#44:異変の原因なのー
年内に第2章終わらせようかなと思ったので+α投稿しました。
次話で第2章最終話です。
扉を開けると巨大な生き物がいた。しかし、その姿はタコでもクラゲでもなかった。あれは巨大なイカであった。
「予想が外れましたね」
「ええ、まさかどちらでもないなんて」
「そんなのずるーい!」
冷静に目の前のイカを見ているフィーシャとサリーに対して、メアリーはずるいと怒り剣を投げた。どうやら自動的に『ブーメランソード』が発動してしまったようで、あっけなく倒れた。全く戦闘という戦闘をしないで俺たちは地下50階までたどりついてしまった。そもそもこのダンジョンは魔王が魔剣を手に入れるための試練みたいなものでもある。だから余り手ごたえがない。
地下60階を下ったあたりだろうか。俺たちが異変に気づいたのは。
「なんか、魔物の数が少なくないか?」
「確かに、まともな魔物に当たっていません」
「ここまでいないと逆に不気味ですね」
魔物の数が地下59階までとは違いかなり少なくなっている。個々の魔物の強さは当然強くなっているんだけど、これだと総合的な魔物の強さは下がっているような気がする。
「何か強い魔物が食い散らかしたのでしょうか?」
「それとも人為的なものなのでしょうか」
「ご主人様、油断しないでください」
フィーシャの強い魔物がいるという意見も、サリーの誰かの仕業いう意見も両方考えられる。ただこのダンジョンはあまり奥深くまで潜る人はいない。後者であればかなり気を付けないといけないだろう。
「それにしてもこんな作戦でいいのかー?」
「ええ……こうすればレベルが大して上がらないうちにくるでしょー?魔剣の封印を解いた時にアルと私が奪うのー」
「なるほど、やっぱリアは天才だなー」
アルとリア。魔物が少ないのはこの2人の仕業である。一見ただの村の子供にも見える彼らだが、考えている作戦はかなりすさまじいものだ。このダンジョンは魔王が魔剣を取るだけではなくレベル上げとしても使われている。地下深くの魔物はたくさんの経験値を得ることが出来る。それを考え2人で地下60階より下の魔物をほとんど刈ってしまったのだ。レベルが上がりきる前に最下層にたどり着かせて魔剣の封印を解いた瞬間に奪う。これがリアの作戦だった。魔王さえ殺せば、ティファリナ帝国とシャレスト王国は全面戦争を仕掛ける。これを見越した彼らは帝国に攻めるのではなく、魔王を直接殺し、魔剣を手に入れようと目論んでいたのだ。
「だけどよー本当に勝てるのかー?」
「私の考えた作戦は完璧なのー。後は実力行使なのー」
「まぁ相手は強いんだな⁉楽しみにしてるぜ、魔王!」
アルは気合を入れた。打倒魔王を目指した2人組の作戦はこれから始まるのである。
「アルは気合入ると口調変わるよねー」
「雰囲気ぶち壊すなー」
ただまだ内面はちょっと幼いアルとリアのお話でした。
「ヒカル様そろそろ気合引き締めていきましょう」
「そうですね、いざと言う時は勇者様にお任せします」
「ご主人様がいれば百人力だからね」
結局俺任せか。ただ、今回に至ってはその方がいいだろう。ここまでの異変を察知すると特訓どころではないからな。
「次が地下100階だ。準備は良いか?」
3人とも準備は万端のようだ。途中の階で原因が分からなかった。言い換えればまだその原因を見ていないということだろう。つまり地下100階に何かがある。
地下100に来たのだが、この階層には魔物がいない。祭壇までの一本道を歩いた。とりあえず、今は魔剣を取ることを最優先にしよう。
「これが魔剣ですか?」
「おそらくはそうでしょう」
「ご主人様、その剣に魔力を込めて引き上げるとオリビアさんが言ってました」
この剣に手を当てて魔力を流し込めばいいのか。よく分からないけど、とりあえず力を込めて剣を抜けばいいのだろうか。
〖それでイイ。多分すぐニ〗
「あ、抜けましたね」
フィーシャがそう言ったので、右手を見ると黒い剣を掴んでいた。え?意外とあっさり魔剣手に入れられたんだけど。何かもう少し手順踏んだりするものだと思ってたんだけど。
「それじゃあ帰りましょうか」
「逃がさないぞ魔王!」
「今日が貴方の命日なのー」
突然2人が現れた。こいつら、見た目は村人っぽいけどただの村人、それも子供がこんな所にいるわけがない。
「俺の名前はアルだ。その魔剣と命は頂いていくぞー」
「リア、憎きこの世界を変えるために覚悟するのー」
何か凄い締まらないんだけど。その語尾伸ばすの何なの?そんなことはどうでもいいとして……憎き世界とはどういうことだ?
「覚悟しろー」
「え?」
アルという少年は見た目に反して巨大な斧を振り回してきた。それをメアリーが剣を使いぎりぎりで防いだ。しかしこれは驚いたな。メアリーは俺の【ステータス神化】の影響でかなり力は上がっているはずなんだが、それでも防いでいるので精一杯なように見える。
「空から舞い降りた美しい結晶よ、汝の凍えたその手で触れた全てのものを、春に舞う花びらすらも凍りつかせ!『氷結風花』!」
「来る!」
これはまずいな。おそらく最上級魔法だろう。辺り一帯に花が散る風のごとく吹雪を吹かせる技だ。予想以上に相手が悪い。これは俺も参加せざるを得ないな。
「待ってください、私たちだけで戦わせてください」
「サリー?いくら何でもそれは……」
サリーが突然とんでもないことを言い出した。正直あの魔法を見た後だとそんなことは許可できない。フィーシャもメアリーもそう考えているのだと思った。
「私たちは強くなりたいんです」
「だから手出しはしないでください」
しかし、俺の予想とは違いあくまで3人とも彼女たちの力のみで勝ちたいらしい。
「分かった。だけど危険だと思ったらすぐに助けるからな」
「お話は終わったのー?」
「じゃあ再開するのー」
「俺の斧は止められないのー!」
「重い……きゃあっ」
メアリーがアルとの押し合いに負けて吹き飛ばされた。慌てて俺はそれを受け止めた。メアリー1人でアルと、フィーシャとサリーの2人でリアと戦っている。その分当然メアリーの負担は重い。さらにリアの使う氷魔法はメアリーたちのところまで被弾している。しかし、アルは火属性のスキルを使うことでリアの魔法が当たらないようにしていた。
「そろそろ本気で行くとするのー。身体を強化し更なる力を蓄えたまえ『パワーレイズ』」
〖まずいですね、マスター。更にあの少年の力が上がっています。メアリーさんだとそろそろきついのでは?〗
いや彼女は彼女たちだけの力を使って戦いたいと言った。まだ俺が出るべき時ではない。そう思っているとメアリーがバランスを崩してしまった。俺が助けに行こうとした瞬間それが見えた。
「これで終わりだ……っち」
「簡単に終わらせませんよ」
フィーシャの放った矢だ。それをアルはぎりぎりの所で躱した。ダメージを与えることは出来なかったものの、その間にメアリーは距離を取ることが出来た。
死ぬかと思った。1vs1で戦っている間、何度も死にかけた。それでも、今フィーシャが助けてくれた。相手に力で勝つのは難しい。遠距離で確実に仕留める。でも、魔法が使えないと……けど、今そんなこと言っている場合なのかな。ご主人様に頼る、いつまでもそんなんじゃ強くなれない。サリーちゃんだってフィーシャだって強くなっている。私だって。
「覚悟するのー『大炎斧』」
「『水流波』」
私、メアリーの意識はそこで途切れた。
メアリーが魔法を使った?今まで魔法を使えなかった彼女が土壇場で魔法を使った。それにその瞬間だけ持ち前の白い髪は紺色に、肌は褐色に変わったような気がした。そして、魔法を放って倒れてしまった彼女を見るとその容姿は元に戻っていた。
アル:「第2章ももう終わりだぞー!」
ノア:「そもそも私たち少ししか出てないのー。アピールしないともっと出れなくなるのー」
アル:「それはまずい……じゃあ俺の趣味は戦闘で、得意な戦い方は……」
ノア:「次回#44:これから なのー」
アル:「ちょ、最後まで喋らせ……」




