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常闇の地底列車  作者: たけどらの民
第1章 『天空のツリーハウス』
13/27

1-12 走馬灯は転生トラックと共に

新しい執筆ツール使ってみました!

「……擬人ってのは、あれか。社長さんが言ってたあの擬人か」


「徹浪さんのことかな? だったらそうなんだろうねー。ツリーハウスで、あの人と話してきたの?」


「はぐらかすな。……擬人には、女の子が多いって話だった。けどお前は男……だと思う。いや、詳しくないもんで、それほど見た目も女っぽくないし」


「んー当たり! あ、でもそこから突いてくるのは予想してなかったかな……なるほど、そこらへんまで聞いてるのね。なるほどなるへそ……なら、やっぱりここに『自分』がいるなんておかしいと思わない?」


 どこまでも気楽なその擬人(暫定)は、人差し指を立てると自身を指さしながら疑問を投げ掛けてきた。

 その疑問の根元はお前だと、強く言い聞かせてもこいつには何だか通じない気もする。おそらく徹浪も同じタチであり、こいつも同じタチだ。


「聞く限りじゃ地下にいるってのが普通だと聞いた」


「間違いじゃないよ、自分がイレギュラーなんだからね。僕は間違いなく擬人――転生トラックの擬人。ま、色々訊きたいことはあると思うんだ。多分あなたが知りたいのは……徹浪さんとの関わり、じゃない?」


 その問に、軌道は普通に肯定をしかねる。もちろんそれも気になる。というか何もかもが気になっていた。

 景色は一貫してゆっくりとしたセピア色に染まっている。時の流れがカタツムリ並みなのに、多分こいつ――転生トラックの擬人が関係しているはずだ。


 転生トラックの擬人、とやらは中性的な見た目の一応男、といった感じの外観をしていた。

 髪は色が抜け落ちたように白く、全身も服装含めて真っ白。幼げな体つきをした高校生くらいのやつだ。

 作業服に身を包み、何らかのマークが入ったヘルメットを装着し、そして何よりも目につくのは、所持している凶悪で鉄っぽい質感の金棒。

 見れば、その金棒にトゲは付いていない。しかしほっとしたのも束の間、なんと金棒には『タイヤ』が付いていた。おっかねぇおっかねぇ。

『タイヤ』とは言っても、小さいミニローラー的なものが金棒の片側に集中して取り付けられていて、辛うじて転生トラック……というかトラック要素が見受けらる。

 ファンタジーに出ても一応おかしくないくらいの、しかしやはり一応ファンタジーっぽい人物、擬人だ。

 これが、擬人――。


 ――要するに怪しい極まりない。


「んで、君の目的はなんよ。俺は絶賛人生転落モード中だから、あんまり構われると身投げしちゃうぞ」


「……命、大切にしてってば」


「身投げしたって俺は死なないから大丈夫だ」


 とんでも事態に軽口で対応するが、軌道は軌道ならではで事の事態を察することは出来ていた。

 まず始めに、こいつと徹浪の繋がりがあった場合。

 最も有力で、最も当たる確率が高いだろうまっとうな意見そのものだ。

 あの徹浪のことだ。『地底で過ごしたことがある』とも『必ず地下へ』ともほざいていたし、今日この日に刺客が送られてきても不思議ではない。もしそうだった場合、何故転生トラック(こいつ)を送り込んだのか問い詰めたい。


 そして二つ目の可能性、こいつが独自で動いてる。

 徹浪と繋がっていれば、目的がある程度透けて視える。『地下に軌道を送ること』――それさえ果たせれば、話は終わりのはずだ。


 だが、もしこいつが一人で動いているならば。

 目的は分からないし、何で地上にいるのかも分からないし、何で軌道を狙っているのかも分からない。

 そして後者の可能性の時、徹浪とこいつの意見は食い違うはず。()()()()()()と言えばおかしな話だ。

 軌道はある程度の分析を終えると、改めて当の擬人と向き合う。少しだけ、景色の速度が戻った気がした。


「擬人か……しかしなんで転生トラックなのよ。もっと良いモチーフなかったのか? 大樹の意思?」


「徹浪さんと話して、擬人と大樹の関係までわかってるってことは知ってるはずだよね。もちろん自分たちの『姿と力』はここら辺の若者の考え方を糧にしてるから……うん、つまりここら辺のヤングさんはラノベ脳なんだよ、うん」


「ファンタジーの登場人物がラノベ脳とかヤングとか言うなよ、俺を含めてみんなの夢が壊れる。あーそれにしても単語の選択があいつとそっくりでイライラしてきた。緑念仏してもいいか?」


「よく分からないけど不可抗力だねっ。もちろん禁止にしとこうか。じゃないと転生させちゃうよ?」


 浮かべた不敵な笑みですら、うっすらと似ている。

 だんだん忘れかけていたあの憎たらしい顔が甦ってきて、軌道は顔をしかめる。

 不本意そうな転生トラックは、なんだ、俺を轢きに来たのか。

 だとすればこの世からおさらばだ。いや、死にたいなんて口走ってはみたが、そんなつもりはさらさらない。死にたくはない。当然だ。

 しかしその望みを断絶するかのように、正に狙い済ました感じで転生トラックは言い放った。


「――で、転生する気はない?」


「ない」


「お話が進まないの、それじゃ」


 これでは先程の徹浪とのやり取りをなぞるだけだ。やり口まで似ているとは、やはり繋がっている可能性が高くなってくる。

 では、転生とは一体どういうものなのか。

 殺すってことか。だとしたら嫌だと言っておこう。

 もしくは独自の表現として、『連れていく』という意味説。え、やだ。こんな社長と似てる擬人とあの世散歩はしたくない。

 というか、何故こいつに殺されることばかり考えてるんだ。どれにせよ何にせよ、軌道は転生トラックの御世話になるわけにはいかない。

 死ぬくらいだったら地下に行く。今は、それは確かな気持ちだった――。


「死ぬくらいだったら、俺は地底に行く。だから殺すなよ。身投げすんぞ」


「――言ったね?」


「は?」


「よっ……いしょと。さーて、あの世に御世話になる準備はいい? 閻魔様にお会いになる覚悟は出来た? 鬼にしばき倒されることを念頭に入れた? じゃ、始めるよー」


「待て待てまてまーて待てまーーてまぁてよ、な、ま、まずは落ち着こう。何で金棒持ち上げたんだ、おい、下ろせよ、なぁ」


 ――転生トラックは、エンジンをかけた。

 特徴的な金棒のタイヤが回転し、甲高い共鳴が鳴り響く。火花が飛び散る。金属音がこだまし、思わず耳を両手で塞ぐ。

 周りの人――そうだ、『ゆっくり』なんだった。

 けど、何だ。さっきよりも『速く』なってる気がする。


 音が戻りつつある。

 あ、小鳥が鳴いた。

 クラクションが変に間延びして聞こえた。

 電車の発車ベルが、逆再生されたみたいなメロディー。

 片足だけ動いた人間たち。


 金棒を持った『転生トラック』は、どんどん俺に、軌道という存在に歩いてくる。そして色合いが、セピアからモノクロへと変貌を遂げる。

 火花も、金属が掠れた音も止まらない。止まるはずもない。

 今さら、止めてくれるはずもない。

 俺は耳を塞ぐのを止めた。目を開けていることを止めた。息をすることを忘れ、体に力を入れるのを止めた。

 やっていることは相反していた。俺と転生トラックは、似ていない。字ずらはおかしい。けどだってそうだろ。


 ――俺と徹浪が、似てるわけがない。


 それは変なプライドであり、妙なとっかかりだった。意識的に徹浪と自分を比較している自覚はある。あるからこそ、こうやって考え見つめ直してみれば発見できることもある、と思うのだが、

 ――今は余裕がとてつもなくスーパーに無い。

 転生トラックの擬人と徹浪は似ていた。俺は二人と似ていない。

 どこが似ていない?

 『狂気』か、『笑み』か、はたまた『意思』か。

 ――全部、という答えは無しだろうか。そんな思考も脳内で溶けてどろどろになり、とうとうその時がやってくる。何故こうなったかも、何もかも知ることなく。考える間にもあいつは金棒を振り上げ、軌道をぶっ飛ばす準備を整えた。

 ふと開けてみた目の下には、セピアでもモノクロでもない真っ白な横断歩道があって――。



「『転生・ぶっ飛びオーレ』ッ!」


「――こんなの、あり、かよ…………」



 ――俺は、轢かれた。

新しい執筆ツール、如何だったでしょうか?

でも気が向くまでこれは使いません! 面倒臭いのですよ。

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