第71話 勇者、ケルベロスを使役する
「ごめんなさいエデン……先ほどの発言撤回するわね。かわいいわこの子」
「だろ? こいつはモフモフしたくなるぞぉ……」
「でも、意志の通じない魔物だからこのままだと一生従わないわね」
「え~と、『ブレインコントロール』」
「キャイイ!」
「それじゃあ、俺たちの家の番犬となり、俺たちに一生の忠誠を尽くせ。以上!」
「キャアアアアアン!」
自分の意志が無くなってしまうような叫び声みたいなものが聞こえたが、その指示で驚くほど私たちに懐いた。あのケルベロスが私たちの番犬となった。
それにしても、エデンに洗脳魔法があるとは聞いていたが、あまりにも恐ろしかった。私たちもなにかしらの洗脳をしているんじゃないかと思うと恐怖を感じる。
「これはハマちゃんもビックリだろうなぁ~。自信もって送り出した魔物が勇者の家の番犬になるんだもんな。こんなおもしれぇことないよ(笑)」
「え、えぇそうね……私はあなたにもビックリしているけど……」
そこに先ほどの兵士たちも駆け付けた。
「二人とも! ご無事でしょうか?」
「え、えぇなんとかね」
「あの……ケルベロスは一体どこへ?」
「あぁ。あれなら地の果てまで飛ばして退治しといたぞ」
「え、えぇ⁉ すごいですねさすがは勇者だ……」
「だろ~。髭面王にも言っといてね」
「キャンキャン!」
「……そこで鳴いている小さい子犬は……どことなくケルベロスにも似てるような……」
「えっなに? 少しは考えろよ~。どうやったらあの巨体こんな小さくできるんだよ!」
「で、ですよね~! ハハハハハハハハ! でも、頭が三つあるような……」
「雑種だから雑種。さぁ。さっと王様に報告してきて! 俺たちまだあと二体倒さなきゃだからさ」
「しょ、承知いたしました! まだあんな魔物が二体も……気を付けて!」
「おう! お前らもな~」
「……もうバレてたわよねあれ」
「大丈夫。証拠さえなければどうとでもなる。さ、次行こうぜ」
「そうね。急がないと……次は海に行きましょう。ギョロ美ちゃんが頑張っているわ」
「そうだな。最悪、トモミチはどうでもいいしな」
私たちは、ケルベロスを家へ置いて、ギョロ美ちゃんがいるであろう海へと向かった。
――そこでも、場は混迷を極めていた。
勇者宅よりそれほど離れていない海域。海流が荒れ狂う場所にその魔物はいた。
ギョロ美ちゃん率いる深海国の皆が、一丸となってリヴァイアサンと対峙していた。
体長は考えられないほど大きく、おおよそ二十メートルはあるだろうか。そのとんでもない巨躯が海で暴れまわっていた。暴れることで発生する波がどんどん高くなり、海周辺の村や町は避難を余儀なくされていた。早く、どうにかせねばならない。
「うっわ~。あれはでかいなぁ」
「あれがリヴァイアサン……私も初めて見るわ。あんなのどうやって倒せば……」
「ギョロ美ちゃんが頑張ってるからちょっと話聞きに行くかぁ~」
大声で、ギョロ美ちゃんに声を掛けるエデン。その声に破顔し、近づいてくるギョロ美ちゃん。笑顔でこう喋り出した。




