第70話 勇者、ケルベロスをも圧倒する
「やばいね~。すっごい熱いじゃんこれ」
エデンが横にいた。そして、手で仰ぐようにして私たちの周りだけ炎が避けていく。いや、周囲に聖域を張り、攻撃を無効化しているらしい。手で仰ぐ必要があるのかはわからないが。
一帯を焼き尽くし、私など燃えカスになったと思ったケルベロスは去ろうとしたが、なぜかそこには人間が二人に増えていた。
「グォオオ⁉」
さすがにケルベロスでさえ驚いたのか、変な声を上げていた。
「ちょっと……死ぬ間際よほんとに……」
「ごめんごめん。作るのに時間かかってさ」
「なにを作ったのよ」
「ちょっとその前に確認しないといけないことがあるんだわ」
エデンは明確な返答をせずにゆっくりとケルベロスへ近づいた。ケルベロスも異様な雰囲気のエデンをその目に捉える。すると、エデンの姿は私たちの前から一瞬で消えてしまった。
私も、ケルベロスもその姿を追った。その姿を捉えられたのは私だけだった。エデンはケルベロスの頭の上にいた。瞬時に身体能力を向上させ、頭に飛び移っていた。
「おお~。これはやっぱり俺の思っていた通りだな」
その声を聞いたケルベロスは驚き、エデンを殺そうと他の二頭の頭が攻撃を仕掛けたが。
「いっくぞ~! とりあえず、これがただの殴打!」
その声と共にケルベロスは地に叩きつけられていた。攻撃しようとしていた二頭も頭を叩きつけられ、なにが起きているのかわかっていなかった。あの巨躯を叩き潰せるのはこの世界でおそらくエデンだけであろう。ケルベロスはそれでも意識があった。
「よし。準備完了。予想通り、あの毛並みはモフモフだった」
「いやそれを確かめるために頭へ乗ったの⁉」
「そうだよ。だからこいつを正式にうちの番犬にするわ」
「バカ言ってんじゃないわよ! こんな大きい魔物使役できるわけないしょ!」
「だから、具現化するから待ってって言っただろ。こいつを使うのさ」
エデンはポケットからなにか取り出した。長さが二十センチほどの棒状のモノを取り出す。
「なによそれは?」
「これは『ミニマムライト』対象のモノや人を小さくできる代物だよ」
「……ちょっと。なにかの漫画参考にしてない?」
「い、いや? 知らんな俺は。聞いたこともないし、よくわからん」
「もしかして、それで小さくして家で飼うっていうの?」
「いいだろう? こいつ以上に適した番犬いないだろう」
「いないけど! 小さくしても怖いわよこんなのいたら!」
「まぁまぁ。一回、小さくするから見てくれよ。多分『モフってる』ぜ?」
「もういいわよ……好きにしなさいよ」
意識が朦朧としているケルベロスに近づく。殺されると勘違いしているケルベロスは最後の雄たけびを上げていた。
「ウ……ウオオオオオオオ! ガォオオオオオオオオオオオ!」
「慌てるな。大丈夫大丈夫。お前はこれから『モフ夫』としてこれから生きていくんだぞ~」
すでに名前も決めていたらしい。ライトから光が照射される。その光がケルベロスを包み、あの恐ろしい姿がみるみるうちに小さくなっていく。
そして、小型犬ぐらいのサイズになると、ただのモフモフした三つの頭を持つ犬になった。
「ガァアオ⁉ キャオオオオオオ!」
ケルベロスは驚愕していた。自身にみなぎるパワーが消失したこと。先ほどのような業火などもう吐くことができないことも察したようだ。




