第8話 勇者、それ以前に魚人
なにかしている。そう思った私はすぐにプールから呼びかけた。
「ちょっと。なにしているの。早く勇者様呼んできなさいよ」
「……ケケケ。またあなたって人は人をすぐ信じるからそうなるんですわなぁ……」
プールの底から音がする。底を見ると檻が設置されていて、檻の扉を開いた音がした。トモミチが扉を開いたのだ。
「舐めたことばっかしとるからそうなるんやぁ! 人喰いピラニアを放ったで!」
人喰いピラニアが大量に迫ってきている。しかし、こんなことで私に勝てると思っているのが愚かしい。自身に魔法障壁を張る。そのまま雷の魔法を放った。
「ライトニングスピア!」
雷の槍は簡単にピラニアを焼き殺した。感電しないよう障壁を張っていたため私は無事だ。そして、プールから出た私を待ち受けていたのは、魚人の怪物だった。
「ちょっとぉ! 私のかわいこちゃんを焼き殺したのはあなた⁉」
おかまの半魚人だった。
「ええ。そこにいるグールにはめられてしまって、食べられそうになったので」
と、プールそばにいたはずのトモミチが、どこかへ消えていた。
「あいつ! どっかへ逃げたわね!」
「あなた……覚悟はできているんでしょうね……?」
半魚人の目が細くなる。獲物を捕食する時の目だ。
「子供たちの為にも死んでちょうだああああい!」
人間よりはるかに大きな図体をもつ半魚人が襲ってきた。二メーターは超えている魔物の攻勢は普通の人間では対応しきれない。だが、私はなにも慌てる必要がなかった。どんな魔物にも対応できる魔法をいくつも心得ている。
「拘束魔法! チェーンエッジ!」
幾重にもなる鎖が半魚人を締め付ける。もはや、逃げるのは不可能だった。
「ちょっとなによこれ~! 痛いわよぉ!」
「私はこれでも王家直属の賢者よ。さぁ早く勇者様の場所を吐きなさい」
「私は知らないのよぉ! トモミチちゃんに言われてここに来ただけなのよ~」
そう聞いて、私は意識を集中させた。目を閉じて探索魔法を使った。すぐそばの壁の裏に一体の魔物の姿を確認した。
「そこにいるわね! チェーンエッジ!」
「ぎゃあ! 痛い痛い! わかった! 降参や降参!」
「トモミチ。いい加減にしなさいよ。あなたはこのままにして後で葬ってあげるわ」
「そんなぁ……頼んますわなぁ。勇者様から頼まれただけですやないかぁ……」
「なんて言われたの?」
「『丁重にもてなしてあげんなまし』と……」
「あの勇者……私を殺せってことねぇ……」
先ほどの探索魔法でこの家の二階にも人がいることはわかっていた。おそらく、勇者だ。
「王の言う通り、そろそろ、とっちめてやらないとねぇ……」
二階に上がっていく。家の中も外見に劣らず豪勢な作りになっていた。この世界にはないモノで溢れかえっていて興味をそそるモノしかない。だが、今は勇者と会うことが先決だ。




