第64話 勇者、ハマエルと再開する
「……おい勇者。ゆうしゃ~! この野郎……エデン! 勇者起きろ! おい! クソ野郎! ボケ! エデン!」
「……うるせぇよ鼻くそドビュッシーがぁあああああ」
エデンは鼻を思いっきり殴った。相手はあの守護天使ハマエルだった。
「いってぇええええええ! 鼻折れたってこれ!」
「あっ、ごめん。鼻くそドビュッシーかと思ったわ」
「なんなんだそれは! それだとしても鼻を殴るなよ!」
怒号を聞き、家にいた皆が起き出してきた。
「どうしたのエデン……まだ昼の二時じゃない」
「そうよエデン様ぁ……まだ三時間は寝ないと」
「早いなぁ……一体なんだ今の声は」
さすがのハマエルもこの体たらくな勇者一行に檄を飛ばした。
「お前らな! いくらなんでもなまけすぎだろ! 昼の二時だぞ⁉ 一般人の皆様は働き盛りの時間なんだよ! お前ら常識から外れすぎだぞ!」
「って言ってもなぁ……もう俺たち高所得者だし、一般の気持ちはわからんですよ〜」
「お前本当に変わったな! お前の当初の目的はなんだ!」
「立派なマイホームに住むことです」
「違うだろ⁉ 魔王城に行くことだろ!」
「あ、それか。あくまで副業にすればいいかと思っていたからまだいいかなって思ってた」
「お前舐めてんのか⁉ 転生勇者だぞ! 勇者は魔王を倒してなんぼなんだよ! それが本業だぞ!」
「いや〜これだけ財を築くと目的は変わるもんですなぁ」
「いや、前言ったよね⁉ 魔王城に行くフリでもいいからしてくれって! まだ来ないんだけどって向こうから催促あったぞ! お前らの国だけなんだわ。魔王城行かない勇者は」
「いつだって成功者は孤高の存在ですからね。常識の範囲外にいると思ってもらえれば」
「お前にインタビューしてるんじゃないんだぞ! これ説教だからな? 守護天使ってどういう存在かわかってる?」
「えっ俺たちを優しく見守る天使様でしょ? それと魔王から賄賂を――」
「おぉい! それ以上言わせねぇぞお前……もう怒ったよ。俺には最悪の事態に備えて勇者の権利を剥奪することもできるんだ。そうなってもいいのか?」
「……それいいな。そうなればもう魔王城も行かなくていいし、無理難題も押し付けられないし、いいことずくめだな!」
「……ダメだよ。受け入れるなよ! そこは勇者やらせてください。お願いします。だろ!」
「そんなことないぞ。その上でお前の悪行を上司に報告――」
「うるさいよ! 私はなにもしてませんからな。こうなったら意地でも魔王城に行かせてやる……」
「行くわけないだろ? 今、一番充実してるんだから」
「こっちだって魔王様との契約があるんだ……行ってもらわないと困るんだよ!」
「そうか。なら俺と勝負でもするか? それで勝てたら行ってやるよ」
「エデン大丈夫なの。相手は守護天使様よ。人知の及ばない方なのよ」
「いいから。任せておけよ。絶対勝てるからな」
「わかっているんだぞお前の手口は……自分の超人的な力を使ってボコボコにするんだろ。残念ながらそれは私には効かないからな。勇者が持っている能力は私も持っている」
「だろうよ。だからそんなものでは戦わない。ゲームで対戦しよう」
「……嫌だよ。お前が得意なゲームだろどうせ」
「それじゃあお前が不利だろ? 今日発売したゲームをやろうぜ」
「……いまいち信用ならんが、どんなゲームだ?」
「ストーリーファイター6だよ。いろんな作品の主人公たちで対戦できるゲームだな。俺もやったことないから、条件は対等だぞ?」
「なるほどな……それなら、やってみてもいいだろう。負けたら絶対、魔王城に行けよ?」
「うんいいよ~。とりあえずやってみるか」
ゲームを起動する。私たちも見たことがないゲームだった。もちろんエデンが練習している姿も見たことがなかった。エデンなりに勝算があるのだろうか。
「よ~し。じゃあ三本先取でやってみるか~」
「いいだろう。実は、私も天界ではそこそこゲームは強いんだぞ」
「神聖な守護天使様も意外と庶民的なのね」
キャラ選択画面へ。ハマエルは屈強なイケメンキャラで素早く相手を攻撃する強そうなキャラを選択した。それに対し、エデンは弱々しいカエルを擬人化したようなキャラを選んでいた。このゲームを始めてやる人なら絶対に選ばないようなキャラを選んだ。
一体、どういう意図なのか。




