#28:西条さんの決意
第28話目です。
今回はバトル回です!
10階層に降りると、それまでの入り組んでいる地形とは違って、かなり開けた場所だった。そして目の前には大きな扉がある。しかし、このボスはさほど強くないだろう。だから魔法で瞬殺して終わらせると思っていたのだが……
「光君!今回のボス、私が1人で戦ってもいいかな?」
西条さんが突然そう言った。別に誰かが……まあ、美涼あたりが魔法で一撃で倒すだろうと思っていたから別にいいんだけど……
「西条さんはどうして、1人で戦おうと思ったんですか?」
普段あまり喋らない小林さんが、西条さんに聞いた。たしかにゴブリンキングとかと比べると弱いだろうが、西条さんは俺の恩恵を受けている時間が短い。そのため、安全に勝てるとは思わない。まぁ、理由次第かなぁ……
――
10階層のボス部屋を前にして、私は皆に1人で討伐させてほしいと言った。もともと光君……ルー君と一緒に旅をしていた4人は恩恵を受けていて強かった。さらに小林さんもゴブリンたちとの戦いの中で、隠された職業が使えるようになった。同じEランクだと思っていた小林さんに負けた。この中で一番弱いのも私、しかも目に見えて弱い。結局ルー君の隣にいたいと思っていても、私はいつかこのパーティから追い出されるかもしれない。ルー君は優しいから絶対にそんなことは言わない……分かってはいるけど。そう考えていると弱い自分が嫌になってくる。だから、私は強くなりたい。
「そっか、なら私は止めません。西条さん応援してますよ」
「ありがとう、琴葉ちゃん……」
「西条さん、頑張ってね!」
「うん!あと……光君、この勝負が終わったら一つだけお願いしてもいい?」
「いいよ」
今、踏み出すんだ!強くなるために、見ててねルー君!
私は目の前にそびえ立つ大きな扉を開いた。モンスターがいる。あれは……コボルドジェネラル……クローディアさんが、倒していたあの魔物ね……
「佐倉さん、川村さん。いざとなったらお願いしますね!」
「ええ」
「分かりました!」
剣を抜いて構える。コボルドジェネラルは様子を見ているのか、動こうとはしない。周りにはコボルトたちがいる。街を防衛した時には見なかった、ソードコボルドに、コボルドアーチャー……それにあれは、マジックコボルドかな?
ソードコボルドの3体が一斉に私に襲ってきた。真ん中のコボルドに狙いを定めて剣で切り裂こうとしたけど……
「くっ」
「キキィ」
コボルドソードのもつ盾によって防がれてしまった。まずい、私は盾に力を更に加えて、その反動で後ろに下がった。間一髪で他の2体の攻撃を避けることに成功した。
盾が邪魔で攻撃が当たらない……もう一回今度は角度を変えて斬らなければ斬れない。敵は左手に盾を持っている……つまりコチラから見れば、一番左のゴブリンを左から高速で斬ればいい、そこには盾がない!
私は一番左にいたゴブリンを左から刺した。盾があるだけで、これだけしんどいとは思ってなかったなー。
「もう一度……!」
矢?一体何が?私は何故か一歩下がった。寒気がして、直感がいったん下がれとでも言ったかのようにも思えた。すると、目の前のコボルドソードを見た。するとそのコボルドソードは矢が刺さって倒れた。まさか……私がコボルドたちの方を見ると、コボルドアーチャーのうちの一体がコチラにめがけて矢を放ってきた。
まただ、矢が見える……えっ。今度は剣が後ろから迫ってくる感覚がした。私はとっさにその剣を剣で防いだ。カキンという音がしてみると、そこに本当にその位置に剣があった。
ここだ!
私はそしてコボルドソードの持つ盾の範囲を少しそらして、斬った。コボルドジェネラルが叫んだその瞬間、コボルドたちから矢や魔法が飛んできた。さらに槍やこん棒を持ったゴブリンも襲い掛かってきた。
嘘……スキルを使っていないのに、3本の矢全てを弾けるなんて。今は考えても仕方ない。ファイヤーボールが来る!しまった……
『風刃』
ファイヤーボールへの反応が少し遅れて私は少し喰らってしまった。そして『風刃』を放ったけど、態勢が崩れていたせいで、微かにしか当たらなかった。それでもダメージをかなり与えられている。これなら……って再生した!?まさか……コボルドたちのほうを見るとコボルドジェネラルの後ろに2体のコボルドヒーラーがいた。ヒーラーを先に倒すか、一撃で倒さないと回復される……まずは数を減らす!
私だって負けられない戦いはある。このパーティの中でたとえ一番弱くても負けれれないものぐらいある。これはコボルドの盾ね……これくらい斬れなくて何が追いつきたいよ。風の力で斬る!
「『エアストソード』」
斬れない……パワーが足りない!もっと強い力で早く斬るんだ。あれ?私の持っている剣が纏っていた風の力が一層強くなった?これならいける!これで盾ごと切り裂いてみせる。
『瞬風剣』
――
『瞬風剣』
「フィーシャさん、『瞬風剣』ってどんな技ですか?」
「風属性上級スキルと言われています。風で剣を纏い颯爽と斬り斬った後は風で爆発が起きる強力な技です」
上級スキル……ってことはおそらくは中級スキルだな。俺の【聖なる鑑定】で確かめてみたが、やはり中級スキルだ。どうやら、魔法やスキルが実際のワンランク下で認識されているらしい。何故こうなっているのかは不明だが……
〖どうして人間族やドワーフは基準がずれているんだ?〗
〖分からなイ……たダ〗
〖少なくとも先代の勇者の頃はこんあに弱っていなかった……ですよね?〗
〖ウン〗
ミスラとノヴァによると先代の勇者が生きていた時代は少なくともノヴァの言っているクラスの基準で合っていたいたし、それが常識だったらしい。魔人族の国でも人間の国でもだ。まぁうじうじ考えても関係ないか……
「愛ちゃんが新しい技を出してる!」
「西条さん、おめでとうございます」
「そうね!……新しい技覚えたからいいけど、別にその素早さで裏に回って斬りつければ楽に勝てたような気も……いや、戦いたいように戦うのがベストなのかしら」
瑠光と西条さんが興奮しながら話していた。美涼が1人で凄い考え込んでいたような気もするが関わると面倒くさそうなので放置しておこう。
あっという間にゴブリンジェネラルを残して他のコボルドたちを全て倒し切った。コボルドヒーラーをコボルドジェネラルは守ろうと攻撃してきたが、それを躱して2体のヒーラーを倒した。さてここからは1vs1だ。しかし、到底負けるとは思わないけどな。俺の恩恵があるし負けることは絶対ないのだが、そもそも西条さんにギフトのことを詳しく話した記憶がない……ような?
――
よし、これで残りはコボルドジェネラルだけ!コボルドヒーラーを倒すのは少し面倒だったけど、とりあえず全てのコボルドを倒せてよかった……
だからといって油断は出来ない……来る!私はコボルドジェネラルが大剣を振り下ろす前に横に避けた。その直後に、大剣が振り下ろされた。
あれ……?私は何で今攻撃が来る前に分かったんだろう……ゴブリンジェネラルが剣を前に構えている、おそらく私が近づいた瞬間にその大剣を振り下ろすんだろう。今の私にはその光景が視えている。
「『瞬風剣』」
――
「光君、全部倒せたよ!」
「おめでとう」
西条さんはコボルドジェネラルを倒すとコチラに走ってきた。1人で全て勝てたからかとても嬉しそうな顔をしていた。
「そういえば、隠れ職業≪未来視≫が開放されt」
「あ!そうそう、相手が攻撃をする前にどんな攻撃がくるのか分かったの!」
俺の話を遮られたが、西条さんは未来視が使えることに気づいていたらしい。どうだ凄いだろうというどや顔、そしてニコリと笑う仕草は可愛いと思う。確かに俺もこの世界に来るまではボッチだったのでそこまで明るかったわけではないが、西条さんもこんな笑顔を周りの人に……まして男子に見せることなどなかったはずだけど。
「それで……お願いしたいことがあるって言ってたよね?」
西条さんが少し緊張した表情で俺にそう言ってきた。約束はしてたが何を言われるのだろうか?私たちとは別に行動してほしいとかか?……あれだけ他の人を近づけようとしなかった西条さんのことだ。ありえる……
「私のことを皆みたいに名前で……愛って呼んで?」
「え?いや、でも」
「光君、約束だよね?」
その満面の笑みが怖い。まぁ別に断る理由なんてないしいいんだけど。
「愛、これでいいか?」
「うん……昔みたいに呼んでくれてもいいのに」
とりあえずはいいみたい。何か最後のほう小さい声で何か呟いていたが、何を言っていたかは聞こえなかった。多分聞かれたくないことなんだろうか。
「ヒカルー、愛ー!早くしないとおいてっちゃうわよー!」
「あ、瑠光ちゃん!待って!光君も行こっ?」
「ああ」
西条さんに手を引かれて俺たちはセーブポイントまで来た。
「これで次回は10階から来れるということですか?」
「私もダンジョンのセーブポイントに行ったことなんて今までなかったので分かりませんが、ギルドの方もそう明言しているので問題ないかと……」
セーブポイントからダンジョンの地上に戻った。空は暗くなってはいた。3日で10階層までを攻略した。
――
「じゃあ、ダンジョン10階層まで攻略を記念してー」
「「「「「「カンパーイ」」」」」」
俺たちはダンジョン攻略後においしいと評判の食堂に来ていた。ちなみにソースはこないだのパーティの時に瑠光に寄ってきた貴族の人らしい。
「新しい力手に入れられて良かった……」
「おめでとう」
西条さんは本当に頑張ったと思う。コボルドジェネラルとの戦いは特にだ。≪未来視≫が発動しなくても勝てただろうが、それでもだ。俺も負けてられないな。早く強くなって魔王を倒して元の世界に帰るんだ……って俺が魔王だったの忘れてた。魔王ってそもそもどんなことをするのだろうか?
〖そろそろ魔王様の配下ノ誰かが来ると思ウ〗
〖そうなのか?〗
「あれ?みんな久しぶりだね!」
「あ!朱莉ちゃん!」
愛が中村さんに抱きついていた。この2人ってここまで仲が良かったんだな。
「私を無視しないでいただけますこと?」
「あらー東条さん。無視なんてしてませんわ」
この2人は相変わらずだな……
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