#37:ウィシュト王国
ウィシュト王国に偵察に行っていた2人組の話です。
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今月、私用で忙しいため更新が滞る可能性があります。その場合は活動報告にてお知らせします。
俺は、メアリーと街の外れに来ていた。メアリーに実践での経験を積ませるためだ。ついでにある程度のお金を稼いでおこうと思いギルドに向かった。ギルドカードは何処の国で作っても認められるようだ。彼女が1人でも、お金を稼いだり出来るようにとギルドカードを作っておいた。ステータスは多少いじった状態で登録させておいた。奴隷は勝手にギルドカードを作るのは禁止されているのだが、メアリーは連れてきた翌日にオリビアが解放しておいてくれた。
故に俺がついてくる必要はないのだが、ギルドには良からぬ輩がいたりする。だからついてきたというのが主な理由だ。本来ならば魔王は政治を行ったりしなければならないらしいのだが、あいにく俺にそんな面倒ごとは向かない。こうやって冒険している方が楽しい。
オリビアには後で何かお礼をしてやらないとな。
「ここらへんでいいだろう」
「分かりました」
ここら辺に魔物がいるらしいので待ってみると兎のような可愛らしい魔物、ラビットが出てきた。俺はステータスを鑑定する。うん、1匹ならメアリーでも問題なく倒せそうだ。けれど、油断は禁物だ。俺は気合をいれる為に強敵だと思わせる声で叫んだ。
「メアリー、警戒しろ!」
「はい!」
メアリーは剣を構えた。ラビットが襲ってくるが、『抜刀』でそのまま敵を斬り裂いた。彼女は特に苦戦を強いられているという訳でもなく、現れる魔物を次々と斬っていった。
ラビットだけではなく、ゴブリンやコボルド、バット、ボアなど色々な種類のモンスターがいた。どれも雑魚モンスターではあるものの囲まれると少し面倒くさい。一日でかなりの数を刈っただろう。
スキルも幾つか覚えたらしい。風属性スキル『風刃』を手に入れていた。鑑定で見てみると魔法の欄にもいくつか増えていた。風属性魔法『風壁』、『暴風』、氷属性魔法『アイスボール』、『氷塊』を覚えていた。
彼女にそのことを伝えてみたものの、やはり魔法は発動しない。魔法を使えるようにするという目標は達成出来なかったものの、強くなることは出来ただろう。
「おかえりなさい、それでどうでしたか?」
城に戻ると雑務をこなしていたオリビアが手を止めて、俺たちに聞いた。強くなることは出来たが、魔法は使えなかったということを言うと、やはりという顔をした。オリビアはある程度この結果を予想していたようだ。
「何かきっかけがないと駄目なのではないでしょうか」
「私、しばらくの間は1人で特訓します」
メアリーがはっきりとそう言った。彼女は俺たちに迷惑をかけたくないらしい。別にそのくらいどうってことはないけれど、ここは彼女の意思を尊重してあげるべきだろう。俺たちはその提案を受け入れた。
「オリビア、それで国政のほうはどうだ?」
別に政治にそこまで興味があるわけでもないが、最低限の生活を送ってほしいとは思っている。しかし、オリビアの話を聞いている限り、一応ちゃんと政治は行われているらしい。
「魔王様、今はこの国も平和が訪れています。しかし、いずれ人間族は戦いを仕掛けてくるでしょう」
何だって?仕掛けてくる?確かにあの王族は怪しい雰囲気を醸し出してはいたけれども。
「いずれ、聖なる勇者が魔王様を討伐しに来るでしょう。その勇者さえ倒せば、魔王様は倒される可能性はかなり低くなります」
「えっと、俺が」
「そのためには、まず魔剣を手に入れておいた方がいいと思います」
俺が聖なる勇者でもあると言おうとしたが踏みとどまった。本当に言っていいものかどうか分からない。下手したら俺を殺そうとする可能性だってある。
「私の顔に何かついていますか?」
オリビアが頬を赤らめて、恥ずかしそうに俺に聞いてきた。考え込んでいる間俺はずっと、オリビアは俺に見つめられていると思ったらしい。
「えっと、なんでもないよ。少し考え事をしてただけだから」
「本当ですか?」
珍しくオリビアが俺に疑いの目を向けてきた。どうやって誤魔化せばいいだろうか。まさか俺が聖なる勇者だなんて口が裂けても言えない。
「あまり、じっと見つめないでくださいね。とても恥ずかしいので」
「お、おう」
オリビアはすぐに疑いの眼をやめて、再び頬を赤らめた。
「私だって、ご主人様にもっと見てほしい……」
先程までずっと黙っていたメアリーが頬を膨らませていた。何やら小言で呟いているようだが、何を言っているのかは聞こえなかった。
しばらくすると部屋の扉をノックする音が聞こえた。ノックした後部屋に入ってきたのは、デマイルとエステルだ。バンゲルに仕えていた騎士たちの大半は別の貴族の元で働いていた。デマイルとエステルはオリビアにその力を買われ、魔王直属の騎士に任命されたらしい。
「魔王様、エステルと俺が行ってきた調査について話させてもらおう」
デマイルとエステルはシャレスト王国よりも北にある、ウィシュト王国という国を調査していたらしい。ウィシュト王国って確か、伊藤が行くとか言ってた所だったかな。
「流石に城の中まで調査は出来ませんでしたが、城下町を中心に調査してまいりました」
「特に異常なしだったぞ!」
本来の目的と大分かけ離れてないか?オリビアも、コイツは一体何をしに行ったのかと顔をしかめていた。
「そういえば、嬢ちゃん。メイドに呼んできてほしいって頼まれたんだが」
デマイルはメアリーに話しかけた。メアリーは何やら思い当たる節があったようで、部屋を出て行った。
「あなたたちは遊んできたのですか?」
オリビアが呆れながら言った。心なしかオリビアが怒っているように見える。気のせいだよな。デマイルは特に気にしていない様子だったが、隣にいるエステルは時々顔が引きつっていた。
「そういえば、やけに城の警備が固められていたな」
デマイルのへらへらとした様子に呆れたエステルが溜め息を吐いた。
「これはデマイル様が街中で模擬戦をして1人楽しんでいるときに調査した情報です」
「ちょっ」
デマイルが珍しく焦った顔をしていた。彼の態度からしてさぼっていたのは恐らく本当だろう。
後でオリビアにたっぷり叱られるのかな。オリビアは怒らせると怖いからな。ご愁傷さまです。
オリビアが促すと、エステルは話を続けた。ウィシュト王国は何やら不穏な空気が流れていた。人々は騎士を見ると恐れ、騎士たちは常に目を光らせながら、街を巡回していたらしい。デマイルは何も気づかなかったが、エステルは街に着いてすぐに気づいた。
酒場にいた冒険者の話によると王族で何やらトラブルがあったらしい。1年くらい前からいきなり今の感じになったらしいのだが、王族は何も発表しないので、人々はやたらと威張っている騎士たちに怯えるばかりという生活らしい。
「私が手に入れた情報はここまでです。私の勘違いと言う可能性もありますが、先の冒険者も感じているので恐らく何かあったのではないかと推測できます」
「そうですね、王族が何かを隠しているのは間違いないそうですね」
エステルとオリビアは王族の間で何かしらのトラブルがあったと考えているようだ。しかし、直接関わることはなさそうなので一旦この話は置いておくこととなった。話が終わるとデマイルとエステルは部屋から出て行った。これからまた部下たちを鍛えてくるそうだ。
オリビアと2人きりになり、部屋は静寂に包まれた。オリビアは先程まで座っていた席からソファに移動すると手招きした。オリビアの隣に座ると突然、肩を俺に預けてきた。どうかしたのだろうかと思いオリビアの方を見ると、彼女はすでに寝てしまっていた。疲れたのだろうか、それにしても。
気づいたら一緒に寝てしまっていたらしい。俺とオリビアは戻ってきたメアリーに起こされた。その時のメアリーは大分怒っていたらしいけど、寝ぼけていた俺はよく分からなかった。
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