第82話 勇者、五魔天神と邂逅する
私たちが城へとバグった頭で向かっているとは知らないランドレスと魔物たちは。
「……結局、あれから一週間ぐらい経ったけど、さすがにマルクス王でも殺してプレッシャー与えないかしら?」
「お待ちください◯◯様! 最後の切り札ですので」
「……情け無いわね。そろそろ私たち魔物軍も我慢の限界なのよ。その辺の廊下歩いてる魔物も暇すぎて寝てたわよ」
「……申し訳ない。今から私が勇者一行の元へ――」
その瞬間、王の間へ魔物が報告に来た。
「◯◯様! 勇者共がやっとこちらに向かってきております!」
「ククク……やっと殺されにきたってわけねぇ……」
「それが……ものすごい形相で走ってきています!」
「おかしいわね。あの勇者は確か転移魔法があるのではなかった?」
「そのはずですが……なぜ走って……」
私たちはテンションが上がりすぎてエデンの転移魔法のことさえも忘れていた。意識が飛びそうになりながらも上がりきったテンションのまま城までの道のりをなぜか走り切りたかった。張本人であるエデンすらも若干、引いていた。
「まぁいいわ。これでやっと戦えるってわけね。ランドレス。勇者は殺してもいいわよね?」
「ええ。存分にいたぶってやってください。お願いいたします」
「ククク……楽しみねぇ……」
「そうかぁそんな楽しみにしてくれていて嬉しいよ! こんにちは〜!」
そこにはすでに、転移魔法で王の間へと侵入しているエデンの姿があった。
「ゆ、勇者……⁉ お前走ってきているんじゃなかったのか⁉」
「いや、あいつらのテンション怖かったからさ……俺だけ先に来た。で、お前らが親玉なの?」
「そう……あなたが勇者なのね……私が誰だか分かるかしら?」
「えっ、有名人? 全然知らんなぁ。てかどっちがどっちだっけ?」
「いや、私は会ったことがあるだろ! この国の第一王子だよ!」
「えっ……ほんとに? じゃあそっちは?」
異様な雰囲気を放っていたその人物は、人間ではなかった。長い金髪。女性のような口調ではあるが目が異様に鋭い。魔物の目をしている。
細身のスタイルからは考えられないほど大きな白いファーがついている黒いロングコートを羽織っている。その辺の魔物とは一線を画すその雰囲気は、すべてが違っていた。
「私はあなたたち人間の一番の敵。『五魔天神』が一人『破神のクリウス』よ。聞いたことぐらいはあるでしょ?」
――ランドレスは五魔天神と共にこの城に籠城していた。エデンは窮地に立たされていた。




