第60話 勇者、とんでもない魔法を使用する
「そうだなぁ。さすがにこの規模感だと隕石降らせることぐらいかなぁ」
「……なにを言っている? 隕石?」
ギョロ凱は聞いたことのない魔法を言い出した勇者に疑問を抱く。
「待ちなさいよエデン。その魔法は原始の魔法で今は存在していないはず。その魔法をあなたは使えるというの?」
「うん。なんか行けそうな気がする」
「……ふん。下等な人間風情にそんなことができるもんか。やれるものならやって見せよ」
「え~。結構危ないと思うけどなぁ。それじゃあ、試しで結構遠くの海に小隕石降らせてみるからそれで戦うか判断してよ」
エデンは魔力を溜めた。そして、いつものことのように手を空に振りかざし、こう唱えた。
「いっけぇ。隕石よ。この世界に死を与えたまえ~」
覇気が一切、感じられないその詠唱になにも起こるはずがないと誰もが思った。
だが、数十秒経つと、ものすごい音と同時にそれほど離れていない海をめがけ、大量の小隕石群が降ってきた。
後方で待機していた魚人たちは、咄嗟に海の中へ逃げ込み、なんとか死を免れた。
「あっごめん。結構、隕石降ってきたわ」
「ちょっとエデン! 話と違うじゃない! そこまで離れてもないし!」
「まだあんまり力加減わからんのよね。すまそ」
「……おい何匹か犠牲になってなかったか?」
「大丈夫だろ。見た感じ血に染まってないし。惜しかったなぁ」
「ちょっと狙ってたの⁉」
エデンの力に呆然としていた魚人たちだが、ハッとした王妃が言及するように口を開いた。
「……ちょ、ちょっと危ないじゃないのよ! 配下が死ぬところだったでしょう⁉」
「うるさいなぁ。次はお前に当てようか?」
「ナチュナルに怖いわあの人間! 本当に勇者なの⁉」
「これでわかったでしょう! 勇者様はとんでもない強さなの! どうあがいても私たちじゃ勝てないわ!」
ギョロ凱は悩んだ。このままでは魚人族のプライドも許されない。散々、遅刻してきた挙句、娘(息子)まで取られてしまうよう気がしてならなかった。
「……勇者よ。そなたの力はわかった。我々ではどうしようもできない」
「わかったろ。お前もソテーになりたくなかったら早く帰った方がいいぞ」
「だが、我々もここまで来て手を引くことはできない。私と勝負せよ」
「パパ⁉ なにを言ってるの⁉」
「そ、そうよあなた⁉ 直接あなたがやる必要なんてないわ!」
「いや、こうでもしないと配下の者たちに示しがつかんのだ。私のわがままを許せ」
「まだやんの~。もう読んでる人も疲れてるよ~」
「エデン。そういうことは言わないの」
「わかったよ……しゃあなしやるか。なにで勝負する?」
「やめて! 私のために争わないでぇ!」
「悲劇のヒロインが半魚人なのおかしいでしょ」
「お前は殺し合いを望むだろう。なら、私はそれに従うのみだ」
「わかったよ。とっておきの勝負でお前を懲らしめてやる。それは『じゃんけん』だ!」
「『じゃ、じゃんけん』? 一体、それはなんだ?」
「俺の世界で古来から伝わる身体能力も、頭も使わない公平な勝負さ。グーとチョキとパーで争う要は『三国志』みたいなもんだよ」
「エデン。なに言ってるかさっぱりわからないわ」
エデンはわかるように説明をした。確かに公平な勝負だが、負けた場合エデンはどうするつもりなのだろう。




