね」
俺がイカ焼きのようなものを渡すとチカは目を輝かせて受け取った。
「あ、ありがとうございますっ!」
するとチカは受け取るとすぐに、かじりついた。
「ど、どう? 美味しい...?」
「ふぁいっ! おいひぃです!」
チカは口いっぱいに頬張りながら答えた。
お、美味しいのかこれ...。
いや、見た目はイカ焼きっぽいし美味しそうではあるんだけど...。
いかんせん、匂いが...。
「い、いただきます...」
かぶりつくと、肉汁があふれ出てきた。
う、うまい...。
「はふっ、はふっ」
これ、イカっぽいと思ったけど豚肉とかそっち系だな。
それと、中に米...いや、麦が入っていてめちゃくちゃ美味しい。
異世界版の肉巻きだ...。
ただ、肉を巻いているというよりは、中をくりぬいて米を詰めてるって感じでイカ飯を肉で作ったみたな料理だ。
「美味しいなこれ」
——コクコク
もはやチカは俺の問いかけに答えることもなく、一心不乱にかぶりついている。
しかし、このサイズが2本で2ゲルゼとは安い。
1ゲルゼが100円くらいなので、1本100円...。
日本の屋台にも見習ってほしいくらいの、良心的な値段設定だ。
「これなら、外で食べてもいいかな」
今までは異世界のご飯なんて基本マズいだろうと思っていた。
現代日本で過ごした俺が異世界の食に満足なんてできるわけないと思っていた。
しかし、こんなに安くて美味しいとは...。
異世界も捨てたものではないな。
「ごくっ...でも...わたしは、あるじさまのごはん...がすきです」
たくっ...こいつは本当に...。
「あははっ、ありがとう」
俺はそう言って、チカの頭をグリグリしてやった。
今日の晩御飯にはデザートに、チカの好きなフルーツタルトでも焼いてやろう。
最近はチカもいっぱい食べるようになってきた。
女の子とはいえ成長期だろう。
たくさん食べて大きくなってもらいたい。
「じゃ、買い物して帰るか」
「...はいっ、あるじさまっ!」
すると、チカが俺の手を握ってきた。
俺はその手を握り返す。
そして、俺たちは親子のように仲良く手をつないで家に帰ったのだった。
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