U.19「盾、融合。」
ゼプシオンは歯を食いしばった。
(……くそ……ここまでかよ……)
ヘビーの《グリル・ターンオーバー》が赤い渦となって迫る。
水中とは思えないほどの熱量と回転速度。
ゼプシオンの青紫の装甲はすでに限界だった。
腕は痺れ、脚は動かない。
胸部コアの出力は落ち、腕の赤いエネルギーラインがちらつく。
(……終わりだ……)
その瞬間だった。
ゼプシオンの持っていた盾が、
かすかに震えた。
淡い光が盾の表面を走り、
古代文明特有の白銀の輝きが空間に広がる。
「……え?」
盾はふっと軽くなり、ゼプシオンの腕から離れた。
だが落ちることはなく、ゼプシオンの胸部コアの前へと滑るように移動する。
まるで——
ゼプシオンの“中心”へ戻ろうとしているかのように。
次の瞬間。
ガギイイイイインッッ!!
盾が眩い光を放ち、
ヘビーの回転突進を真正面から受け止めた。
衝撃で海底が揺れ、
水流が爆発のように広がる。
ヘビーの回転が止まった。
イーコが叫ぶ。
「盾が……ゼプシオンの前に……!」
テコイレィは震える声で呟く。
「違う……あれは“自律防御”……
古代技術の盾が、持ち主の危機に反応して……!」
だが次の瞬間、
盾はゼプシオンの胸部コアへ向けてゆっくりと沈み込んだ。
「……えっ……!?」
白銀の盾が、青紫の装甲に触れた瞬間——
光が爆ぜた。
ゼプシオンの胸部コアが緑光を放ち、
盾の光と混ざり合う。
装甲の内部で、何かが“接続”される感覚。
胸部コアの出力が跳ね上がり、腕の赤いエネルギーラインが鮮烈に輝く。
イーコが叫ぶ。
「ゼプシオン!
盾が……君の装甲と……融合してる!」
テコイレィは目を見開いた。
「古代文明の防具……
持ち主の生命反応と装甲システムを読み取り……
“融合形態”へ移行してる……!」
ゼプシオンは胸部に手を当てた。
そこにはもう盾はない。
だが、胸部コアの奥で、盾の鼓動が感じられた。
(……お前……俺の中に……)
装甲全体が光を帯び、
青紫の表面に白銀の紋様が浮かび上がる。
腕の赤い文字が、盾の古代文字と同じ形へ変化していく。
ヘビーが低く唸る。
「……なるほど。
それが……その盾の“真価”か」
ゼプシオンはゆっくりと立ち上がった。
胸部コアが力強く脈動し、
装甲の出力が完全に回復していく。
いや——
回復どころではない。
(……身体が……軽い……!
力が……溢れてくる……!)
水中の抵抗が消え、
ゼプシオンの身体はまるで空気中にいるように動く。
イーコが叫ぶ。
「ゼプシオン!
装甲の出力が……跳ね上がってる!」
テコイレィは震える声で続ける。
「盾の“適応機能”……
持ち主の装甲と完全に統合されて……
新しい戦闘形態を構築してる……!」
ゼプシオンは拳を握った。
青紫の装甲が光り、脈動し、
腕の赤い文字が古代文字として輝く。
(……これが……俺と盾の力……)
ヘビーが吠える。
「来い、発掘物ァッ!!
融合したところで……俺の力は止められん!」
ゼプシオンは一歩踏み込んだ。
水流が裂ける。
装甲が光を放ち、
胸部コアが推進力を生み出す。
「行くぞ……ヘビー」
ゼプシオンの声は、
以前よりも深く、力強かった。
融合した盾が、静かに脈動した。
まるで——
「共に戦う」と言っているように。




