第83話 勇者一行、奮闘する
一方そのころ、走って城まで攻め込んできた私たちもすでに魔物と戦闘していた。
「この数多いわね! 一気にいくわ。顕現なさい。水の精霊ウンディーネ!」
水の精霊が降臨する。周囲の魔物たちを一掃するように水の竜巻を発生させ激流の渦に巻き込む。
「今よ! ギョロ美ちゃん!」
「うおおおおおおお! 全員しねぇやああああああ! トライデント!」
トライデントが雷を呼び起こし、周囲の水まみれの魔物を蹴散らしていく。
「行くぞトモミチ! 分身で魔物を喰い殺せ!」
「同族喰うのはあんまり好かんがやるしかないのぉ!」
なんだかんだでここのコンビも上手く機能していた。卵王がトモミチの分身を作り、魔物が混乱しているうちに喰い殺す。一番単純で一番怖い戦法かも知れない。
「このままいくわよみんな! テンションぶち上がりよ!」
「あーちゃん完全におかしいけど、それはみんな同じだなぁ〜! どんどん行くぞ〜!」
どんどん上層階へ上がっていく。が、その途中、ついに出くわしてしまった。ランドレスが連れてきていたコカトリスだ。
「いけるでぇ! 今のわてたちなら怖いもんなしやぁ! 一気に味わったるでぇ〜!」
意気込んだのも束の間、トモミチが背後からの攻撃に気付かず、背中を攻撃された。尻尾での打撃。なんとかその攻撃は勇者の羽衣のおかげで防ぐことができた。
「な、なんや……一体……⁉」
コカトリスがもう一体、出現した。私たちはコカトリスに囲まれていた。A級の魔物が二体。私たちだけで倒せるか。
「いくしかないわね! 全力でいくわ。まずは一気に二体ともダメージを与えるわ! ウンディーネ!」
先ほどと同じ水の竜巻が二体のコカトリスを巻き込んでいく。コカトリス自慢のスピードでは逃げることもできず、これだけでもかなりのダメージだ。その竜巻に合わせるようにギョロ美ちゃんのトライデントも襲いかかる。
「トライデント最大の攻撃よ! ボルテージ・ライトニング!」
トライデントから放たれた雷が水の竜巻と合わさりとんでもない威力の魔法へと昇華した。水と雷の応酬にコカトリスはもう動けないだろうと誰もが思った。
二体のコカトリスが竜巻から放たれた。地面に叩きつけられようとしたその瞬間、消えるような速さでギョロ美ちゃんと私に襲いかかってきた。自慢の猛毒の尻尾を突き立て、私たちの体を突き刺そうとした。
「危ない! 煙玉ぁ!」
卵王が二つの煙玉を撒くことで、コカトリスは二人を見失った。その間に卵王が二人を移動させた。
「大丈夫か二人とも!」
「ありがとうございます卵王。なんですかあの煙は?」
「なんか……漫画からヒントを得て作ってみた」
「あのコカトリス……あの攻撃でも死なないなんて……」
「ちょ、ちょいちょい! あんさんら話とらんと早く助けてぇな!」
私たちの代わりに卵王はトモミチを囮にして追撃を阻んでいたらしい。
「……またやるしかないわ。みんな。時間稼ぎお願い!」
「アネス。またあの魔法か」
「ええ。前よりもパワーアップさせたの。二体同時に消し去ってみせるわ!」
「わかった! ギョロ美ちゃん! トモミチ! 二人で時間稼ぎだ!」
「またこんなことになるんかいなぁ〜! 前もやりましたでぇ!」
「あーちゃんすごい魔法があるのね! 任せたわよ! 私も最大限戦うわ!」
三人で時間を稼いでもらっている間に、私は詠唱を開始した。前のマンティコア戦でも使用した魔法をさらに強化したもの。まだ、甘かった。あれから遊んでいるだけのようでこれでもビーチで魔導書を読み込み、訓練に励んでいた。
私もヒントは漫画から得た。『粒子砲』なるものが向こうの世界にはあるらしい。それにより近づけるために魔法の力を最大限駆使した。それを完成させたのはつい先日のこと。光の力で熔解、貫通する光の粒子。当たれば即死の魔法。
これは確実に相手に死を与えることができるが、生成までにまだ時間がかかる。それまでなんとか耐えてくれないと私たちの負けだ。
「いっけぇ! トモミチ! 時間稼ぎがお前の得意技だ!」
「いけるわよぉトモミチ〜! 今までの汚名を晴らしなさ〜い!」
「結局わてだけかい! 二人とも恨みますからのぉ!」
トモミチだけでなんとかなっていた。天性の逃げの才能。二体からの攻撃をものの見事に寸前で躱していた。私の魔法ならトモミチは避けられると信じた。最悪、トモミチに当たってもいいかと思い、大声で叫ぶ。
「よし! 準備完了よ! トモミチ! 避けられたら避けて!」
「えっ、死なば諸共の魔法ですの⁉」
「『アーク・ディルア・ディザイシス』!」
天空に大きな錬成陣が浮かび上がった。二体を飲み込むようにして一筋の光が突き抜けた。二体のコカトリスは避けることなど出来ずに、その粒子の光は魔物を見事に浄化してみせた。魔物の断末魔さえも聞こえなかったその魔法は、明らかに私の中で最強の魔法と証明された。まさか『漫画』の知識が活かされるとは夢にも思わなかった。
「あーちゃん……これはすごい魔法だわ。どうなってるの?」
「信じられない。あの二体の魔物が消えたように死んだぞ……アネス。すごいな」
「よかったわ……なんとか当てることができた。私の魔力は尽きたわ……あとは任せました」
「ちょっとぉおおおおおおお! またわて死にそうでしたやんかぁ! まだ疑ってはるんですのあーちゃんはん⁉」
「あっ、生きてたのね。よかった。消え去ったかと思ったわ」
「にしては、あんまり悲しんでる様子ではなかったですけどなぁ……」
「そんなゴミグールは置いといて……私たちコカトリスを二体も倒したわ! やったわね! あーちゃん!」
「ゴミグール⁉」
「えぇ。なんとかエデンの力を借りずに倒したわ! このテンションのまま王の間まで行きましょう! てかエデンは?」
「あれ? そういえば一緒に走ってきたかと思ったんだが……」
「いつのまにかおらんなってますなぁ……どこいかれたんやろ」
「まさかもう王の間いたりしてぇ〜!」
「ハハッ! まっさか〜! そんなめんどくさいことしないでしょ〜! どっかで休んでるんじゃないの?」
「そうだよ。このテンションの俺たちにビビったんじゃないか〜? よしこのまま俺たちだけでランドレスに制裁を加えてやろう!」
「そうねぇ! いくわよ〜!」
――自信満々で王の間へと目指す。私含めテンションだけは高いが、連戦が続き体力はゼロに近かった。行ったところで力になれるかわからない。だが、このテンションなら、なんとかなるかと謎の自信に満ち溢れていた。




