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常闇の地底列車  作者: たけどらの民
第1章 『天空のツリーハウス』
11/27

1-10 素直な感情論

 気持ちを新たに入れ換えた軌道は、今度は心で平静を保ちつつも、体を伝う強烈な緊張感を堪えきれずにいた。

 息が荒くなったが、二酸化炭素は近くの植物によって光合成の餌食となる。そう言えばそんな場所だったが、太陽の位置を確認すると、明らかに出社(?)してきた時とは傾きが違う。

 かなり長い時間を過ごしたこの部屋に居ても、後悔よりも、好奇心の方が勝った。

 そして、そんな思い出いっぱいの場所とも、そろそろお別れの時が近づいていた。


「擬人には女の子の姿をしたものが多い。これは何でだかわかるかい?」


「その方が子孫を増やすのに便利だからか?」


「ぶぶー、擬人は大樹によって生まれるので、子供は産まないのでした! 実はこの大樹が生み出す擬人、東京の、しかもここ周辺に暮らす若者の考えを中心に大樹が取り込んだ、物事に関するイメージを元に生み出される。つまり……ここら辺の若い人は、欲求に正直なのさ。ああ、僕は理解しかねるけどね」


「うっざ! 真剣に聞いていいのかどうかめっちゃ悩むんだが。あんま説明はいらないから、手短に地下に行く方法を頼む。いつ『災害』がくるのかわからないなら、早めに俺が行った方が……あ、一つ確認していいか? 地下で氷は手に入ったりする?」


「慌てずとも大丈夫、何のために擬人が存在しているかわかっているかい? もともとは大樹の意思によって作られた擬人……今はその機能は役割を終えたが、擬人は生み出され続けている。どうやら、大樹は自分で作った仕組みを止めることができなかったらしいね。でもそのおかげで、地下の環境は豊かになっていく一方さ。『災害』を除けば、ね」


「で、氷は?」


「有るとも」


「地上に電話」


「できるさ」


「住む所」


「住む所はもちろん教える。何をすればいいのかも、大体は地下に行ったら分かるだろう」


 それらの答えを聞いた軌道は一瞬のため息。

 ふいっと吐かれたその息も、すぐに酸素へと変わっていくから本当に落ち着きがすごい。

 感動したくなるが、何故地下に行こうと思い立ったかを思い出す。言い負けしたから、ではない。

 ――そうだ、『約束』。

 もう殆ど心残りは残ってはいないだろう。パッと思い浮かばないということは、重要な事案は出尽くしたはずだ。そしてその全てを徹浪に潰された。

 なら、行ける――これで『約束』を果たしに行けるはずだ。


「未練はないかな? ふふふ、では最後に、擬人についてかなーり重要な事を教えちゃおう。心して聞くことだ」


「いよいよって感じだな。――よし、ドンとこい!」


 几帳面に身構えると、軌道はどんな衝撃発言が来ても耐えられるように、精一杯高を括って徹浪を待ち構える。

 徹浪もその態度満足したように顎を引き、人差し指を立てた。

 この発言が、軌道にどんな影響を与えるかどうかは未知数だ。だからこそ、こればかりはちゃんと聞かなければ――謎の感覚が脳を支配し、血液となって全身を廻る。

 その反射的な身体の反応に、軌道はいたく緊張して――、


「――擬人は、人に素直なんだ」


「……人に、素直、ねぇ……え、どゆこと?」


「特に、人とのスキンシップは大好きだよ? 僕もよく、地下を廻っては甘く熱いスキンシップを繰り返したものさ」


「な、なあ……だから、どゆこと?」


「なでなでされるのが大好きなんだよ、あの子たち……当時まだ若かった僕はメロメロだったね」


「社長さんの惚気話はいいから何とか聞けよぉ!」


 ――そんな緊張は、突如徹浪の口から飛び出した『衝撃発言』によってかき消された。

 期待を裏切られたと言えば正しいが、ここ数十分で慣れすぎて逆に肩透かしを喰らう。

 ここまできて――なんだ、こいつ。

 徹浪は計り知れないものを持っている――初対面(数十分前)の印象をそのまま貼り付ける方が、徹浪には似合っていると思う。

 もちろん、こんなおふざけ的な感じではなくて、きちんとシリアスな『計り知れない』を持っている、とも思っている。

 けれど、今は――完全完璧疑う意味ないくらいおふざけモードで、失笑も生まれてこない。

 呆れと軽蔑の視線を思いっきり徹浪に向けていると、


「心外だね、そんな顔じゃモテないよ? 折角普通の顔なのに……」


「イケメンともブスとも言わないところがいっそ清々しい……って、そうじゃない! 何言ってんだ社長さん、それのどこが重要なんだよ!? ほぼあんたの艶か昔話じゃねぇか!」


「あれ? 重要をそのまま形にしたみたいなこと言ったんだけど……?」


「何で不思議そうなんだよ! あーもう腹立つ! マルチソルジャー死ねっ! クソが! ゴミクズ! 二度と自然保護だか何だかほざくな! 守ってんの大樹と地下と擬人だけじゃねぇか!」


「元気で良いね、若い人は。今更の話だけど、今、もし僕もこれほどヤングなパワーに溢れていたとしたら……? きっと地下で大活躍して、『災害』なんてちょちょいのちょいして、擬人たちと自然に囲まれて幸せに人生を終える。……ははっ、笑いが止まらないよ! やはり君は僕の願いを次いでもらうにふさわしい! はははははっ!」


「……やっぱ地下行くの止めようかな」


「すまない待ってくれ」


 …………。


「……変わり身早いな」


「君が言えたことだろうか……」

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