第65話 勇者、ハマエルをボコる
「じゃあいくぞ~。一本目な」
勝負が始まった。最初の動きは二人ともぎこちなかったが、すぐに操作に慣れたようだった。
ハマエルはキャラの特性を充分に生かし、素早く攻撃を仕掛け相手を翻弄するスタイルで攻め立てる。だが、その猛追もカエルのキャラは固いガードで防ぎきっていた。
そして、長い舌で攻撃したかとおもうと、そのまま端に追い詰める。そこから地獄が始まった。毒の攻撃で相手の足元からダメージを削っていく。なんともこざかしいスタイル。
端から逃げようとジャンプしようが、長い舌ではじかれる。無理やり攻撃しようとするも、投げ技で元の位置まで戻される。
あっさり、一本目はエデンが勝ち取った。
「お~し。まず一本目だなぁ」
「……おい。おかしくないかこれ」
「えっなに言ってんだよ。初めてこのゲームやるんだぞ? 知るわけないだろ」
そのままの勢いで二本目を始める。
先ほどのリプレイを見させられているだけだった。イケメンキャラは可哀想なほど毒まみれになっては端に追いやられ、最後はその場に倒れ込む。
二本目もエデンが勝った。
「よっしゃ~! とりあえずこれでリーチだな」
「……お前ちょっと待て! なんでそんなこざかしい戦法を知っている!」
「何回も言わせるなよハマちゃん~。俺はこのゲーム初めてなんだって。こいつならこういう技ができるんじゃないかなって思っただけだぜ」
「嘘つけ! 明らかに対策というか……勝てる気がしないぞ!」
「諦めるなよ! お前が言い出したんだろ。正々堂々やってみろよ!」
「いやこっちのセリフだわ! お前が正々堂々やれよ!」
「いいから次の勝負行くね~」
「おい! このまま逃れる気だろ! おかしいぞこの勝負!」
そんなハマエルの言い分など無視するように三本目も始まる。
ハマエルは絶対に負けるわけにはいかないと、根性でコンボ技を繰り出したりと奮闘していた。それでも結局、毒戦法を打ち破ることはできず三本目もいとも簡単にエデンが勝ち取ってしまった。エデンがストレート勝ちした。これで魔王城に行かなくて済むみたいだ。
「はい終わり! 三本ストレート勝ち~! 弱すぎだろハマちゃん(笑)」
「……許さんぞエデン。なんだあのハメ技は! 抜け出せないじゃないか! あんなの初心者にできる芸当じゃないだろ!」
「えっ確かに俺はこのゲーム初めてとは言ったけど、情報を持っていないとは言ってないぞ」
「……は? なにを言っている?」
「……俺、昔にベータ版やったことがあるのよ」
「おぉい! それはズルすぎるだろ! 事前に伝えろよ!」
「いや、ベータ版はやったけど製品版は初めてだし……本当のことを言ったまでだよな?」
「エデン……あんたって本当にずる賢いわね……」
さすがの私も今回はハマエルに同情した。
「……お前だからあんな弱そうなカエルのキャラだったのか……」
「あのハメ技強すぎて弱体化されるかなって思ったけど、されなかったみたいだな」
「てめぇえええええええええ! さすがの守護天使の私でも許さんぞ!」
――ハマエルの怒りは限界に達していた。




